『ランゴ』


2011年公開。ジョニー・デップの西部劇というだけでなく、なんとなく『ローン・レンジャー』を思い出すと思ったら、同じゴア・ヴァービンスキー監督の作品だった。脚本は『007 スカイフォール』などのジョン・ローガン。

アニメというかCG映画で、声優がジョニー・デップなのですが、メイキングを見ると、声優というよりは実写映画の出演と同じようだった。マイクの前でセリフを喋る、よくあるアフレコ風景とはまったく違っていて驚いた。俳優さんがキャラクターの衣装を着ていて、体の動きもつけながら演技をしていた。アフレコの時に怒っているシーンではつい顔も怒ってしまうというような話があるけれど、それのもっと大袈裟版です。でも、あの実写だけの本編も観てみたいくらいだった。

舞台はアメリカ南西部。人に水槽の中で飼われていたカメレオンのランゴが車の荷台から落ちてしまうことから始まる冒険。
最初に出会うアルマジロやカエルは南部訛りなのか、字幕では関西弁になっていた。

西部劇なのですが、キャラクターがカメレオンなど小型の動物なので、馬の代わりに走る鳥に跨がっていた。辿り着いた村も、建物が人間の捨てたゴミで作られていたりと、こだわりがある。
敵との追いかけっこは西部劇の一番盛り上がるところですが、そこでワーグナーの『ワルキューレの騎行』が使われているのが一層盛り上がる。『ローン・レンジャー』では『ウィリアム・テル序曲』が使われていましたが同じような使い方。
この前にランゴが女装をしてお芝居をするシーンがあるのですが、この追いかけっこアクションはその続きで女物のドレスを着ていて、その衣装が生かされたものになっているのもうまい。
ここで、空からの追っ手が鳥ではなくコウモリに乗っているのもおもしろい。追っ手たちはプレーリードッグ。今回、悪役のようなポジションなので、土から続々と顔を出す様子がゾンビが地中から蘇るのと同じように撮られていた。こんなに可愛くないプレーリードッグ初めて見ました。

プレーリードッグは悪意を持った描かれ方をしているけれど、他の動物も特別可愛いわけではない。アイアイがモチーフの女の子が可愛いくらいで、他は砂漠の生き物がモチーフなので、他の映画ではキャラクターになりにくい生き物が揃っている。は虫類、両生類も盛りだくさん。毛が生えたほ乳類もいるけれど、肌触りがごわごわしていそうというか、汚そう。でも、それは彼らが暮らす環境の厳しさを物語っているようでもあった。
大体、主人公がカメレオンである。目玉がぎょろぎょろ動くし、肌は鱗でびっしり。でも、見ているうちに不思議と愛着が沸いてくるし、人形などが売っていたら欲しいと思ってしまった。おそらく、自分探し=何にでもなれる=カメレオンということなのではないかと思うけれど、どうなんだろう。


最大の敵はヘビの死神ジェイクなのですが、演じているのがビル・ナイ。メイキングで「鱗があるキャラがあれば私が呼ばれる」と言っていたけれど、『魔術師マーリン』のドラゴンのことを思い出した。このジェイクが、ヘビなので手は無いのですが凄腕のガンマン。尻尾の先が銃口になっているというキャラクターデザインがかっこいい。

物語の進行役兼音楽係のフクロウたちは可愛かった。場面転換で楽器を演奏したり、ナレーションもしていたけれど、他のキャラから「ちょっと音楽止めてよ!」と言われていたので、メタ的な存在でもあった。
彼らが最初に「これは死んだヒーローの話です」というようなことを言ったので、ハッピーエンドに近づいて来ていそうなのに、ああでも死ぬのか…と思いながら観ていたら、フクロウの一人が同じ質問を投げかけてくれて、「死ぬよ、いつかはね!」みたいな答えでした。良かった!

途中でも一回、ギターソロを弾くシーンがあったけれど、エンドロールでもフクロウたちはバンド形式で演奏していた。ランゴの鱗の肌がモザイクのようになっていて、少しお洒落なアニメーションになっている。

後半、嘘がバレて村を追い出されたランゴが倒れてからのシーンはファンタジックだった。多数のダンゴムシが連れて行った先で見たもの、会った人、聞いたこと。歩くサボテンがゆっくりと動く様子と白っぽい画面が綺麗でした。
その前までの、村の埃っぽさも表現がうまいと思った。特に水を貰うための儀式のような踊りのときに、動くたびに砂が舞うのが本当に乾燥しているのが伝わって来た。水のおいしそうな感じも素晴らしく、喉が渇いてくる。

最後、再び村の仲間に迎え入れてもらった時に、かつてのもの言わぬお友達も一緒に仲間に入っていたのも良かった。水槽で飼われていたときに、ランゴは一緒に水槽に入っていたおもちゃたちを相手に一人芝居をしていた。いま、他に友達ができたからといって、彼らのことを見捨てたわけではないのがわかって嬉しかった。




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