『22ジャンプストリート』


『21ジャンプストリート』の続編。『LEGO(R)ムービー』のフィル・ロード&クリス・ミラー監督。ジョナ・ヒル、チャニング・テイタム主演。
前作も劇場公開はなくDVDスルーだったけれど、今回も同様です。
以下、ネタバレです。









最初の方はわりと普通の刑事アクションっぽいつくりになっていてびっくりした。でも、すぐにのらりくらりとしたノリに戻る。
最初の作戦は結局失敗してしまうのですが、「失敗しないためには? 前と同じように、学校に潜入して捜査しよう!」ということになる。失敗しないというのは捜査であり、この映画のことでもある。シュミットとジェンコの二人が学生のふりをして学校に潜入し、麻薬についての捜査をするという、大まかな内容はまるで同じ。これについてはメタ発言もあるし、意図されたものです。

他にも中盤で「予算が無い」という話が出てきて、それは物語の中で、捜査をする予算がないというのと、「最初のカーチェイスでお金を使い過ぎた」と言っていたので映画自体の予算がないというのがかかっていて、ここでもメタ発言が出ている。
その後で、悪者がこれみよがしに学校の建築物にぶちあたって壊しながら車を運転するシーンがあるのもおもしろい。本当に悪者だ。

舞台が高校から大学に変わったくらいで、起こる事件と捜査する事柄はほぼ同じ。続編もすでに企画されているらしいが、次作も同じだとどうなるかわからないけれど、今回はそれでもとてもおもしろかった。これは、事件そのものがこの映画の大事なところではないからだと思う。二人の刑事が主人公でも、刑事ものというよりは学生もののようになっているのだ。これは、前作も同じでしたが。

特に、今作では二人は警官の服をほとんど着ない。チャニング・テイタムにいたっては、一回も着ていなかったかもしれない。
捜査もしているけれど、二人ともキャンパスライフを満喫していた。

前作同様、女生徒とねんごろになるのはシュミット(ジョナ・ヒル)の方です。
ただ、今作ではジェンコ(チャニング・テイタム)に気の合う友達ができてしまう。

二人は正反対のタイプである。シュミットはどちらかといえばおとなしく人付き合いが苦手で、容姿が冴えなくて運動はできないが頭はいい。ジェンコは運動ができて活発で、友達も多くて、中心になれる人物だけど、馬鹿。
この二人は、普通に学校に通っていたら絶対に友達にならないタイプなんですよね。グループが違う。
それで、ジェンコは本来、属すであろうグループの仲間と親しくする。特にアメフト部員のズークとは、まるで双子のように気が合う。好みも考えている事も一緒で、言葉を発しなくても通じ合える。
シュミットとは何もかもが違うし、話しても通じないこともある。ジェンコは馬鹿だし、安易に一緒にいて気持ちいい関係のほうへ流れてしまう。本当に自分の事を想っていてくれる人に背を向けて。

「少し距離をおかないか」と言われた時のシュミットのさみしそうな顔ったらなかった。捨てられた子犬のようだった。シュミットの方は、いくら違ったタイプでもジェンコのことを鬱陶しがることはなかったんですよね。

結局、ジェンコは、ズークは自分に似ていて気が合うけれど、馬鹿で機転がきかない部分も同じだということに気づいてしまう。いや、気づいてないかもしれない。ただ単に、何かこいつつまらないと思ったのかもしれない。

似ている人との関係も楽でいいけれど、真逆の人でも友情はきずけるのだ。
人付き合いの基本というか、道徳の教科書に載っていそうというか、教育テレビ(今はEテレですね…)で放送していそうというか。下ネタを省けば、学校の授業にも使える。

今回も潜入捜査中に捜査対象のドラッグを体内に入れてしまうシーンがある。集中力を高めて仕事をしたあとで、ジェンコはアッパーに、シュミットはダウナーになる。こんなところでも違いが出てしまう。馬鹿は得である。真ん中で二分割されていて、シュミットは地獄のような世界で頭を抱えているけれど、対するジェンコはアメフトのボールの着ぐるみなどと踊り狂う。そのうち、ふわーっと浮かび上がるんですが、シュミットはそれをおそらくあまり良いことではないと考えたのか、救うために引きずり降ろす。けれど、ジェンコとしては気持ちが良かったのに、(文字通り)足を引っ張られたと思うんですね。

最後の方のシーンで、ヘリから落ちそうになってたジェンコの腕をシュミットが掴んであげるシーンがある。対になっているのがうまい。両方とも、シュミットがその腕でジェンコを救っている。

シュミットはとにかく健気なのだ。後半で、撃たれそうになっているジェンコを身を挺して庇おうとするシーンもある。
ただ、こうゆうシーンが後半に出てきたら、普通ならシュミットがジェンコの代わりに撃たれて、「シュミットー!よくも…!」みたいな感じになりますけれど、この映画では身を挺する側の運動神経が悪すぎた。ジェンコの前に身を乗り出すタイミングが早すぎて、結局ジェンコに当たっていた。こんなの見たことないです。
「気持ちが大事だろ」と言っていたけれど、まあ確かに。

いつからか、観ている側は…というより、私はシュミットに感情移入してしまったために、健気なシュミットの気持ちにやっと馬鹿が気づいたときに、本当に良かったと思ったし、最後に「愛してる」のハグが出た時には拍手をしそうになった。

それと同時に、ジェンコを恋い焦がれるシュミットに自分を重ねるあまり、私もジェンコ、というか、チャニング・テイタムのことが好きになってしまった。
潜入捜査をしているのにアドリブができない。空気も読めない。「見せ場だから、かっこいい事言え!」と言われて、「かっこいい事!」と叫ぶ。
基本的に馬鹿だけれども、正義感の強い馬鹿なので曲がった事はしない。できない。
そして、スーパーヒーロー並みの身体能力の高さ。
後半の浜辺でのDJパーティみたいなシーンで、女性を肩車しながら、その女性の足を使って敵をやっつける。そのあと、スムーズにあくまでもさりげなく、でも熱烈にお礼のキスをするんですが、決めるところは決めるみたいなのがもう本当にずるすぎる。

チャニング・テイタムは『ジュピター』の公開も控えているので楽しみ。こういった内容ではないし、馬鹿でもないとは思うけど。
あと、序盤で「ホワイトハウスを守りたい」というセリフがありますが、それって『ホワイトハウス・ダウン』の話ですよね…。観てないので観たい。

エンドロールでは続編『23ジャンプストリート』の(おそらく偽の)予告から、その次その次と『(数字)ジャンプストリート』のいくつもの予告。基本的に潜入捜査ものらしい。
あの二人のいろんな姿が見る事ができて楽しいのと、きっと今回のような危機は何度もあるのだろうけれど二人がずっと一緒に活動しているのがわかって嬉しい。一回だけ、ジョナ・ヒルの代わりにセス・ローゲンですけども。
いくつまで出るのかわからないけれど、末永くお幸せに。

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