『リピーテッド』
Posted by asuka at 1:51 PM
ニコール・キッドマン主演。コリン・ファースとマーク・ストロングが出ています。
原作は英国推理作家協会(The Crime Writers' Association)によって選ばれるCWA賞にて、2011年に最優秀新人賞を受賞した『わたしが眠りにつく前に』。原題が『Before I Go To Sleep』なので、このタイトルでも良かったのではないかと思う。
リドリー・スコットがさも監督かのような書かれ方をしているけれど、製作総指揮。監督・脚本はローワン・ジョフィ。有名どころだと『28週後…』の脚本などに参加している。
以下、ネタバレです。
9/11公開予定の『キングスマン』の予習というか、『裏切りのサーカス』のビルとジムというか、好きな俳優さん二人が揃っていたので観た。
二人は恰好良かったけれど、肝心のストーリーに不満が残った。原作は賞を受賞したとのことですが、映像化しているせいか、登場人物が少ないせいか、犯人は最初から察しがついてしまう。
朝、目覚めると昨日の記憶が消えているという記憶障害というものが実際にあるのかどうかわからない。事故のショック性のものらしかったので、精神的なものならばなんでもありなのかもしれない。
記憶を失っている主人公クリスティーンと一緒に彼女の記憶と、過去に何が起こったのかをさぐっていくわけですが、目が覚めたときに近くに居た人物が最初から怪しすぎる。記憶の無い人には何を言われても、それが真実と思わざるをえないだろう。なんでもできてしまう。
その夫だという人物と一緒に写っている写真が壁に飾ってある。近くには、“君の夫、ビル”というふせんまでご丁寧に貼ってある。あとになって実は写真が切り貼りだったことがわかるんですが、この写真しか手がかりがないならば、主人公は念入りに写真を見るのではないだろうか。それが、真ん中でハサミを入れてあるという、良く見たら気づく細工がしてあるのはお粗末すぎる。写真を慎重に観察しない主人公と、そんなことで信用させられると思っていたビル(を名乗る人物)に不自然さを感じた。
また、顔に殴られた痕や手にも傷が残っていたのを主人公本人は訝しんでいたようだったけれど、夫からの説明は無かった。そこは一番不気味なところだし、普通だったら傷について聞いたりもすると思う。どんな気持ちでその傷跡について放置したのかわからない。原作ではそのあたりの内面についても書かれているのだろうか。
イギリスではこの映画は2014年公開、その前の2013年に『レイルウェイ』が公開されており、そこでもニコール・キッドマンとコリン・ファースは夫婦役なのですが、狙ったキャスティングなのかどうかわからない。
コリン・ファース演じるビル(マイク)は、すぐにかっとする人物のため、クリスティーンのことを何度か殴るシーンがある。個人的な好みですけれど、あまりにも殴られすぎるのも気になった。原作の通りなのだとは思うけれど、あんまり女性が何回も殴られるのは見たくない。
あと、これも個人的な好みなのですが、マーク・ストロング演じる医師のナッシュが可哀想。親身になってクリスティーンに寄り添ってあげていた。キスをしようとしていたから、もちろん医者としてというだけではなく、私情もはさんでいたのだとは思う。でも、その場面ですら、混乱したクリスティーンに犯人と勘違いされてしまう。この時点で泣きそうである。
しかも、ラストはクリスティーンは元夫とあっさりとよりを戻してしまう。四年間、一度も会っていないということは、夫はクリスティーンのことを四年間放っておいたのである。その期間、親身になってクリスティーンのケアをし、彼女のことを一番に考えていたのはナッシュなのだ。
元夫にはクリスティーンの子供という切り札もあるし、ストーリー上のことを考えてもそれがきっかけで記憶を取り戻すから仕方ないのかもしれない。でも、ナッシュの立場は。
そもそもの話なのですが、コリン・ファースとマーク・ストロングというキャストが配されていたら、両方に迫られてその二人の間でニコール・キッドマンが揺れ動けばいいと思うのだ。そういう話ではないと言われてしまえばそれまでだけれども、私が見たかったのはそれだった。
だから、最後に事件があったホテルでマイクに襲われているときに、ナッシュが助けにきたら良かったと思う。病院ですれ違い様に「夫のベンだ。妻には手を出すな」みたいなことを言われたときに、何か彼女に危険が迫っているのは察知したはずだ。ここまでご都合主義だったのだし、理由なんて適当につけたらいい。
そうしたら、クリスティーンだって、ナッシュが自分のことを一番に考えていてくれたことに気づくだろう。記憶障害により忘れてしまったのかもしれないが、クリスティーンはナッシュのことを犯人だと勘違いした件について、謝ることもしていない。
何より私は、コリン・ファースとマーク・ストロングが殴り合う姿が見たかったのです。
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