ショートショートフィルムフェスティバル2015 インターナショナルC



いろいろな国の短編を集めたプログラム。
全部で26カ国/地域、45作品とのことだけれど、その内の6作品+特別上映1作品を観ました。

以下、全作品について、ネタバレを含みます。







『Help Point/音声案内』

すごくイギリスっぽい皮肉満載の作品。
ロンドンに行くと言ってたのでたぶんヒースロー空港ではないかと思うけれど、巨大な駐車場で自分の車の位置がわからなくなってしまう。そこで、車の位置を忘れた男性と同じく忘れた女性が出会うので、単純に恋の予感を感じる。
ヘルプポイントというお助けボタンのようなものを押すと、一応応対はしてくれるけれど、なぜか嫌味を言われ、感じが悪い。
車が発見されるまで、二人は少しおしゃべりでもしましょうかということになって、いい雰囲気にもなるが、それを許すまじと案内の向こうの人も話に加わってくる。
水を飲んでる間に車を見つけたよとか、男性のほうが嘘をついていたのをばらしたりとか、本来のヘルプポイントならありえない感じなのは、ほのかにSFというか、AIっぽいという感じで、細かいことをつっこまなくてもいいと思う。コメディだし。
とにかく、女性とうまくいくのが気にくわなくて徹底的に邪魔をする様子がおもしろかったし、感情を持った機械に恋愛を邪魔される話は好みです。もちろん今回は、厳密には機械ではなく、音声のみであっても向こうにいるのは生身の人間かもしれないけれど。

最初にタイトルが出るときに、*を点々にしたようなマークみたいなものが出て何かと思ったら、声の聞こえてくる穴だった。おしゃれ。


『Caravan/キャラバン』

オーストラリアの映画。
キャンピングカーの中、電話が鳴っているが誰も出ない。
奥の部屋には人が寝ているのか死んでいるのか。足元しか映らない。
子どもが「起きてよ」と言っているので父親なのだろうか。子ども二人が飛び跳ねたりと自由に遊んでいる。キャンピングカーの外に繋がれている馬に話しかけたりしている。

風景の切り取りというか、特にストーリーがあるわけではない。
あとで説明を読んでみると、“子どもたちは乗り捨てられたキャンピングカーの内部を散策する”と書いてあったので、ただただ無邪気に遊んでたようだ。死んでいるのか寝ているのかわからなかった男性との関係も結局わからない。

少し解釈が難しかったが、Keiran Watson-Bonnice監督がゲストに来ていて、話を聞くことができた。
ストーリーや台本があるわけではなく、子どもたちは自由に感情のままに動いていたそうだ。3歳と6歳だったらしいが、その行動の差などを見てほしいとのこと。
白い馬が出てくるけれど、その意味も自由に考えてほしいし、子どもが劇中で唄う歌も元は子守唄だけれど歌詞が間違っているらしい。何種類か唄っていた中でたまたまこれを選んだだけなので、深い意味はあるようでない。
撮影した敷地自体も監督のものだし、馬も近所の方から借りたもの、3歳の子が自分の息子さんで6歳が甥っ子さんとのことなので、ほとんどホームビデオ感覚だったとの笑い話も。

監督にとってのショートフィルムは?という質問には、短編の方が予算なども少なくていいし、いろんなことに挑戦しやすいとのことだった。
今までCMなどを手がけてきた監督だけど、今後のことを聞かれると、ドキュメンタリーを撮ってみたいとのことでした。また、自分が観て楽しめるような作品をと言っていました。



『REVULSHK!/拳を上げて』

もこもこした帽子と総花柄のワンピースというファッションから、ロシアの映画なのかと思っていたけれどフランスでした。そういえば、途中でサッカーをするシーンが出てくる。

新聞を見て、みんながいっせいに片方の拳を上げる。軽快な音楽に合わせて、不自由ながらもそのまま生活をする。怒りなのか、共闘しようというような気持ちなのかと思っていたが、フランス人歌手アメル・ベント(1985年生まれとのこと。若い)“穏やかな気持ちで行動しているが、拳は常に上に挙げたままである”という言葉が解説に引用されていたので、どうやら怒りなのかもしれない。
最後には新聞を見て、もう片方の拳も上げる。両手が挙がってしまうから、新聞は下に落ち、二人が足で新聞を運ぶ。
コミカルだっただけにわからなかったけれど、強いメッセージ性が含まれていそうだ。2分弱と短い。


『DISSONANCE/不協和音』

アニメと実写が融合されたような、変わった映像だった。
最初は、限りなく実写に近い形のCGだった。でも、顔が大きくなっていたり、手足が細くなっていたりと、実写とは違う。円柱型のような変わった形の回転するピアノを見事に弾く。ステージの下では目の大きい謎の動物(たぶんアイアイ)がピアノを回している。観客はいない。
世界もビルが敷き詰められた地球よりずっと小さい球で、崩れ落ちていて世界の終わりが近そうな雰囲気が漂っている。全体的に薄暗くもある。

