『シェフ 三ツ星フードトラックはじめました』


アイアンマンの監督、ジョン・ファヴローが主演、監督。ジョン・ファブローということで、スカーレット・ヨハンソン、ロバート・ダウニーJr.も出演。ダスティン・ホフマンも出てます。
以下、ネタバレです。







“三ツ星フードトラックはじめました”と言うわりには、フードトラックが全く始まらない。わりと序盤で屋台の話は出てくるし、息子も夏休みがもうすぐだとかニューオリンズに行きたいなどと言っていたから、すぐにでも屋台興業が始まるのかと思った。
でも、考えてみたら、原題は『CHEF』だけであり、“三ツ星フードトラックはじめました”は勝手に付けられた邦題なのだ。別に、フードトラックが話の中心ではない。

“口出しするオーナーと対立し、店を辞めてしまう”と某所に書かれていたけれど、そんな簡単な理由ではない。そこに至るまでの色々もおもしろかったし、時間をはかっていたわけじゃないからわからないけれど、店を辞めるまでに映画の1/3は終わっていたのではないかと思う。

辞める理由になったのは、結果的にオーナーと対立しただけで、もともとの原因を作ったのは自分である。ああ、でも最初にカリスマブロガーが店に来る時に、新メニューを出したいと言ったのにオーナーが通常メニューで行けと言ったから、やはりオーナーのせいなのか。

とにかく、いやに現代的な理由なのですが、シェフの働く店にブロガーが訪れ、酷評する。それをTwitterで拡散される。シェフはTwitterをやっていなかったけれど、息子に教わりつつ、アカウントを取得する。
ここからは、Twitter初心者が陥りがちなことというか、Twitterを使う上での悪い例が立て続けに出てくる。その都度、息子が正しいやり方を教えてあげる様は、Twitter初心者向け、使い方講座のようになっていた。
初心者(シェフ)が何か典型的な間違った事をやらかして一時停止、ブッブー!という警告音とともに、画面に大きな×印が出てきてマスター(息子)が間違いを訂正するといったイメージ。こんなわかりやすい教則ビデオみたいなことにはもちろんなってません。

でも、シェフの行動がいちいち酷くて、自分の名前でエゴサーチする→ブロガーのアカウントを見つける→ブロガーに@をとばして汚い言葉で煽る→炎上といった具合。息子に、みんなに見られたくないことは@じゃなくてダイレクトメッセージにしないと!と怒られる。

その炎上がきっかけで店でシェフとブロガーが対決することになり、それを見ていたTwitter市民が感染するため店に来る。結局料理以外の事で対決する事になってしまうけれど、もちろん、インターネットの人たちだから、iPhoneなどでその様子を撮影する。そして、動画サイトにあげて、更に炎上。
結果、店にいられなくなる。なんというか、今どきっぽい理由。ならでは、ですね。

やりとりも面白かったし、セリフも粋だったけれど、ちょっとだらだらとはしていた。店を辞めたときに、やっとフードトラックか!と思った。
サブタイトルに“フードトラックはじめました”が付いてなければ、いままでの会話の中で何度か屋台の話が出ても、それほど気にしてなかったと思う。サブタイトルを意識して観てしまったために、どっちにしろ屋台をはじめるんでしょと思いながら観てしまった。付けないでほしかった。

後半というか、店を飛び出し、元妻に誘われてマイアミに行ってからは、急に話が動き出す。いままでほとんど会話劇のようになっていたのが嘘のよう。
マイアミのリトル・ハバナの異国情緒溢れる風景も良かった。妻の父のライブも楽しかったです。ラテン音楽の演奏されているバー、行ってみたい。
そして、屋台を入手し、マイアミからニューオリンズを経由してロサンゼルスまでの旅が始まる。急にロードムービーになる。
ニューオリンズのベニエも、その先の町で出てきた熟成肉みたいなのもおいしそうだった。

Twitterマスターである息子が、屋台のアカウントをとって、宣伝をしていて、シェフとかつての相棒がまったくそれを知らないまま人気者になっているというのは、『FRANK-フランク-』を思い出した。
動画はinstagramではなくvineなのはアメリカ人な感じがした。前半でのマスター具合が後半でも生かされているのは、ちょっとした伏線回収。というよりは、全体的にインターネットが関わってくるストーリーだということか。

ラストは、ちょっと丸くおさまりすぎというか。すべての問題が片付いてしまった。
ただ、最後もラテン音楽で踊っていたので、暗い要素が一つでも残ってしまうとこのハッピーさは出ないだろうと思った。それに、最近殺伐とした映画ばかり観ていたので、こうゆう終わり方もまあいいかと思ってしまった。
だいたい、シェフの元妻も現ガールフレンドも両方とも、美人でセクシーで完璧な女性だというところからして…。

料理の映画なので、すべての料理がおいしそうに撮られているけれど、これはもうタイトルが『CHEF』のため当たり前。
ただ、新しく食材を仕入れたり、料理が出来上がった時に、必ず自分でも試食するんですよね。その、食べ物を口にふくんだときの、感心するような、恍惚としているような表情がたまらない。食べてみたくなった。特に、キューバサンドは作ってみたくなった。

あと、料理を作るシーンで必ずラテン音楽が流れるのもいい。シェフなので、手際がいいのでラテン音楽が合う。まるで楽器を演奏しているようにも見えた。

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