Feb 06
もともとのミュージカル版や映画版などの『アニー』は観ていません。けれど、おそらく、設定がだいぶ変わってるのではないかと思います。
以下、ネタバレです。
ざっとあらすじを読んだだけなんですが、まず、最初にブロードウェイで上演されたのが1977年、1933年を描いた話らしい。ニューヨークが舞台なのは同じですが、今回、ジェイミー・フォックス演じるウィルは携帯電話会社の社長でしたが、元々の大富豪オリバーは特に職業が設定されてはいないようです。
しかも、携帯電話会社の意地悪社長が市長選に出るためのイメージアップとしてアニーを引き取るというのも、もとの設定からしたら考えられない。
観ていないのでちゃんとはわからないんですが、もとの話では大富豪はアニーのことを最初からまあまあ好意的に見ていたのではないかと思う。この映画だと、富豪のウィルは、選挙が終わったら捨てるというようなことも言っていたし、子供が嫌いで孤独を好む人物だった。
それが、なぜだか急に好意を持ち始める。
ウィルが実はかつらだというシーンはいらないのではないかと思ったけれど、今から思えば、かつらなのを見られたところから秘密の共有をして、好意を持って行ったのだろうか。ドレス姿が案外似合ってたから、というわけでもないだろう。
アニーが文字が読めないことを告白したときに、家庭教師をつけようと言い出して、どうしてそこまで気をかけるようになったのかわからなかった。父親が働いてた高架を見せに連れて行ったのもよくわからない。
この他にも、秘書が急にウィルのことを好きだと言い始めるのもとってつけたようだった。ずっと好きではあったんだろうけど、もう少し彼女の気持ちがわかるような描写が最初からないと、唐突に思えてしまう。もとの話でも大富豪と秘書の恋愛が描かれているようなので、無理矢理ねじこんだ感じがしてしまった。
キャメロン・ディアス演じる里親も急にアニーに好意的になっていた。歌がうまいと言っていたという話を聞かされてのことだったけれど、その前まで金に意地汚く、アニーを売り払おうとしていた人物だとは思えなかった。
歌手だった栄光を捨てきれずにしがみついている人物だから、歌のことを言われてあっさり改心したのかもしれないけれど、今まで顔の表情すべてを使って意地悪おばさんを演じていたのに急だった。
アニーもお父さんお母さんをあんなに捜していたのに、見つからないままあっさりウィルと親子になっていたのもわからない。もとの話だと死亡しているというのが明かされるらしいですが、それもなかった。何をきっかけに本当の両親に会うことをあきらめたのかわからない。
どうせみんな話や展開を知ってるんだろうし、人物をちゃんと描かなくてもいいだろうという適当さを感じてしまった。
あと、キャメロン・ディアスの『101匹わんちゃん』のヴィラン、クルエラにも見えた顔芸と、ウィルがかつらをはずしているところを見られたというシーンだけでなく、大袈裟なギャグが多くてコントっぽくなっている部分がたくさんあった。
ホームレスへの炊き出しで噴き出して、それがインターネットの動画サイトにアップされる、しかもパロディ多数など、一個一個のギャグが濃くて、しかも必要ではない濃さだったので、胸焼けがしそうだった。
福祉課の女性が、ウィルの家を訪問したときに一緒に踊っているのも余計に感じてしまった。秘書とアニー、二人でいいのに。
後半、偽の両親がアニーを車に乗せて走っていて、それをウィルたちがヘリコプターで追いかけるシーンも、さも見せ場のように撮られていたが、いらなかったのではないかと思う。偽の両親はウィルに依頼されたと思っていて、追っているのもウィルでというシーンをあんなにスペクタクルな撮り方をする必要はないと思う。単なる誤解、話の行き違いではないか。
ミュージカルとしては、最初の教室のシーンと、自転車のベルなど日常のものがリズムを刻むオープニング、部屋で一緒に暮らす養女たちと歌うシーン、養女たちと家の掃除をするシーンは良かった。掃除のシーンはホビットの食事のシーンを思い出した。軽快に皿を投げたり、上から捨てたゴミを、ゴミ箱の蓋を楯みたいに使って分別したり、見ていて楽しかった。
でも、それ以降は違和感があった。ジェイミー・フォックスもキャメロン・ディアスもクヮヴェンジャネ・ウォレスも、歌はうまいけれど所謂ミュージカルというか舞台っぽい歌いかたではないので、ミュージックビデオのように見えてしまった。
