『デビルズ・ノット』


1993年にアメリカで実際に起きた殺人事件の映画化。
以下、ネタバレです。





実話となるともしかして…と思ったけれど、やはり、犯人は捕まっていないようです。そのため、映画で勝手にでっちあげるわけにもいかず、もやもやした感じが残る。

映画の進み方は淡々としていた。裁判シーンと警察の取り調べが大半である。
主役の調査員(探偵?)を演じているのがコリン・ファースなのだが、なぜコリン・ファースがこの事件に肩入れするのかがよくわからなかった。
死刑に反対する気持ちはわかる。けれど、被害者の少年三人とも、容疑者の少年三人とも関わりはないようだった。
最初、離婚協議書を持っていたので、リース・ウィザースプーン演じる容疑者の母親が元妻なのかと思った。妻と別れてはいても、被害者の父親なのかと思ったのだ。それにしては冷静だと思ったら違った。

いまいち立ち位置がわからないし、わりと冷静な人物のようだったので、彼の怒りはあまり伝わって来なかった。
裁判でも警察とのやりとりでも、これはどうしたって違うだろうという少年たちが犯人に仕立てあげられていって、観ているこちらが憤ってしまうけれど、主人公はそこまで怒ってもいないようだったし、映画内でも指摘されているけれど、弁護士でもないから弁護もできないし、結局、杜撰な捜査に対してどうすることもできないし、真犯人らしき人が捕まることもない。
観ているこちらの怒りを昇華させてくれる人がいないので、もやもやだけが溜まる。

これは実話なのだし、もやもやする事件だったというのも、みんなあらかじめわかっていることなのだろう。
嫌な事件だったので適当な人物を犯人にでっちあげて、この事件については終わらせたい。そんな警察や住民たちの集団心理は理解出来た。それに対して、親だけがもやもやした気持ちを引きずっているのもわかった。
母親はまだ犯人をさがそうとしているとのこと。
どう考えても継父があやしそうだったけれど、逮捕はされていない。
犯人にでっちあげられた少年たちは、裁判を続けないことを条件に釈放されたが18年間は刑務所の中にいた。
実際の現在の様子がこうでは、映画自体もすっきり終わるはずもない。

この冤罪事件については、研究されたドキュメンタリービデオもあるそうなので、事件自体が気になったらそちらを観た方がいいのかもしれない。『パラダイス・ロスト』というタイトルで3まで出ている。

この『パラダイス・ロスト』にも出てこない人物として、嘘発見器でクロが出たアイスクリーム売りがいるらしいんですが、それを今回演じたのがデイン・デハーン。
最初、3人の少年が冤罪で、デイン・デハーンが出るならば、キャストの知名度的にも絶対に彼が犯人なのだろうと思っていたのですが、これも実話ということで特定はされずに謎だけが残った。

出番はそう多くはなかったけれど、映画の雰囲気をガラッと変えるほどの力はあった。暗いけれど挑戦的な目。アイスクリーム売りの時のタンクトップ姿。後ろ向きにかぶったキャップ。監視カメラへの視線の投げ方と、ティッシュでカメラを隠すしぐさ。すべてが、ただならぬ空気と色気を纏っていた。
ただ、デイン・デハーンの色気は今回に限ったことではないし、彼目当てなら別の作品でもいいのではないかと思う。

コリン・ファースもデイン・デハーンも好きなので、この映画は共演を楽しみにしていたんですが、二人一緒のシーンは無かったのではないか。コリン・ファースが監視カメラの映像を見ていたくらいだったのが残念。

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