『ビッグ・アイズ』


ティム・バートン監督作で実話というのは珍しい。『エド・ウッド』も実話でしたが、今作も脚本が同じ方らしい。

以下、ネタバレです。






60年代アメリカでブームになった“ビッグ・アイズ”シリーズ。その絵を描いていたのは、作者として出ていた男性ではなく、実は妻だったという話。
その詐欺師まがいの男性ウォルター・キーン役がクリストフ・ヴァルツ、妻マーガレット・キーン役にエイミー・アダムス。この濃いキャストからもわかる通り、ほぼこの二人の二人芝居のようになっていた。舞台っぽいので、なんとなく『おとなのけんか』を思い出した。

エイミー・アダムスは髪型、服装ともに可愛かったし、演技の見ごたえもあったけれど、やはりクリストフ・ヴァルツがとにかくすごかった。

最初から最後まで胡散臭い。そして、この詐欺師まがいの役柄がとても合っていた。

最初は休日の露店でフランスの路地の絵を売っていたけれど、その時にボーダーのTシャツを着ているんですよね。こんな姿のヴァルツは見たことがない。でも、フランスだからたぶんその恰好をしているんだと思う。はっきり言って似合ってないし、登場の仕方からしてまず胡散臭かった。

マーガレットに目をつけて、結婚し、彼女の描いた絵を売り出す。実際はどうなのかわかりませんが、映画だと最初から自分が描いたことにしようとは思っていないようだった。他の人が勘違いをしたのでしめしめといった感じに見えた。
ただ、元々のフランスの絵も他の人のものだったようだし、どうなのかはわからない。

口八丁手八丁、うまいことを言いながら、どんどん絵を売り、のし上がっていく様子を見ると、自分が作者のフリをするのはどうかと思うけれど、彼の売り出しがなければここまで有名になることも無かったのではないかと思う。プロデュース能力は高そうなのだ。だから、プロデューサーに徹していれば良かったのに。

調子の良くべらべら喋るヴァルツの他に、酒に酔って逆ギレする様子も見られます。逃げ込んだ部屋の鍵穴から、火をつけたマッチを投げ込む様は怖かった。

一番の見せ場は、後半の裁判のシーンだと思う。弁護士を呼ばずに、弁護士と証人の一人二役を裁判所でやってのける。映画の中の裁判所内の人々も、映画館の観客たちも、後半なのでヴァルツの所業はわかっており、もうほとんどさめた目で、慌ただしく二役こなす様子を見守った。一人だけが動き回っていて、まさにヴァルツ劇場。

結局、どちらが描いた絵かを証明するために、裁判所で絵を描かせるのですが、最初から描かせれば話ははやかったんですよね。でも、それをやらなかったのは、ヴァルツ劇場のためでしょう。

「一時間で描いて」と言われても、当然、ヴァルツ演じるウォルターは描くことができない。「ひらめかない」などと言って、椅子に座り直したりしつつ、時間が迫って来たところで、いざ描こうと腕を上げて「痛たたたた」みたいなのはもうほとんどコントで、いらつきを通り越して笑ってしまった。

往生際が悪すぎるんですが、実際のウォルターもかなり往生際が悪かったようです。ただ、2000年まで自分が描いたと訴え続けて、無一文で亡くなったというのは、少しみじめで笑えない部分もある。引っ込みがつなかなくなってしまったのだろうか。

監督はティム・バートンでも、いわゆるティム・バートンとしてイメージされるものではないかもしれない。
ファンタジー路線だったり、ゴテゴテしてたりはないけれど、ちょうどいい薄まり具合だった。
しっかりとテイストは残っていた。絵のお金で建てた豪邸は、外観が山小屋風なのがなんとも可愛い。他の映画に出てくる豪邸とは少し違う。

ティム・バートン映画ということでコリーン・アトウッドが衣装を担当していますが、映画の種類のせいもあるけれど、これもいつものコスプレ調のものではない。けれど、50年代60年代アメリカの洋服のキュート度をさらに上げた感じでとても可愛いものだった。こちらも、ちゃんとテイストが残ってました。

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