『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』


わりと評価が散々な感じみたいなのですが、私はそこまで嫌いではなかったです。
以下、ネタバレです。







演技のコミカルなジョニー・デップはもういいよという声も散見される本作ですが、確かに、いつも通りというか、いつもより過剰なジョニー・デップでした。眉を上げたびっくり顔、いたずらがばれそうだけどすました知らん顔、ひょこひょこと走る姿…。でもどれも、もういいよと言われるのをわかっていてやっていそうな気がした。
『ローン・レンジャー』のトントさんの時も思ったのですが、ジョニー・デップは自分の体型をうまく生かしているのではないかと思う。背が低くて、顔が大きく足の短い昔の人っぽいスタイル。隣に隣りにポール・ベタニーのような、背が高くて顔が小さいイケメン体型の人が並ぶと、普通よりコミカルに動いたほうが画面映えする。
前はジョニー・デップだって、イケメン俳優だったかもしれない。でも、もう違うのだということが自分でわかっているのだと思う。

そのせいで、ノリもギャグも古くさいんですよね。でもそれは、ジョニー・デップの動きには合っているし、音楽やエンドロールの文字フォントから考えても、狙ってのことだと思う。パントマイムのような動きもしつつ、古き良き喜劇を目指したのではないだろうか。

あと、全体的にカートゥーンとかルーニー・テューンズっぽくもある。そうでないと、ポール・ベタニーは劇中で何度も死んでいただろう。何回も撃たれるんですが、死なないし、一回なんて吹っ飛んでいて、笑いに転化されていた。

ポール・ベタニー演じるジョックはかなりいいキャラクターだった。モルデカイの用心棒というのは、ベタニーの強面な見た目からしてもわかる。腕っ節も強そうに見える。実際に、闘っても強い役だった。
召使いを兼ねているというのもギャップがあっていい。無骨な見た目でも、神経は細やかだし、モルデカイの洋服をアイロンがけしてあげているのは可愛かった。一家に一台と言われていたけれど、これは欲しい。
更に絶倫ということで、設定が盛りだくさんなんですが、この設定は必要あったのかわからない。手癖が悪いからといって、問題が起こったり解決したりは特になかったと思う。淫乱娘(そう呼ばれていた)は出てきたのに、彼女とも特にトラブルは無かった。原作ではどうなっているのだろうか。

ジョックはモルデカイとの関係も良かった。常に振り回されているけれど、どこがいいのか、一生懸命仕えていた。
飛行機で酔っぱらったモルデカイをお姫様抱っこしてあげているのもかわいい。ちなみにこのシーンでは、「授賞式で酔っぱらう俳優よりマシ」というジョニー・デップ自虐ギャグもあり。
オークション会場では、モルデカイは逃げようとしながらも、結局危険を冒してジョックを救ってあげていた。主従関係だとそういうシーンもあるといいですよね。
あそこまで大袈裟ではないとは思うけど、普段からジョニー・デップとポール・ベタニーってあんな感じなのかなと考えると楽しい 。

もう一人、学生時代の友人で、モルデカイの奥さんのことを慕っていたというMI5の警部補マートランド役のユアン・マクレガーも良かった。モルデカイやジョックに比べると地味だけれど、下心によって振り回されて割りを食う役。

キャラクターは良かった。おちゃらけた雰囲気も悪くない。でも、さっきのジョックの絶倫設定の続きですが、少し下ネタが多すぎる気はした。
「髭の男性とキスをするのは、私のアソコに口をつけてるようで嫌」とか、「TOYOTAのクリちゃん」とか。字幕だと若干マイルドになっているけれど、英語では直接的なワードになっていた。また、エロ系だけではなく、汚い系というか、ゲロネタも多かった。もらいゲロ体質と言いながらえづくまではいいけれど、実際に…というのはちょっと。

前に、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』を観に行った時に、ジョニー・デップ目当てなのかわかりませんが、観客の女性が血が出るシーンで顔を覆っていた。今回、ジョニー・デップだから…ということで観に来たファンの人は、このお下劣ギャグの応酬に耐えられるのかなとも思った。

また、“華麗なる名画の秘密”という大層なサブタイトルが付いているし、序盤の展開からして謎解きものか?とも思うんですが、特に大きなどんでん返しがあるわけでもなく。ラストもまあ想像通りというか、驚くようなことはなかった。
ロンドン、オックスフォード、モスクワ、カリフォルニアといろんな場所に飛ぶくせに、大したことが起こらない。
最初、絵が盗まれたときに「モルデカイが…」と言っていたので、すべては奥さんの仕業なのかと思っていたけれど、そんなこともなかった。首謀者が近くにいたら面白かったけれど。

濃厚な下ネタのわりにストーリーがやけにあっさりしていると思ったけれど、この辺も原作通りなのかもしれないし、なんとも言えません。
ただ、下ネタに注いだ情熱をもう少しストーリーのひねりに注いでくれればいいのに…とは思った。

ジョニー・デップの演技からの頭ごなしな否定はしないけれど、もう少しなんとかなったのではないかとも思ってしまった。









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