それはどうやら主人公の妄想で、現実世界はすべて実写になっていた。
町の片隅で手回しオルゴールみたいなもので演奏をしている大道芸人みたいなもので、さっきの謎の生き物のぬいぐるみが回しているような仕掛けも付いている。収入もあまりない様子で、妻からも捨てられ、娘とも離れていて、ほぼホームレスのような生活を送っているようだった。
ぬいぐるみであり、妄想の中では彼のパートナーでもある謎の生き物がなくなってしまったときの取り乱しようは、実写(現実世界)で見ると中々厳しいものがあった。ぬいぐるみを失って、タキシードを着た白髪長髪の男性が取り乱しているのはどうみてもおかしい。CGの、妄想の世界では、パートナーがいなくなったのだから、さしておかしくない。
風貌も妄想の中と現実との間でずいぶんとギャップがあった。妄想の中では悩める音楽家みたいだったけれど、現実にはホームレスにしか見えない。妄想と現実の混ざり具合も気味が悪く、面白かった。

最後は主人公自身が謎の生き物そのものになってしまったのか、生き物が役目を引き継いだのか。生き物が子どもたちに丸い世界について語っていた。


『21-87/21-87』

今回の特別上映作品。カナダのケベック州出身のアーサー・リプセットの手がけた1963年の作品。
『スター・ウォーズ』に影響を与えたと言われている映像で、確かにフォースという言葉も出てきた。『スター・ウォーズ4』でレイア姫が監禁された部屋の番号が“2187”なのは、このタイトルからとったとのこと。
しかし、さすが実験映画というか、わかりにくい。古い映画のコラージュにコメンタリーが付いている。
この前のケベック特集で観た『アーサー・リプセットの日記』でもサーカスの映像が出ていたけれど、今回もサーカスが出てきていて、何か彼の映像のキーとなるものなのかもしれない。

解説には“機械に支配された男の皮肉なコメンタリー”と書いてあったけれど、読んでもいまいちわからなかった。


『Lost in Wandlitz/ヴァンドリッツで日が暮れて』

ロシアの作品だけど、ヴァンドリッツというのはドイツの地名なので、舞台はドイツなのかな。

ベルリンからの列車だかベルリン行きの列車だかが遅れているホームに男性が立っている。
ほぼセリフがないためわかりにくいけれど、男性は旅行者で、列車が遅れている間に駅のホームでお弁当を食べたはいいけれど、ゴミ箱が四つ設置されており、その分別がわからない。辞書を熟読していたので、たぶんそういうことだと思う。

途中で、起床後シャワーを浴び、ランニングをする若者が意味ありげに出てきて、この人とホームの男性はきっと関係があるのだろうと思った。
年齢的には親子なのかと思ったけれど、人種が違いそう。
ランニングの若者は、途中でホットドッグを二つ買ったので一つあげるのかなとも予想した。

ホームで旅行者の男性はホームレスと会話をする。その同じホームレスとランニングの男性がすれ違ったので、位置を考えると、どうやら若者も駅に向かうらしい。男性は駅からどこかへ向かおうとしているということは、二人はすれ違うようだし、特につながりはないのか?

旅行者がどこに捨てようか迷っていたチキンの骨を、ランニングの男性が連れていた犬が持ち去っていく。どうやら、ランニングの男性も駅に着いたらしい。

そう思っていたら、ランニングの男性の仕事はゴミ収集業者だった。ゴミ収集車にゴミ箱の中身をどんどん捨てて行く。ゴミ箱は四つに分かれていたのに、結局、一つに収集されていく…。

なるほど、二人はそのつながりでそのオチか。最後に納得するパターンのショートフィルム。


『Work Mate/同僚』

20分弱の作品なんですが、これは長編にもできそうなくらい良かった。

主人公のブルースは喘息持ちなのか、何か病気を患っていて、自分のデスクを神経質なまでに清潔に保つ。
職場で新しい席になり、自分の近くの人は誰なんだろう?仲良くなれるかな?と少しわくわくしたような心持ちで待っていたら、同僚は全盲のハーミッシュだった。
ブルースの神経質さは性格にも現れていて、最初はあからさまに障害者を差別というか気を遣うのは嫌だと避けようとする。

軽い雑談のつもりで自転車の話をしたら、ハーミッシュに自転車のレースに出るつもりなので、休日に一緒に乗らないかと誘われる。ブルースは病的なまでに内向的だけれど、ハーミッシュはまったく違ってポジティブシンキングのできる人物のように見える。
流されるようにして休日に会うことになるけれど、実はブルースは自転車に乗れなかった。
練習をしつつ、くじけそうになるけれど、そこで、ハーミッシュの言葉を聞く。
「会社に行くのに車にひかれずに道を渡れたらラッキー、紅茶を入れてこぼさないで自分の席まで戻れたらラッキー」
ポジティブに見えても、そんなことの繰り返しだと言う。
ブルースも体が弱いようだったけれど、ハーミッシュに比べたらそんなのとるに足らないことだ。悩みがちっぽけに思える。

二人は自転車レースで貰ったメダルを自慢げに首から下げて、コーヒー店の女の子に得意げな態度をとる。結局、それは参加賞だったけれど、二人は楽しそうだった。
ブルースは二人で一緒に写っているレースでの写真をデスクに飾る。

ブルースの変わりようも良かったし、単純に勇気をもらった。
ブルース役はBrendan Donoghueというオーストラリアの俳優さんなんですが、ポール・ダノとエディ・マーサンを足して2で割ったような、気弱なんだけれど、根は悪い奴じゃないんだろうなという感じで良かった。

オーストラリアのThe Real Stories Projectというところが関わっているみたいだったので、実話なのかもしれない。この映画が実際に職場での障害者就労を促すのに使われていたりもするらしい。

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