『ANNIE/アニー』


もともとのミュージカル版や映画版などの『アニー』は観ていません。けれど、おそらく、設定がだいぶ変わってるのではないかと思います。

以下、ネタバレです。





ざっとあらすじを読んだだけなんですが、まず、最初にブロードウェイで上演されたのが1977年、1933年を描いた話らしい。ニューヨークが舞台なのは同じですが、今回、ジェイミー・フォックス演じるウィルは携帯電話会社の社長でしたが、元々の大富豪オリバーは特に職業が設定されてはいないようです。
しかも、携帯電話会社の意地悪社長が市長選に出るためのイメージアップとしてアニーを引き取るというのも、もとの設定からしたら考えられない。

観ていないのでちゃんとはわからないんですが、もとの話では大富豪はアニーのことを最初からまあまあ好意的に見ていたのではないかと思う。この映画だと、富豪のウィルは、選挙が終わったら捨てるというようなことも言っていたし、子供が嫌いで孤独を好む人物だった。

それが、なぜだか急に好意を持ち始める。
ウィルが実はかつらだというシーンはいらないのではないかと思ったけれど、今から思えば、かつらなのを見られたところから秘密の共有をして、好意を持って行ったのだろうか。ドレス姿が案外似合ってたから、というわけでもないだろう。
アニーが文字が読めないことを告白したときに、家庭教師をつけようと言い出して、どうしてそこまで気をかけるようになったのかわからなかった。父親が働いてた高架を見せに連れて行ったのもよくわからない。

この他にも、秘書が急にウィルのことを好きだと言い始めるのもとってつけたようだった。ずっと好きではあったんだろうけど、もう少し彼女の気持ちがわかるような描写が最初からないと、唐突に思えてしまう。もとの話でも大富豪と秘書の恋愛が描かれているようなので、無理矢理ねじこんだ感じがしてしまった。

キャメロン・ディアス演じる里親も急にアニーに好意的になっていた。歌がうまいと言っていたという話を聞かされてのことだったけれど、その前まで金に意地汚く、アニーを売り払おうとしていた人物だとは思えなかった。
歌手だった栄光を捨てきれずにしがみついている人物だから、歌のことを言われてあっさり改心したのかもしれないけれど、今まで顔の表情すべてを使って意地悪おばさんを演じていたのに急だった。

アニーもお父さんお母さんをあんなに捜していたのに、見つからないままあっさりウィルと親子になっていたのもわからない。もとの話だと死亡しているというのが明かされるらしいですが、それもなかった。何をきっかけに本当の両親に会うことをあきらめたのかわからない。

どうせみんな話や展開を知ってるんだろうし、人物をちゃんと描かなくてもいいだろうという適当さを感じてしまった。

あと、キャメロン・ディアスの『101匹わんちゃん』のヴィラン、クルエラにも見えた顔芸と、ウィルがかつらをはずしているところを見られたというシーンだけでなく、大袈裟なギャグが多くてコントっぽくなっている部分がたくさんあった。
ホームレスへの炊き出しで噴き出して、それがインターネットの動画サイトにアップされる、しかもパロディ多数など、一個一個のギャグが濃くて、しかも必要ではない濃さだったので、胸焼けがしそうだった。
福祉課の女性が、ウィルの家を訪問したときに一緒に踊っているのも余計に感じてしまった。秘書とアニー、二人でいいのに。

後半、偽の両親がアニーを車に乗せて走っていて、それをウィルたちがヘリコプターで追いかけるシーンも、さも見せ場のように撮られていたが、いらなかったのではないかと思う。偽の両親はウィルに依頼されたと思っていて、追っているのもウィルでというシーンをあんなにスペクタクルな撮り方をする必要はないと思う。単なる誤解、話の行き違いではないか。

ミュージカルとしては、最初の教室のシーンと、自転車のベルなど日常のものがリズムを刻むオープニング、部屋で一緒に暮らす養女たちと歌うシーン、養女たちと家の掃除をするシーンは良かった。掃除のシーンはホビットの食事のシーンを思い出した。軽快に皿を投げたり、上から捨てたゴミを、ゴミ箱の蓋を楯みたいに使って分別したり、見ていて楽しかった。
でも、それ以降は違和感があった。ジェイミー・フォックスもキャメロン・ディアスもクヮヴェンジャネ・ウォレスも、歌はうまいけれど所謂ミュージカルというか舞台っぽい歌いかたではないので、ミュージックビデオのように見えてしまった。

偽両親のオーディションで寸劇の途中で歌わせていて、なんで急に歌わせるんだと聞かれた時に、「ミュージカルみたいでしょ。歌で魔法がかかる」というセリフがあって、ミュージカル映画内でミュージカルが出てきて混乱した。じゃあ、他の歌っているシーンはなんだったのか。
最後の方でウィルとアニーが歌っていたときに、ハニガンも歌い出し、「二人が歌ってるんだから邪魔しちゃだめだよ!」と怒られるのも、メタ的というか、どの視点で観たらいいのかよくわからなくなってしまった。

あと、犬のサンディは白いむく犬であって欲しかった。両親がいない境遇に共感して飼うことになるので、白いむく犬が捨てられているのはおかしいから仕方ないのかもしれないけれど。
でも、アニーと言えば、アフロの女の子と白いむく犬ってくらい重要なアイコンだと思うので、変えてほしくなかった。

エンドロールでアウトテイク集があったんですが、子供たちとメガネのジェイミー・フォックスが踊っているのは可愛かったです。

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