『ベイマックス』


原題“BIG HERO 6”。同名のアメコミが原作になっているとのこと。

以下、ネタバレです。





予告編では“BIG HERO 6”的な要素は伏せられているため、原題を聞いた時にベイマックスが6体出てくるのかなと思ったら違った。
予告編を見る限り、死んだ兄の残したふわふわのロボットと弟の心温まるほっこりヒューマンドラマというイメージですが、実際は、痛快!ヒーロー活劇!といった具合でした。
ほっこり要素もないわけではない。それは主に予告で使われているのですが、ベイマックスに穴があいて、奇妙な音を出しながら空気が抜けていてセロハンテープでとめるシーンとか。

もちろんそれもこの映画の肝だとも思う。兄タダシも「思わず抱きしめたくなるフォルム」としてベイマックスを作ったのだし。
激情したヒロが悪者を殺そうとしたときに、それを止めるのはベイマックスなのだ。ベイマックスには、ベイマックスを作ったタダシの心が引き継がれている。タダシはいなくても、心は残っている。この辺は予告がしめしている通りなのだと思う。

けれど、予告にはまったく出てこなかったバトルの要素もふんだんに取り入れられているのだ。
まず最初から、ロボットファイトである。自作したロボット同士を戦わせている様子は、『リアル・スティール』や『ガンダムビルドファイターズ』のようだった。
屈強な男のあやつる見た目も怖いロボットを、小さいヒロの小さいロボットが見事倒すシーンのあとで、後ろの席に座っていた子供が「すごい…」と言っていて、予告があれでもちゃんと伝わっているのが感じられてほっとした。

そして、BIG HERO 6の6、この話の主役たちはタダシの同級生の科学おたくたちだった。ヒロを加えた5人+ベイマックスで6である。ベイマックスは“=タダシ”でもあると思う。
彼らが自分たちの特技を生かして戦う。スーツも自作する。一般人がヒーローに?というのは『キック・アス』っぽい感じでもあったけれど、それぞれの特技を生かしたスーツなのでそれよりは『アイアンマン』っぽいのかもしれない。スーツを着たベイマックスの飛び方もアイアンマンっぽかった。

ヒロとベイマックスを抜かした4人のキャラクターは、魅力的なのにまったく予告やポスターなどには出てこない。GO・GOの円盤が車輪になっていて足に付いているスーツ、両手がレーザーの刀になっているワサビのスーツ、ポシェットが付いていて日本の女児向けヒロインのようなハニー・レモンのスーツ、フレッドは着ぐるみの怪獣で口から火を吐く! もうどれもこれも恰好良いので、いまからでも遅くないので新しいCMでも作って欲しい。きっと、彼らのことが気になって映画を観たい!と思う人もいるはずなので。
でも、いままで予告で流れなかったおかげで、ネタバレを回避できて、映画を観た時に初見で興奮したので、逆に良かったのかもしれない。

予告で出てきた、スーツを着たベイマックスが力こぶを作るとスーツが全部飛んでっちゃうというシーンは本編では出てこなかった気がするけどどうなんだろう。予告だと、ケアロボットだからスーツは着られなかったみたいなオチに思えるけれど、実際はかなり恰好良く着るし、スーツを脱着できるベイマックスのおもちゃもロビーで売っていた。
スーツを着れば、ベイマックスは空も飛べるし、改造されたスーツではロボットパンチも搭載されている。

スーツを着たベイマックスにスーツを着たヒロが乗って飛ぶシーンは本当にワクワクした。
東京とサンフランシスコを混ぜたというサンフランソウキョウの町並み自体も見応えがあるけれど、それが空を飛びながら見られるのだ。鯉のぼりを模したものが浮いているのもおもしろい。
サンフランソウキョウというから東京なのだろうけれど、ヒロの家の近くの坂の様子と路面電車は、少し函館にも似ていた。

最後に、人間のためにロボットが犠牲になるのは、『インセプション』のTARSを思い出した。人工知能のようなものを持ったロボット共通の切なさ。
ロボットパンチを攻撃のためではなく救うために使うというのが泣ける。また、ロボットパンチの拳の中に、実はチップを隠し持っていたという結末も粋でした。

同じメンバーが活躍する続編も見てみたい。その時には是非、予告に全員登場させてあげてほしい。

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