『海街diary』



是枝裕和監督のカンヌ国際映画祭、コンペティション部門出品作品。
原作のコミックスは読んでいません。

以下、ネタバレです。







是枝監督は家族モノと相性がいいと思うので期待していたんですが、あまりしっくり来なかった。
いままでも、何気ない会話が続くような映画やドラマは撮っていたと思うけれど、今回はそれが冗長に感じられてしまった。映画によっては、何気ない会話やこれ意味あるの?と思われるような無駄な会話にリアリティが生まれる場合もあるけれど、今作ではそれが退屈に感じられたのはなぜなのか。
はっきりした理由はわからないけれど、四姉妹が全員美人なせいかもしれない。ずっと妙に小綺麗で、家の中でのシーンが多いのに生活感がない。服装が無防備な薄着になったりはするけれど、そうしたらそうしたで、綾瀬はるかと長澤まさみのおっぱいが目立ちすぎる。
あと、季節が変わっても、全員髪型などが変わらないので時が過ぎたのを感じない。一年間だしそれほど変わらないかもしれないけれど…。

登場人物自体にリアリティがないと、その人らが何気なく会話をしてもちぐはぐに感じてしまう。父親が不倫の末出て行ったとか、その不倫相手の子供を引き取るとか、男に騙されるとか、ヘヴィーな状況はあるにしても、基本的にそれはそれほど問題視されていない。これはもしかしたら、原作のコミックスの良さなのかもしれない。
ただ、古民家に住む四姉妹がだらだらと話しながら問題から目を背け生活するというのは、一時期流行った、中身の無いスローライフムービーのようにも見えてしまう。
フードスタイリストが飯島奈美さんだったせいではないです。『ゴーイング マイ ホーム』も飯島奈美さんだったけど、そんな印象は受けなかった。
また、古民家とはいっても実家だし、それにまつわるエピソードも出てくるから、なんとなくのおしゃれアイテムとしてそこに暮らしているわけではないのもわかる。問題だって、目を背け続けているわけではなく、ちゃんと向き合うシーンも出てくる。
だから、スローライフムービーのように、見終わって結局なんだったの?みたいな感じにはならない。ならないまでも、観ていてなんとなく退屈な感じを受けたことも事実だ。

四姉妹は見た目も綺麗で、時々喧嘩はしても致命的な仲違いにはならず、基本的には仲良しで、観ていて素敵ねーとは思ったけれど、私が是枝監督に求めているのは憧れではないのだ。
うわーキツい…(でもわかる)みたいな感覚が欲しかった。もう少し泥臭さが欲しい。

本作は原作があるものなので原作の通りなのかもしれないけれど、四姉妹それぞれの生活が描かれていて、群像劇のようになっている。けれど、四人について贔屓無く描こうとしているのか、それぞれのエピソードについての描写が雑というか駆け足な感じがした。
一人一人に割り当てられている時間が少ないからなのか、詰め込み過ぎていて、セリフがやけに多く思えた。

身長を測った家の柱が数秒映るカットがあるけれど、このような、静物を無音でぽつんと映して、ここから何かを感じ取れというようなキメのカットは是枝監督独特のものだと思うので、もっとあると良かった。

また、エピソードというか主人公が変わるときに、流れがぶちぶち切れてしまっていたのも気になった。

原作とは違ってしまうと思うけれど、いっそのことすずのエピソードだけで良かったのにと思う。すず目線、すず主人公でやってほしかった。一人に焦点を当てるようにすれば、是枝監督特有の丁寧な描写がもっと見られたと思う。

ここ最近の是枝監督の作品、『奇跡』『ゴーイング マイ ホーム』『そして父になる』を観ていると、子供を撮るのがうまい人なのではないかと思うのだ。
今作も、すずの友達役として出てきた前田旺志郎くんが良かった。彼は『奇跡』も良かったけれど、今回も出番はそれほどなくても、四姉妹以上に良くて、もっと見たかった。

桜のトンネルを二人乗りの自転車で走るシーン、お祭りの帰り道ですずを慰めるように「俺、男ばっかりの三人兄弟の末っ子で、本当は女の子が良かったみたいなんだけど男で、俺だけ写真が少ないんだ」と話すシーン、どちらも良かった。
すずのことが好きなのかどうかは自分でもわからないけれど、悲しんでるところは見たくないと思っている様子がよく伝わってきた。一生懸命さが健気で眩しい。

演技というよりは監督との相性なのかもしれないけれど、美女たちよりも明らかに前田旺志郎くんのほうが輝いて見えた。

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