『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』



2013年シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクションにて公開。イギリスでは2012年公開。
シッチェス映画祭はホラー映画よりのものを多く扱っているので、最初にこの情報を知っていたらなんとなく作品の進む方向もわかったと思うんですが、トビー・ジョーンズ主演ということしか知らなかったため、ジャンルすらわからないまま観ました。
特にトビー・ジョーンズということで、もしかしたらコメディーなのではないかと思ってしまった。

タイトルからもわかる通り、音効さんの話。トビー・ジョーンズはやり手の音効さんで、イタリアのスタジオに助っ人として呼ばれる。映画はこのスタジオ内のみで展開するので、舞台っぽくもある。
髪の毛を抜くシーンはエシャロットのような野菜の茎を抜き、スイカを床に叩き付け、キャベツにナイフを突き立て…。そのスイカをスタッフさんたちが食べていたりして、作っている映画の内容と裏腹に、妙なおかしさがあった。

やはりコメディーなのかなとも思っていたんですが、途中で何度も挿入される腐った野菜、蜘蛛、録音中なのでお静かにという看板の点滅が不気味。
その内、映画の展開も少しずつおかしくなっていく。

ナイフを突き立てているのがキャベツだとは言え、その後に女性の悲鳴が聞こえたらなんとなく嫌なものだし、繰り返していたら気分も悪くなってくる。
そのくせ、やめさせてくれ帰らせてくれと言っても、仕事をまっとうしろと言われる。
スタジオ内の出来事なので、余計に閉じ込められている感じがした。

そのうち、現実なのか、悪夢なのか、わからない展開が続いて来て、終わりのほうは映画内で作っている映画と現実が混ざってくる。

結局、実際にどうなったというのははっきりはされない。映像もアートっぽくもあるし、もしかしたら推測するのは野暮なのかもしれないけれど、主人公の精神が病んでしまったのか、部屋に来た女優に殺されたのかもしれない。

映画の説明みたいなものを見ると、“主人公が自らの残虐性に気づいていく”と書いてあるけれど、そうとはとらえられなかった。
作っている映画や、監督やスタッフ、女優など、周りの人物が最初は奇妙なだけだったけれど、少しずつ不気味に変容していくのがおもしろかったです。

トビー・ジョーンズの何を考えているかわからない部分や、悪人にも善人にも見える風貌がうまく生きていたと思う。


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