『ヒックとドラゴン2』


世界37カ国で劇場No.1ヒットを記録してるし、アニー賞では作品賞を受賞、ゴールデングローブ賞でもアニメ映画賞を受賞、アカデミー賞長編アニメーション部門でもノミネートされていた本作が日本では公開されないのである。
つくづく、特殊な土壌なのだと思うし、残念でならない。前作はちゃんと映画館で上映されていたけれど、よっぽどお客さんが入らなかったのだろうか。
そんな本作が東京アニメアワードフェスティバル2015にて一回限り上映されることになり、運良く当選したので観てきました。

結果、なんで公開されないのかがますますわからなくなった。深読みしようと思えばいくらでもできるけれど、基本的なテーマは友情とか平和とか冒険とか、誰が見てもわかるシンプルなものである。前作と同じです。
その中にほろ苦さが加わっていて、大人でもめいっぱい楽しめる。
変に複雑に凝ってないのがTHE王道という感じで恰好いい。

時々、なんで公開されないんだ!とか、こんな小さなスクリーンで!とか怒ったあとで、実際に本編を観て納得してしまうような作品もあるけれど、『ヒックとドラゴン2』の場合は余計に憤った。

今回、ブルーレイかDVDでの上映だったようで、画面がスクリーンより一回り小さかった。あと、本物だともっと色も鮮やかだったのだろう。
ジェイ・バルチェル、ジョナ・ヒル、クリストファー・ミンツ=プラッセ、クリステン・ウィグなど、セス・ローゲンとジェームズ・フランコでも出てきそうなメンツとジェラルド・バトラー、クレイグ・ファーガソンなどの声優陣も魅力的だったけれど、吹替でした。別に日本語でもおかしなところはなかったけれど、オリジナルでも観てみたい。
そして、もう最初から、びゅんびゅん空を飛び回るのがすごく気持ちがいいので、飛行と相性のいい3Dでも観てみたいと思ってしまった。

でもそれは贅沢な話で、映画館の音響で、大きなスクリーンで観られただけでも大満足である。特に、今回はたくさんの種類のドラゴンが出てくるので、それらの形や動きや色などを堪能するためにも大きなスクリーンのほうが見やすい。

最初の飛行シーンから、まるで自分もドラゴンに乗って、ヒックたちと一緒にいろんな場所へ行っているかのようにスクリーンに没頭、飲み物に手を付けるのも忘れるあっという間の102分だった。
気を抜いていられる時間が無い。

この没頭具合も、TVでも味わえるとは思うけれど、映画館のほうが上ではないかと思う。
どうか、一週間限定などの超短期間でもいいので、上映されますように。

以下、内容に触れます。ネタバレありです。










テーマは前作と同じで、わかりあえない異種との共存だと思う。前作での異種であるドラゴンとはわかりあえたので、今回はまた違った異種が出てくる。
ドラゴンを悪と考えているドラゴンハンターです。当然、ドラゴンと共存をしているバーク島の人々は敵視される。

前までならば、バーク島の人々だって、ドラゴンと戦っていたから、ハンター側だっただろう。けれど、今作は主人公のヒックも明らかに成長しているし、数年経っていそうだ。その間に、人々とドラゴンとの絆も深まったのだ。未見だけれど、TVシリーズでこの辺の事は描かれているのではないかと思う。多分、試行錯誤もあったのだろう。でも、映画が始まる時点では、島の人々はドラゴンと仲良しなのだ。平和そのものである。

途中で、“善良なドラゴンもボスが悪ならそれに従ってしまう”という言葉が出てくる。だいぶ、野性的なようでいて、これも人間にも当てはまるようだとも思った。なんとなく、戦争が始まる構図を観ているようにも思えた。

それでも、暴力ではなく、対話で解決することだってできる。友情が最強というのは理想論かもしれないけれど、やっぱり観ていて感動するし、物語的にも盛り上がる。

前回失ったものがヒックの足なら、今回は父親を失うことになってしまう。しかも、父を殺してしまうのは操られているとはいえトゥースなのだ。
ただ、ここでヒックは少しトゥースを避ける描写はあるものの、操られていたのだから仕方ないと許す。ヒックがトゥースを攻撃してしまったら、結局逆戻りすることになってしまう。悲しくても許す。ドラゴンというのはそうゆうものなのだと、特性を考慮して、友情を持続させる。母の助言のおかげでもあるけれど、ヒックの行動も勇気があると思う。

ただ、もうそんな理屈っぽいことは考えずに、ただただぼんやり観ていても、飛行シーンは視覚的に本当に気持ちがいい。自分も一緒に飛んでいるようだし、「自由なんだ!」とヒックが叫ぶ時に、私も心からドラゴンに乗ってみたいと思ってしまう。人間には羽根がないけれど、ドラゴンに乗れば空が飛べるんだ。なんて素敵な事なんだろう。そんなことを考えさせてくれるだけで、もう大満足の映画なのだ。

今回、巨大なドラゴンも出てきて、巨大なドラゴン同士が下あごの骨をぶつけ合って戦う様は、まるででかいカブトムシ同士の戦いというか、とにかくとても恰好良い。
ゴジラのときもそうだったけれど、大きいものは大きいスクリーンで観ると、でけー!とぼけっと口を開いてしまうような迫力を味わえる。

あと、たくさんのドラゴンのいるシーンでは、その広さを出すためにカメラがぐっとひく。そんなときに、細かいところまで余すところ無く観るためにもスクリーンは大きいほうがいい。

遠くにたくさんのドラゴンたちが飛んでいる映像は、カラフルなものがひらひらしていてまるで蝶のようで綺麗だった。
他にもドラゴンはいろんな動物に見える。
顔をペロペロなめるのは犬のよう。懐いているのがよくわかる。
前作のときに猫っぽいと言われていたけれど、顔を拭う様子はまさに猫でした。あと、ボスに従っているときの、黒目が縦に細くなるのはまさに猫の目でした。

今回、人間よりもいろんな種類のドラゴンが多く出てくるけれど、前作で出てきた人間のキャラクターも成長して出てきます。アスティ、かなり美人で魅力的になっていた。前作だと結構いじわるな子だった印象だけど。たぶん、それぞれの専属ドラゴンと仲良くなる様子はTVシリーズで描かれていると思うので見たい。

あと、ヒックの鎧というか、ドラゴンに乗る時のコスチュームのギミックが恰好良い。降下する時のグライダーのような羽根! 今回では特に出てこないけれど、前作では器用なところを見せていた。両面使えるライトセーバー状の武器にも驚かされた。

本当に、次々と驚くシーンが出てきて、目を見開いてしまったり、ぽかんとしてしまったり、笑ったり泣いたり、こちらの表情も忙しくなってしまう。
こんな、わくわくする気持ちが最初から最後まで、ずっと持続する映画はなかなかない。
もうDVDのリリースも決まっている作品なので、映画館での上映は難しいのかもしれないけれど、どうにか実現してほしいです。


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