『マップ・トゥ・スターズ』


デヴィッド・クローネンバーグ監督作品。ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、ジョン・キューザック、ロバート・パティンソンなど、豪華俳優陣が集められている。

以下、ネタバレです。




予告では、ジュリアン・ムーアが自信過剰でプライドが高く厚顔無恥な、とにかくめちゃくちゃな人物を演じているようだったが、予告の通りだった。本編は勿論予告より長いのでそれ以上の強い印象を残す。
老いて贅肉の付いた体をゆさゆさしながらのスキップと、少し息の切れた♪ラララ〜ラ、ラララ〜ラ、ヘイヘイヘ〜イという歌声から受けるのは狂気でしかない。
トイレでふんばりながら話しかけてくるシーンも酷い。力んでいるから、ブーブーと放屁だけはしてしまう。それで、「あんた彼とヤったの?」などという下世話な質問をしてくるのだから、もう最低。
観る人に不快感を与えるあたり、やはりジュリアン・ムーアの演技がうまいのだろう。カンヌ国際映画祭の女優賞も納得である。

ジョン・キューザックも大概不気味だったが、こちらは『ペーパーボーイ』のほうが不気味さでは上だった。でも今回も胡散臭く、怖い役です。

何を考えているかわからない感じはミア・ワシコウスカも同じだった。明るい表情もあったにはあったけれど、裏に常に暗さを纏っていた。後半になるにつれて空元気も消えて、眉をひそめ、怖い顔になっていた。
彼女はなんとなく体温を感じないというか、儚いというか、人ならざる者というか、人間を食いそうな感じというか、独特な雰囲気のある女優だと思うので今回の役も合っていた。
だから、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の吸血鬼役も合っていたと思う。ただ、あの鬼っ子は陽の部分だったが、今回は陰の部分だった。あの役は実は幽霊で…と言われても納得してしまいそう。

今作の脚本家が実際にハリウッドでリムジンの運転手をしていた経験を元にしているらしいので、運転手役であるロバート・パティンソンが主役なのかと思っていたがそんなことはなかった。
彼のナレーションでストーリーが進んでいくとか、傍観者として全体をまとめる役割であったりもしない。どちらかというと、出番はそれほどなかった。
デヴィッド・クローネンバーグ監督と組んだ前作『コズモポリス』のラストでロバート・パティンソンが気になったのでもっと見たかった。

これはもしかしたら監督の特徴なのかもしれないけれど、セリフが多くて、カメラは喋っている人を撮りながら話が進んでいっていた。
うんちくのようなうんちくでないような、ストーリーに関わっているような関わっていないような、伏線のような伏線でないような。
タランティーノのように無駄話を延々とさせるということではないけれど、とにかく一度喋り始めたらずっと喋っているので、そのうち字幕を追う目が滑るというか、集中力が削がれるというか、単調に思えるシーンが多々あった。

喋るけれどそれが彼らの本心かどうかはわかりかねるし、登場人物の誰もが誰かに寄り添うこともない。アガサは運転手と寄り添いかけるが結局めちゃくちゃに壊される。ストーリー上のまとめ役もいないので、一人一人が別のことを考え、違った方向を向いているように感じた。そして、誰にも共感も感情移入も出来ない。
ラストも本当にこれで良かったのかわからない。解決したようでしていないと思うし、なんとなく不完全燃焼感が残った。

ただ、映画は必ずすっきり終わらなくてはいけないとも思わないし、この全体を流れる奇妙な不気味さはちょっと他の映画では味わえないと思う。

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