偽両親のオーディションで寸劇の途中で歌わせていて、なんで急に歌わせるんだと聞かれた時に、「ミュージカルみたいでしょ。歌で魔法がかかる」というセリフがあって、ミュージカル映画内でミュージカルが出てきて混乱した。じゃあ、他の歌っているシーンはなんだったのか。
最後の方でウィルとアニーが歌っていたときに、ハニガンも歌い出し、「二人が歌ってるんだから邪魔しちゃだめだよ!」と怒られるのも、メタ的というか、どの視点で観たらいいのかよくわからなくなってしまった。
あと、犬のサンディは白いむく犬であって欲しかった。両親がいない境遇に共感して飼うことになるので、白いむく犬が捨てられているのはおかしいから仕方ないのかもしれないけれど。
でも、アニーと言えば、アフロの女の子と白いむく犬ってくらい重要なアイコンだと思うので、変えてほしくなかった。
エンドロールでアウトテイク集があったんですが、子供たちとメガネのジェイミー・フォックスが踊っているのは可愛かったです。
『ANNIE/アニー』
Posted by asuka at 12:28 AM
もともとのミュージカル版や映画版などの『アニー』は観ていません。けれど、おそらく、設定がだいぶ変わってるのではないかと思います。
以下、ネタバレです。
ざっとあらすじを読んだだけなんですが、まず、最初にブロードウェイで上演されたのが1977年、1933年を描いた話らしい。ニューヨークが舞台なのは同じですが、今回、ジェイミー・フォックス演じるウィルは携帯電話会社の社長でしたが、元々の大富豪オリバーは特に職業が設定されてはいないようです。
しかも、携帯電話会社の意地悪社長が市長選に出るためのイメージアップとしてアニーを引き取るというのも、もとの設定からしたら考えられない。
観ていないのでちゃんとはわからないんですが、もとの話では大富豪はアニーのことを最初からまあまあ好意的に見ていたのではないかと思う。この映画だと、富豪のウィルは、選挙が終わったら捨てるというようなことも言っていたし、子供が嫌いで孤独を好む人物だった。
それが、なぜだか急に好意を持ち始める。
ウィルが実はかつらだというシーンはいらないのではないかと思ったけれど、今から思えば、かつらなのを見られたところから秘密の共有をして、好意を持って行ったのだろうか。ドレス姿が案外似合ってたから、というわけでもないだろう。
アニーが文字が読めないことを告白したときに、家庭教師をつけようと言い出して、どうしてそこまで気をかけるようになったのかわからなかった。父親が働いてた高架を見せに連れて行ったのもよくわからない。
この他にも、秘書が急にウィルのことを好きだと言い始めるのもとってつけたようだった。ずっと好きではあったんだろうけど、もう少し彼女の気持ちがわかるような描写が最初からないと、唐突に思えてしまう。もとの話でも大富豪と秘書の恋愛が描かれているようなので、無理矢理ねじこんだ感じがしてしまった。
キャメロン・ディアス演じる里親も急にアニーに好意的になっていた。歌がうまいと言っていたという話を聞かされてのことだったけれど、その前まで金に意地汚く、アニーを売り払おうとしていた人物だとは思えなかった。
歌手だった栄光を捨てきれずにしがみついている人物だから、歌のことを言われてあっさり改心したのかもしれないけれど、今まで顔の表情すべてを使って意地悪おばさんを演じていたのに急だった。
アニーもお父さんお母さんをあんなに捜していたのに、見つからないままあっさりウィルと親子になっていたのもわからない。もとの話だと死亡しているというのが明かされるらしいですが、それもなかった。何をきっかけに本当の両親に会うことをあきらめたのかわからない。
どうせみんな話や展開を知ってるんだろうし、人物をちゃんと描かなくてもいいだろうという適当さを感じてしまった。
あと、キャメロン・ディアスの『101匹わんちゃん』のヴィラン、クルエラにも見えた顔芸と、ウィルがかつらをはずしているところを見られたというシーンだけでなく、大袈裟なギャグが多くてコントっぽくなっている部分がたくさんあった。
ホームレスへの炊き出しで噴き出して、それがインターネットの動画サイトにアップされる、しかもパロディ多数など、一個一個のギャグが濃くて、しかも必要ではない濃さだったので、胸焼けがしそうだった。
福祉課の女性が、ウィルの家を訪問したときに一緒に踊っているのも余計に感じてしまった。秘書とアニー、二人でいいのに。
