『デイブレイカー』


2010年公開。『プリデスティネーション』で気になったスピリエッグ兄弟監督作。
脚本も兄弟によるもの。『プリデスティネーション』は原作があったけれど、こちらはないのかもしれない。

レンタルでもホラーの棚に置いてあったし、ホラーといえばホラーだと思う。ヴァンパイア映画です。でも、夜道をヴァンパイアが徘徊し、人間が怯えて暮らす…というこのジャンルの普通の映画とは明らかに違っていた。
だから、ホラーだからと言って尻込みしてしまうのはもったいない。ただ、首は飛ぶし、血も大量に出てくる。襲い方はどちらかというとヴァンパイアよりもゾンビっぽい感じだった。内臓を食べるシーンもあります。
苦手度にもよりますが、ゴア表現はそんなに大したことはないので、普段ホラーは観なくても、『プリデスティネーション』をおもしろいと思ったらおもしろいと思えるはず。

舞台は今よりも少し未来。一匹のコウモリからウィルスが蔓延して、人類の9割がヴァンパイアになっていた。
まずこの設定からして他とは違っていて面白い。永遠の命などを求めて、自らヴァンパイアになるのである。ほとんど全員がヴァンパイアという、ヴァンパイアが普通の世界だから、尚更拒む人間も少ない。
ただ、ヴァンパイアの食料はご存知の通り、人間の血液なんですよね。ヴァンパイアが増え過ぎたせいで、食料不足に陥っている。なんとなく、現代社会にも通じるところがある。
駅のスタンドでは血液を混ぜたコーヒーを売っていて、通勤客が列を作ってるのですが、次第に混ぜる血液が減って来て暴動が起こったり。誕生日に、純度の高いボトル入りの血液がプレゼントされていたが、まるで、ワインのようだった。
だから、ヴァンパイア中心の世界とはいえ、ファンタジーというよりは、今の日常とそれほど変わらないため、すっと世界観が理解出来る。

主人公のエドワードは、その食料不足解消のために、代用血液の開発にいそしんでいる。このあたりも、途中で一緒に研究していた同僚が先に開発に成功して、上司が大もうけしようと目論むとか、現代の社会派ドラマにもありそうな感じになってた。

ヴァンパイアが飢えたり、ヴァンパイアの血を吸ったりすると、サブサイダーというモンスターのような存在になってしまう事実が途中でわかり、会社の会議などで話し合われているのですが、もうヴァンパイアがモンスターだという認識は本人たちにはないようだった。その辺の主観の変換も面白い。大多数が正義とは言えないけれど、きっと圧倒的な安心感はあるのだろう。

また、物語上、ヴァンパイアを悪としてしまうと悪が多すぎるので、更なる悪としてサブサイダーを出したのだと思う。『ウォーム・ボディーズ』でもゾンビの他に、ゾンビを襲うガイコツみたいなのが出てきていたけれど、それと同じような感じだろう。

血を吸うというのの他に、太陽の光に弱いというのもヴァンパイアの基本設定を踏襲している。電車は地下鉄であり、車も紫外線から保護するための改造がされている。
ナビではないけれど、「日中運転モード開始」とか「紫外線注意」などと喋る車でその辺がしっかり未来っぽい。その他にも、血液の研究施設や主人公の家など、日の光を遮っているせいもあるのかもしれないけれど、どことなく未来っぽい雰囲気を漂わせていた。

色合いも白っぽかったり、青や緑っぽかったりと無機質で冷たい感じのするものだった。また、ヴァンパイアのイメージというか、潔癖なまでの無菌状態のような清潔さも感じられた。不潔なヴァンパイアって中々見かけない。

対照的に、人間が出てくると日光の下だったり、室内であっても、照明が暖かみのあるもので統一されていた。

主人公エドワードを演じているのがイーサン・ホーク。エドワードは途中でヴァンパイアから人間に変わるのですが、イメージががらっと変わっていた。ヴァンパイアでは目の色が黄色だったり赤かったりする。髪型もオールバックで、服装ともにきっちりした印象だったけれど、人間になった途端、髪型も服装もラフなものに変わっていた。ヘアワックスも使わないし、ベストの前のボタンも開けたままなので、動いた時に乱れる。
ヴァンパイアのときは余裕というか、クール&スマートな印象だったけれど、人間になったらそのまんまですが人間味に溢れ、体温すら伝わってくるようだった。

『プリデスティネーション』でも、各時代によって印象がガラリと変わるような撮り方をしていて、今回も同じ印象を受けた。おそらく、独自の世界観を作り出すのがうまい方々なのではないかと思う。かっこいいです。

エドワードがヴァンパイア時代に、日中モードで走っていた車が後方から襲撃され、銃口から日の光が入ってくるシーンがある。まっすぐ走っていれば光から外れた場所に座っていればいいけれど、襲撃されているため、運転も荒くなる。カーブをすると、光の入り方が変わり、触れてしまうと火傷をしてしまうため、車内で必死で日光から逃げるというのが面白かった。普通に生活をしていたら、別に日の光が致命傷になることはないし、考えつかないことですよね。日光を遮った車が襲撃されたら? 日の光が差し込む車がカーブをしたら? そんなことまで考えているのが凝っていると思った。

キーマン役でウィレム・デフォーが出てくるのですが、いい場面をすべてかっさらっていく、ご都合主義的というか、ちょっとずるい役だった。でも合ってます。
エドワードの上司役にサム・ニール。さすがというか、どっしりと構えた悪役で、こちらも合っていた。

エドワードの弟、フランキー役にオーストラリアの俳優、マイケル・ドーマン。最初に兄の誕生日に特別な血液を持ってきたところから最後まで、ずっと、兄の事を考えて行動していた健気な役だった。目がくりっとしているルックスも魅力的。彼の出ている映画がもっと観てみたい。

やっぱりこの監督さんたち、配役もいいんですよね。この前の作品『アンデッド』も観てみたい。


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