『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』


1も2もおもしろかったけれど、今回もおもしろかった。このタイプの映画で毎回おもしろいのは稀だと思うけれど、そもそも、“このタイプ”の定義が間違っていたのだと、映画を観ながら気づいた。
過去のアクションスターたちが大暴れして、スカッとして何も残らない系の映画だと思われがちだし、私も観る前までそう思っていたけれど、観たら、そういえばこの映画はそれだけではなかったのだと思い出した。

以下、ネタバレです。







このシリーズはアクションよりも、出てくるキャラクターたちがわいわいやっているのが楽しいのだった。
前作からの引き続きのキャラクターも出てきます。バーニー(シルベスター・スタローン)はもちろん、飛行機で隣りの席にはクリスマス(ジェイソン・ステイサム)、後ろにはガンナー(ドルフ・ラングレン)、トール・ロード(ランディ・クートゥア)、シーザー(テリー・クルーズ)が座っている。
彼らがかつての仲間であるドク(ウェズリー・スナイプス)を助けにいくところから始まる。この新キャラがまた良くて、映画内では新キャラだけれど、バーニーとは昔なじみだから、偉そうだし、いつものメンバーは気に食わない。
そのごたごたと、バーニーに言われてしぶしぶ、けれど素直に「助けてくれてありがとう」というシーンににやにやした。
これは本当に序盤も序盤で、この先もにやにやするシーンは多々出てくる。ちょっとしたセリフまわしや何気ない一言がすべて可愛い。

このあとで、シーザーを怪我させたバーニーは、いままでのメンバーを解雇する。俺たちはもう歳だし未来がない、というのはメタ発言でもあると思った。
タイトルやコンセプトからして、もう旬の過ぎたアクションスターたちが消耗品として暴れまくるということでメタ的ではある。
今回は、ブルース・ウィリスの降板によりハリソン・フォードが代わりに出ているんですが、「奴の出番はない」というセリフのときに、全部は聞き取れなかったんですが、Pictureという単語が使われていたのが気になった。
また、最後にバーニーがドラマー(ハリソン・フォード)に「たまにはこうゆうのも若返るだろ?」というのもメタ的。

解雇後に新たなメンバー探しをするんですが、バーニーと一緒に斡旋業のボナパルト(ケイシー・グラマー)がさながら旅行のように各地をまわるのが楽しい。新人たちに合った曲が流れるのもおしゃれだし、二人の旅の間のおしゃべりも楽しい。灰に影が見つかった話もにやにやした。
もうこの二人の新人発掘の旅だけで、映画を一本作ってもらいたいくらい楽しかった。実際には10分ちょっとだったらしい。

ここでは少ししか出てこないんですが、アントニオ・バンデラス演じるガルゴが84年生まれと履歴書に嘘を書いていた話も笑った。スカウトしに行って、なんだおっさんかみたいな空気になるのがおもしろかった。

バーニーが若者たちを引き連れて仕事をするときに、「ドアを蹴破るのは80年代まででしょ」と言われるのもメタでした。
若者たちはコンピューターを駆使して侵入扉をロックしたりと、単純に力勝負ではない方法を使っていた。これはこれでいいけれど、これでは近頃のアクション映画と同じになってしまうのでは。そもそも、消耗品軍団には変わらないけれど、若者にそれをやらせるのはどうなのか。コンセプト自体が変わってしまうのでは。
そんなことも考えてしまったんですが、心配は無用でした。

解雇されたあと、クリスマスは切れ味の良いナイフの通販番組を見ていたり、ガンナーは実弾射撃場で的がぼろぼろになるまで撃ち続けたり。日常に満足できない男たちが映されているBGMには切ない曲が流れていて、撮影方法も他のシーンとは違ってゆったりとしたカメラワーク。完全に恋人に捨てられた男たちになっていた。悲しいシーンだけれど、ここもにやにやしました。

結局若者たちは軒並み捕まってしまい、消耗品と言いながらもバーニーは助けに向かうんですが、ここで出て来るのが、つかず離れずのような状態になっていたアーノルド・シュワルツェネッガー演じるトレンチ。やはりこうゆう場面では助けてくれるというところに、盟友の証を感じて嬉しい。

そして、年齢詐称のガルゴ(アントニオ・バンデラス)もここで出てくる。
めちゃくちゃ喋りまくる。相手にされていなくても一人で喋りまくる。でも、過去の話で実は仲間をすべて亡くしていて自分だけが生き残ったと明かしたときに、バーニーがその退院の名前を出して、実は話をちゃんと聞いていたことがわかるシーンは泣けた。これはバーニー、モテるに決まってると思った。
また、アントニオ・バンデラスは出演者の中で、断トツで演技がうまいのもよくわかった。他の出演者たちは、やりとりはおもしろくても、どちらかというと朴訥というか、長いセリフはそんなにないし、演技らしい演技はない。けれど、ガルゴについては、実は哀しい過去があったり、愉快なだけじゃない面を見せて泣かせたりと、いままでにないキャラクターだし、話に幅も出たと思う。

