ショートショート フィルムフェスティバル 2015 イギリス特集



去年も書きましたが、ショートフィルムはDVDなどにもなりにくいし、なかなか観る機会がないので、こうしてまとめてスクリーンで見せてくれるのは嬉しい。今年も入場無料。今年で17回目とのこと。
イギリス特集なら好きな俳優の一人や二人出るだろうということで、行ってきました。

以下、全作品について、ネタバレなど含みます。






『Hollywood Portfolio/ハリウッド・ポートフォリオ』
ヴァニティ・フェアの特集のために作られたショートフィルムとのこと。VF.comと出ていたけれど、もう今は観られない様子。3パートに分かれていたものをまとめて上映。
イギリスの俳優たちがハリウッドに乗り込んでいく様子が第二次世界大戦風に描かれている。

イギリス有名俳優が、特に俳優同士の絡みはなくパッパッと映る。
存在感たっぷりのマイケル・ケイン。ジェームズ・マカヴォイはタキシードでキメていた。もみあげも凛々しい。
ベネディクト・カンバーバッチはアメリカに「渡る方法? 海を渡って」というナレーションの時に背中から池に倒れ込み、「無事に上陸したら、次は枕営業です」というナレーションの時にはシャツを脱ごうとするサービスっぷり。セリフは無かった。
一番セリフがあったのはジェームズ・コーデン。ハリウッドで役を獲得できても結局イギリス人の役かよ!というオチも担当。

登場人物は豪華だけれど、個人差はあっても少しずつしか映らないので、何度か観ないと確認ができない。最後に名前が一覧で出たけれど、それも短い時間しか表示されないため、わからなかった。
あと、当たり前だけれど、ヴァニティ・フェアの宣伝用に作られたものなので、実際の雑誌ありきなのだと思う。その特集を雑誌で見たかった。


『On Loop/ループする部屋』
多分、眠れない時ってこんな感じなのだろうなと思う。ベッドに寝ている目線だけれど、画面が六分割されていてそれぞれで違うことがおこっていて、同じことを何度も考えてしまう。
でも、エンドロールでは無事に寝息が聞こえてくるのでほっとした。


『The Secret World of Foley/フォーリーアーティストの不思議な世界』
フォーリーアーティストとは、映画にポストプロダクションの段階で音を付ける人のことらしい。要は音響効果の人たちの話。
釣りをしている人たちの映像を真剣な目で見ながら、屋内で石を踏みしめたり、バケツの水を上から流したり、水を手で掻き回したり。奇想天外な道具を使って、それっぽい音を付けていく音効さん二人。チームワークもかなりのものだ。
映像の中の漁師たちも真剣、まったく別の場所にいる音効さんたちも真剣。みんなが真剣に一つの作品を作り上げようとしている。なんとなくその様子だけで涙が出そうになってしまった。

音効さんたちの動きや道具は一風変わっていて、どこか笑いすら誘うようなものだから、てっきり創作なのかと思っていたけれど、なんとドキュメンタリーだった。あの二人は本業の方々だった。恐れ入りました。


『me & you/カレとカノジョ』
天井から一つの部屋を映す定点カメラでの作品。男の人の部屋に彼女が遊びに来る。その前のいい加減な掃除からして、ああ、あるあるなんだけれど、一緒に映画観ててなんとなくその気になって、付き合い始め、その内彼女の服装もリラックスしたものに変わったり、ハロウィーンなのかマリオとルイージのコスプレで帰ってきたり、クリスマスの飾り付けをしたり…。リアリティがあるというか、普通のカップルの様子を覗き見しているようで少しドキドキしながらも、頷かずにはいられない内容だった。
そして、次第に扱いがぞんざいになり、会話が減り、大声で喧嘩をし、ベッドでも背を向けて寝て、彼女は出て行く。
おそらく、本当に短い、期間にしたら一年間くらいなのだろう。初めて部屋に呼んでから、彼女が出て行くまでの長いようであっという間の期間がとらえられている。


『Emotional Fusebox/エモーショナル・ヒューズボックス』
今回、1作目のヴァニティ・フェアのものはCMっぽかったのですが、2、3、4作目はどちらかというと、映像の作りがおもしろいアイディア賞のような感じだった。それもショートフィルムの特性だと思うけれど、もう一つ、この作品のように、最後にどんでん返しがあるものもある。

