『砂漠でサーモン・フィッシング』


2012年公開。イギリスでは2011年公開。
監督は『ギルバート・グレイプ』のラッセ・ハルストレム。
変な邦題だなと思っていたけど、原題が“Salmon Fishing in the Yemen”でわりとそのままだった。原作も日本で翻訳されていて、こちらは『イエメンで鮭釣りを』と原題通り。
イエメンの富豪が自国での鮭釣りを望み、イギリスの政府まで巻き込んですったもんだする。

なぜか実話だと思い込んでいた。国同士の友好関係の問題や、イエメンの環境の問題などが扱われている、どちらかというと政治的な映画なのかと思っていた。

途中でイエメンの富豪が、ヨーロッパ化が気に食わない輩に撃たれそうになった時に、アルフレッドが釣りのキャスティングで救うシーンがある。職場で毎朝気に食わない上司の顔めがけてキャスティングしてフライを当ててたんですが、その伏線がここで生かされる。
伏線回収はいいけれど、これはさすがに実話じゃないだろう、ここだけ脚色されたのかなと思っていたら、全部が実話ではなかった。

確かに砂漠で鮭を釣るなんて、無謀なのだ。その無謀を実際に成し遂げた人たちの話なのかなと思っていたら、フィクションだった。
ダムから水を供給して…とか、鮭を釣る上でのロケーションのような問題は、富豪の財力でなんとかなるかもしれない。しかし、途中で出てくる養殖の鮭でもDNAに記憶された本能で遡上するとかも本当なのか、全体におとぎ話なのかがよくわからない。

一旦は成功し、けれど心ない者のせいで破壊される。でも希望は残った。
夢物語ではあるけれど、国同士の関係も良くなったようだしめでたしである。このプロジェクト関連のことについてはこれでいいと思う。

案外この映画はラブストーリー寄りです。
イギリス側の中心人物が水産学者のユアン・マクレガー演じるアルフレッドと投資会社コンサルタントのエミリー・ブラント演じるハリエットなんですが、プロジェクトを通じて恋が芽生えることもあるでしょう。
それはいいんですけど、最初はアルフレッドは既婚者だし、ハリエットには新しい恋人ができたばかりだし、まさか二人がそんな仲になるとは思わなかった。なんで二人ともシングルにしなかったんだろう。フィクションならこの辺をどうにかしてほしかった。

アルフレッドは既婚者とはいえ夫婦仲があまりうまくいっていない。だから、一緒に過ごしていたハリエットにひかれるのもなんとなくわかる。でも、ハリエットの新しい彼は軍人で、戦地に赴いて行方不明になり、途中でもかなり動揺をしていた。ハリエットにはアルフレッドの入る隙は無かったと思う。

しかも、アルフレッドからの告白を受けたあとで、死んだと思った彼が帰ってくる。アルフレッドには無情な展開だなと思って観ていたんですが、あっさりと強引に、戦地から帰って来た彼をハリエットが振る。

アルフレッドは「お前なんて戦場で死んでしまえば良かったのに」といったことをオブラートに包んでその彼に言うんですが、プロジェクトは失敗し、意中の女性も失ったとなれば、こう言ってしまう気持ちもわかった。けれどそれは、ハリエットがアルフレッドのほうに来なかった場合の話です。
戦場でもハリエットのことを考えていたと言っていた。それなのに、帰ってきたら近くにいた男と付き合うことになっていた。おまけにそいつに酷いことを言われた。もうこの軍人の彼の気持ちになると落ち込んでしまう。

戦場に行く前も、ハリエットといちゃいちゃするシーンが結構あったし、仕事中も彼のことを考えているようだった。それなのに、なんでラストで急にアルフレッドの元に来るのか。アルフレッドがユアン・マクレガーで主人公だからとしか言いようがないような強引さを感じた。こんなことなら、ラブストーリー要素はないほうが良かった。

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