そのあと、ガルゴとバーニーだけで出発しようとしたときに、飛行機の前で通せんぼするように立つかつての面々がかっこいい。戦闘態勢に入った恰好で立ちふさがる。いくら解雇されても、彼らの覚悟は変わらない。絆の深さにここも泣けた。
そして、バーニーも隣りに座っていたガルゴに「そこにはクリスマスが座るからどけ」と言うのも良かった。憎まれ口ばかりだけど、やはり大事な仲間だったのだ。
そして、後ろでは、ガルゴの喋りにうんざりした様子の他の面々…。
ハリソン・フォード演じるドラマーから援軍の連絡が入るんですが、そのときに、ジェイソン・ステイサムがイギリス訛りで喋るのを「何?聞こえない」みたいに煽られるのもおもしろかった。こういった余計なぽつぽつしたところが全部好きなのです。

ガンナーが腕に何かの端末を付けているんですが、「あの若造の影響か?」と聞かれて否定していたけれど、明らかに若造の影響です。俺も何か新しいものを取り入れねば、と考えたんだろうと思うと可愛すぎる。
しかも、若者たちを助けたあとで、若者がその端末を使おうとすると、充電が切れそうになっている。「天気予報くらいしか見ないから」って言い訳も可愛い。腕に付けてはみたものの、まったく使いこなせてなかった。これ、ドルフ・ラングレンってところが一層可愛いんですよね。

そして、ここからは最終決戦、アクションシーンが続く。若者メンバーと大人メンバーが揃ったことで、さきほどのありきたりなアクション映画になってしまうのでは…という懸念は払拭された。単純にアクションの幅が広がって見応えがあった。
銃や手投げ弾はもちろん、バイクも使う、敵の戦車にも乗り込む。空からはヘリをドラマーが運転し、後部座席ではトレンチとかつてのメンバー、イン・ヤン(ジェット・リー)がマシンガンのようなものをぶっ放している。
廃ビルが舞台なので、おそらく最後には壊れるんだろうなと思いながら見てましたが、各階や屋外、空といろんな場所でいろんな攻撃が繰り広げられているのが、贅沢だった。
そして、最後はやはりお約束というか、バーニーとストーンバンクスの殴り合い。肉弾戦です。

ストーンバンクスを演じたのがメル・ギブソン。あんまりいい印象がなかったんですが、彼の悪役が本当に憎々しいキャラクターでこの配役も豪華だし、よく合っていた。

たぶん、ジャンル的にはアクション映画なのだろうし、アクションだけを楽しみにくる人もいると思う。もちろんアクションも素晴らしかった。アクションシーンとのギャップもあって、日常パートがより楽しめるのかもしれない。

そして、今回も打ち上げシーンがあった! 飲み屋だし同じところかなと思ったけれど、前回までのメンバーだったタトゥー屋のツールがいないので、今回は違う場所になっているらしい。
ドクとクリスマスがダーツ盤を使ってナイフ投げ勝負をしていたけれど、ナイフの使い手としてどちらが上かという勝負ももちろんあるでしょうが、バーニーの取り合いにも見えた。

若者たちが全員でKARAOKEでニール・ヤングの『OLD MAN』を歌っているのも良かった。“爺さん、俺の人生を見てくれ/まだ24歳、なんでもできる” 生意気ながらも、しっかりしてる。でも、完全な世代交代がなくて良かった。
ただ、若者メンバーを今回出すならば、前回出てきたリアム・ヘムズワーズも仲間に入れて欲しかったとも思う。今回は一人も欠けることがなくて、それも良かった。

最後にバーニーがクリスマスの肩を抱いてあげていたのも感動した。
解雇したのだって、もちろん、大切なメンバーのことを考えてのことである。でも、現場から退かせることが、必ずしも最良ではないのだ。たぶん、この先はずっと一緒に戦っていくのだろう。

そういえば、トレンチとイン・ヤン、まさかの交際発覚。身長差、体格差の面でもお似合いでした。
ところで、脚本にシルベスター・スタローンも参加してるんですけど、数々の萌えシチュエーション&セリフももしや全部わかってやっているのでは…。
『エクスペンダブルズ4』も楽しみにしています。

この映画、パンフレットも満足できる作りでした。ストーリーやキャラ・出演者・スタッフの紹介、インタビュー、プロダクションノートはもちろん、使われた武器の説明、今回行った場所、作戦の図解など盛りだくさんすぎる。怒髪天の増子直純兄ィと杉作J太郎の対談もあり。
細かい字だけどたぶん、エンドロールで流れた文字を全部載せてる。あと、出演者の全作品リスト。これもかなり細かい文字。
一番気に入ったのは、欄外のはみキン情報!(はみ出しキンニク情報!)で、なんてことないトリビアが載ってるんだけど、この愛の込め方がたまらない。パンフレットの作り手も本当にこの作品が好きなのが伝わってくる。『ハングオーバー3』のパンフレットで受けた以来の感動です。
最近、映画の公式サイトがプロダクションノートをPDFで公開していたりして、決して安くはないし、もうわざわざパンフレットを買うことはないかもと思っていたけれど、これはとても嬉しかった。

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