周りにも家があまりなく、携帯すら繋がり難いような場所に住んでいる家族がいる。祖母と母、そして娘は離れの倉庫のようなところで動画を作ることだけに夢中になっていて、ひきこもりのように見えた。自分の親指二つに顔を書いて、二人が会話しているような映像だった。
そこへ車が壊れた青年がやってくる。母は無理矢理娘を外へ出すべく、青年の弟が助けにくるまで会話をしていろと言いつける。
娘は嫌々外へ出て、彼とあまり噛み合ない会話をする。そして、現れる弟。同じ顔である。
娘は逃げるように家に入り、母に「彼も双子だった!」と怒る。
彼も?と思っていたら、どうやら、娘も双子で、そのもう一人が亡くなったという過去があったようだ。彼女が制作していた動画の意味も、倉庫にこもっていた理由もわかった。
祖母が娘に、「ろくでもないことして、って(母に)言ってやったわ」と冗談めかして言い、終わるという優しくも、悲しい作品だった。

主人公アナを演じたのがジョディ・ウィテカー。見たことがあるし、何か不安な気持ちをかき立てられると思ったら、『ブロードチャーチ』の被害者の母親役の人だった。あと、『アタック・ザ・ブロック』の最初に出てくる女性。
車を壊した青年役の人が恰好良くて調べたらEdward Hoggという人だったんですが、この人、去年のショートショートフィルムフェスティバルで観た『The Phone Call』にも出ていて、その時も私はかっこいいと書いていた。
ちなみに、『The Phone Call』はこの前のアカデミー賞で短編実写部門を受賞しているため、今年もアカデミー賞プログラムにて上映されるようです。

あと、娘を気遣うように女友達が遊びに来ているのだけれど、その時に気の置けないガールズトークをしていて、「ジャーヴィス・コッカーなんてどう?」「彼は小汚いとは違うでしょ?」みたいな会話があって、ジャーヴィス・コッカーはイギリスの女子の間では普通に出てくる人物なのだと知りました。


『The Showreel/ショーリール』
シリアからの移民のナスリーンはオフィスの清掃業をしているけれど、本当は映画女優になりたい。お金がないので夢をかなえることはできないけれど、空想の中では何にでもなることができる。
序盤の、掃除用具を武器にしてのアクションからただ者じゃなさを漂わせていた。そのうち、服装やヘアスタイル、化粧などを変えて、様々な人になりきって、現実世界に紛れ込んで演技をしていく。
でも、日常は清掃員で…というところで、これも最後にどんでん返し系。
急にセットが取り払われ、ナスリーンがスクリーンのこちら側の私たちに話しかけて来る。
「私はプエルトリコの女優です。あなたが私をナスリーンと思うことで、私の夢は叶ったのです」
なるほど。二重三重にもなっていておもしろかった。


『Orbit Ever After/軌道上の恋』
2014年のBAFTAのショートフィルム部門ノミネート作。
主演は今話題のトーマス・サングスター。父親役でマッケンジー・クルックが出てきてびっくりした。

SFです。何の事情があってのことかわからないけれど、家が宇宙船で、地球の軌道を回っている。ナイジェル(トーマス・サングスター)は外で、猟のようにして宇宙ゴミみたいなのを拾って、それを宇宙船の中で母親が加工するように料理をして、ドブみたいなどう見てもおいしくなさそうなものを作り、食べている。
宇宙船の重力装置は壊れかけ、全員の服装も汚い。この先の生活に希望が感じられない。
宇宙空間が舞台で小汚いSFってなかなか見たことがないのでおもしろい。

その中で、ナイジェルは猟の途中で一瞬だけ見かける女の子に恋をしている。ただ、ナイジェルの家とは逆回りに地球を周回しているため、両親からは反対を受ける。

ある日、彼女がナイジェルに何かを投げる。それを受け取ろうとしたナイジェルが、命綱はあるけれど、宇宙船に宙ぶらりんになる様子は『ゼロ・グラビティ』を思い出してひんやりした。似た感じの状況にはなるけれど、2013年10月と同じ時期に公開されているようなので、別に影響を受けたりはしていないようです。

ナイジェルは彼女からの手紙の意味を勘違いして宇宙船からジャンプする。彼女も同じく、彼女の宇宙船からジャンプして、二人は地球の重力へ引き寄せられるように落下していく。
それでも、ナイジェルが言う、「十秒でもいいから彼女と一緒にいたい」という願いはかなったのだから、きっとハッピーエンドなのだ。

地球上で、二人が火に包まれて落ちて来る様子を「あら、流れ星」「きれい」などと言って見ている様子も、少し『アニンガ』を思い出した。


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