『パレーズ・エンド』


2012年のイギリスBBCとアメリカHBO制作のドラマ。ベネディクト・カンバーバッチ主演。
全三話ですが、一話が90分くらい。
この前見た『スモール・アイランド』は第二次世界大戦少し前でしたが、こちらは1908年スタートで第一次世界大戦少し前から始まる。ベネディクト・カンバーバッチが戦争へ行くという面では一緒。ただ、『スモール・アイランド』のほうがテーマが深く、重く、根深い問題が扱われている気がした。こちらはどちらかというと、戦争そのものよりも、戦争で味付けしたラブストーリーといった感じ。見て、考えさせられるようなものではなかった。

敬虔なキリスト教徒であるクリストファー(ベネディクト・カンバーバッチ)が半ば騙されたような形でシルヴィアという女性と結婚することになる。風貌も派手で、他の男と駆け落ちなどをしても、クリストファーは悲しそうにはするものの、怒らない。
クリストファーは女性活動家のヴァレンタインに出会い、彼女に恋をし、惹かれ合う。しかし、キリスト教徒のためか、時代背景なのか、クリストファーは離婚はできないという。
クリストファーの心が他の女性に移ったのを知ると、シルヴィアも本気になって夫の心を繋ぎ止めようとし…というように、二人の女性の間で揺れ動くカンバーバッチといった内容。

タイトルの『パレーズ・エンド』のパレードというのは、最初に“信じる者と果たすべき義務を止めるわけにはいかない”というナレーションから、結婚生活や子供との生活のことかと思った。エンドということは離婚をしてヴァレンタインを選ぶのだろうと思っていた。
途中で戦争の話になり、兵士の行進している姿が映ることから、“パレーズ・エンド”は戦争が終わることもさしているのかもしれない。

シルヴィアを演じるレベッカ・ホールが最初に上半身のヌードを見せて少しぎょっとしてしまった。どんな時間帯で放映されたドラマなのかわからないけれど、イギリスやアメリカはオッケーなんですね。
最後の方でヴァレンタインを演じるアデレイド・クレメンスの裸も出てきた。しかも、クリストファーと結ばれる夢を見ているシーンで、夢のシーンの裸なんてあってもなくてもいいようなものだと思うけどなんなんだろうと思っていたら、そのあとで、夢が現実になるシーンがあった。
現実シーンはわりとしっかりした絡みというか、ベネディクト・カンバーバッチがおっぱいに直に触っていた。これはかなり最後のほうのシーンなのですが、それを見て、すべて合点がいったというか、納得してしまった。
これってハーレクインだ…。

女性の裸も、男性向けのサービスシーンではなくて、女性向けだったのだ。ヴァレンタインを自分と重ねて見て、自分に触れるベネディクト・カンバーバッチを想像するためのドラマだった。綺麗な奥さんがいても、諦めなければ最後には自分の元に彼は来てくれる。そんな夢を見させてくれる作品なのだ。

ベネディクト・カンバーバッチは日本でもベネ様などと言われていたけれど、イギリスでも王子様なのだ。しかも本作では金髪である。軍服姿も凛々しい。

二人の女性と戦争に翻弄されるベネディクト・カンバーバッチを見よというドラマだった。気弱だけれど、どこまでもいい人で、描かれ方がまるでアイドルのようだった。

その一方で、戦争の描き方はやや薄く感じた。
被弾するシーンではカンバーバッチが宙に舞い、笑わせるために作ったシーンではないことはわかるけれど、どこか滑稽に見えてしまった。もしかしたら、去年のアカデミー賞のフォトボムを思い出したのかもしれない。ドラマの作り方のせいではないのかも。

ヴァレンタイン目線で見れば確かにハッピーエンドだけれど、個人的にはシルヴィアのほうが好きだった。最初の方の男遊び具合はひどいけれど、途中から焦って必死になってしまう様子や、意地っ張りで嘘つきな性格も可愛く見えてきた。けれど、振り向いてもらうために、強硬すぎる手段に出たのが別れを決定的にしてしまったと思う。
大切にしていた木を勝手に切られたら、それは怒る。取り返しがつかない事をしてしまったら、取り返しのつかない事態を招くのは当たり前のことなのだ。
怒ったクリストファーが切られた木を新居へ持って帰るが、もうすべて忘れるためなのか、それを暖炉にくべるラストは良かった。過去を断ち切って、新しい日々が始まる。清々しい気持ちになった。



0 comments:

Post a Comment