『逃亡者 デッドエンド』


原題『PREY』。イギリスのITVで今年4月末より放送されたドラマ。全三話。ジョン・シム主演なので英語では観たんですが、半分くらいしか理解できなかったので、今回WOWOWにて放送があるということで観ました。吹替えのみだったのは残念。好きな俳優なので声も聞きたかった。

全三話なので、展開はかなり早い。ジョン・シムは妻と子殺しの罪を着せられて、逃げながら捜査をする刑事の役なんですが、一話の最後でもう身近な人物が裏切っていたことがわかってしまう。
二話の最後では更にあやしい人も出てくる。更にあやしい人もマーカスの身近な人物で、周辺の人二人に裏切られていたのは驚きというより哀しさが際立って、ここで流れ出すレディオヘッドの『カーマ・ポリス』がとてもよく合う。

英語版で観た時は重要機密と思われたフロッピーディスクの一枚はあやしい人一人に割られ、もう一枚はもう一人に油で揚げられて、結局なんだったのか、闇に葬られて終わりだったのかと思ったけれど違った。
最初に殺され埋められていた人物の犯罪歴で、フロッピーそのものは存在しなくなってしまったけれど、内容については登場人物が話していたので判明していた。

三話の中にぎゅうぎゅうつめこまれて展開は早いものの、重要人物と思われる人がまったく出てこなかったり、主人公が最終話の半分を過ぎても「あんたは何もわかってないな」と言われるのは不安になる。主人公の気持ちで観ているし、ドラマの残り時間を考えるとこの時点で何もわかっていないとなると、最後まで何もわからないのではないかと思ってしまう。
結局判明するのが、残り15分のあたりで、ここでそれを明かすのかとびっくりする。

マーカスを追いかける女刑事スーザンが完璧じゃないのがいい。ずんぐりむっくりで粗暴。別れた夫にはストーカー気味につきまとう。
クロワッサンを差し入れようとして、元夫に断られ、そのクロワッサンを職場に持ち込んでむしゃむしゃ食べて同僚に「こぼすなよー」と文句を言われていた。
しかも、食べながら元夫のFBを見ていた。見ているのを同僚に見つかって、そうゆうのはやめたほうがいいと注意されていた。
吹替えの人も乱暴で良かったです。合ってた。
一話目の序盤で自販機に対して喧嘩を売っていてマーカスが1ポンド貸すんですが、最後のほうに「1ポンド返せ」という粋なセリフがキーワードというか合い言葉というか暗号っぽくなっているのも良かった。
孤独感を抱えていて、だからこそ、チーフに抜擢されたこの事件にはムキになっていた。担当が変えられそうになっている場面はつらかった。

不法移民がオマール・ハッサンの身分と名前を買って…というあたりは、英語ではまったくわからなかった。

序盤のマーカスが子供に絵本を読んであげるシーンの「Kissy Kissy Kissy」の裏声ジョン・シムがすごく可愛かったんですが、ここは吹替では「チューして、チューして、チューして」になってた。裏声。
「サプラーイズ、サプラーイズ」は吹替では「どうだ、驚いたか」であの少しふざけたニュアンスがなくなってしまったのは残念。

このドラマのジョン・シムは出だしから体にペンが刺さってるし、車にはねられるし、歩道橋や電車から飛び降りるし、逃げているから仕方ないけれど、満身創痍で痛々しい。
これも逃げているからそりゃそうなんですが、人との触れ合いもあまりない。
そんな中で、序盤の鎮痛剤を貰った家の人と、不法移民のオマール・ハッサンは、名前をちゃんと呼んで、感謝の気持ちを表していた。

また親友のショーンとの仲の良いシーンがそれほどなかったのも残念。これも、早々に裏切られていたことがわかるので仕方がない。
この、友達との友情シーンの少なさは『ステート・オブ・プレイ』を思い出した。

前回英語で見た時には大きい謎は解けていないのではないかと思ったけれど、日本語で見てみると、おそらくすべて解決したのではないかと思われた。
二期があるような話を見たけれど、どうするんだろう。
オマール・ハッサンは相当な悪党だったようなので、そのあたりで新たな敵が出てくるのだろうか。
二期ではたぶん逃げない、という印象は変わらなかったし、原題のPREYは別に逃げるという意味ではないから、邦題の『逃亡者』というのをどうするんだろう。
まだ撮影にも入ってないだろうし、本当に二期があるかどうかわからないし、あったとしても日本でやるとは限らないけれど。

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