後半、偽の両親がアニーを車に乗せて走っていて、それをウィルたちがヘリコプターで追いかけるシーンも、さも見せ場のように撮られていたが、いらなかったのではないかと思う。偽の両親はウィルに依頼されたと思っていて、追っているのもウィルでというシーンをあんなにスペクタクルな撮り方をする必要はないと思う。単なる誤解、話の行き違いではないか。
ミュージカルとしては、最初の教室のシーンと、自転車のベルなど日常のものがリズムを刻むオープニング、部屋で一緒に暮らす養女たちと歌うシーン、養女たちと家の掃除をするシーンは良かった。掃除のシーンはホビットの食事のシーンを思い出した。軽快に皿を投げたり、上から捨てたゴミを、ゴミ箱の蓋を楯みたいに使って分別したり、見ていて楽しかった。
でも、それ以降は違和感があった。ジェイミー・フォックスもキャメロン・ディアスもクヮヴェンジャネ・ウォレスも、歌はうまいけれど所謂ミュージカルというか舞台っぽい歌いかたではないので、ミュージックビデオのように見えてしまった。
偽両親のオーディションで寸劇の途中で歌わせていて、なんで急に歌わせるんだと聞かれた時に、「ミュージカルみたいでしょ。歌で魔法がかかる」というセリフがあって、ミュージカル映画内でミュージカルが出てきて混乱した。じゃあ、他の歌っているシーンはなんだったのか。
最後の方でウィルとアニーが歌っていたときに、ハニガンも歌い出し、「二人が歌ってるんだから邪魔しちゃだめだよ!」と怒られるのも、メタ的というか、どの視点で観たらいいのかよくわからなくなってしまった。
あと、犬のサンディは白いむく犬であって欲しかった。両親がいない境遇に共感して飼うことになるので、白いむく犬が捨てられているのはおかしいから仕方ないのかもしれないけれど。
でも、アニーと言えば、アフロの女の子と白いむく犬ってくらい重要なアイコンだと思うので、変えてほしくなかった。
エンドロールでアウトテイク集があったんですが、子供たちとメガネのジェイミー・フォックスが踊っているのは可愛かったです。
calendar
ver0.2 by バッド
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
2013年公開。リュック・ベッソン監督作品。 アメリカ版だと『The Family』というタイトルらしい。フランス版は同じく『マラヴィータ』。イタリア語で“暗黒街での生涯”とかの意味らしいですが、主人公家族の飼っている犬の名前がマラヴィータなのでそれだと思う。別に犬は活躍しま...
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
2007年公開。このところ、ダニー・ ボイル監督作品を連続で観てますが、 こんなSFを撮っているとは知らなかった。しかも、 主演がキリアン・マーフィー。でも、考えてみればキリアンは『 28日後…』でも主演だった。 映像面でのこだわりは相変わらず感じられました。 宇宙船のシールド...
-
Netflixオリジナルドラマ。 童貞の息子とセックス・セラピストの母親の話と聞いた時にはエロメインのキワモノ枠かなとも思ったんですが、母子の関係がメインではなく、そちらを描きつつも、学校生活がメインになっていた。 ドラマ開始から学生同士のセックスシーンだし、どうだろう...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
原題は『The Young Pope』。ジュード・ロウがローマ教皇を演じたドラマの後半。(前半の感想は こちら ) 前半は教皇が最強でもう誰も逆らえないみたいになったところで終わった。 ジュード・ロウ自体が美しいし、そんな彼が人を従えている様子は、神というよりは悪魔のよ...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
2000年公開。曲や映像づくりなど、とてもダニー・ ボイルらしい映画だった。 幻のビーチに辿り着くまでの話なのかと思っていたけれど、 かなり序盤でビーチには辿り着いてしまう。 そこから物語が展開していくということは、 ビーチがただの天国ではなかったということ。 一人旅の若者が...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
© 2025
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: