『くもりときどきミートボール』



2009年公開。『21ジャンプストリート』、『LEGO(R)ムービー』のフィル・ロード&クリストファー・ミラー監督の第一作目。

一応、1978年出版の絵本を元にしているみたいだけれど、細かい設定などは違いそう。

食べ物がない? じゃあ、水を食べ物に変えちゃおう! 得意の発明でね!
ちょっと失敗しちゃったけど、雨の代わりに食べ物が降って来るよ! わーい!

といった短絡的な発想とスピード感で、話が進んで行く。
ガリ勉と呼ばれていて、少し変わり者の主人公フリントが、少し失敗をしたものの発明を成し遂げ、市長や目をつけられていた警官にも喜ばれ、ハッピーエンドかと思われた。もちろんここまで開始30分も経ってないので、こんなところで終わるわけは無いのはわかっている。

食べ物が降ってくるのは単純に見せ場的というか、クライマックスっぽいが、これを発端として話が始まる。

空から降ってくる食べ物を食べてみんなハッピー。単純にこれだけの話ではないところが良かった。
一番最初のハンバーガーが降って来るシーンから、キャッチしたハンバーガーにおいしそうにかぶりつくのはいいにしても、その画面の端で、キャッチできなかったハンバーガーが地面にぐちゃっと叩き付けられているのが気になった。しかも、ハンバーガーなので、バンズと中身が分かれてめちゃくちゃになってくる。

あのハンバーガーはどうなるんだろう…と思っていたら、そのうち、掃除しに来る車が村を通り、地面の食べ物を吸い込んで、遠くへぽいと投げていた。え、それ解決してるの…? どちらにしても嫌な予感が消えない。

そして、空から食べ物が降って来るようになったせいで、自分の父親のお店が潰れかける。父親はフリントに店を手伝ってもらいたくて看板に、『ティム“と息子”の店』と付け足したのに、騒動で“と息子”だけ落ちてしまう。親子関係も悪くなっていることも示唆されて、ますます嫌な予感がする。

それでも、警官の息子の誕生日にアイスクリームの雪を降らせたシーンは楽しかった。子供が家から出てきて、ぼふっと倒れ込み、手足をばたばたさせてスノーエンジェルを作っていた。

ヒロインがお天気お姉さんというのもよくできている。空から食べ物が降って来るのが気象情報として伝えられる。二人のゼリーの中でのランテブーも良かった。

基本的に、食べ物のシーンはどれもいいし、お腹も空いてくるのに、明るさの一方で、嫌な予感も消えない。

そして、小柄だった市長が、どんどん太ってきて、嫌な予感の正体はこれかと思った。底なしの欲望である。市長はそれがあからさまにおぞましい姿形になって現れていたけれど、他の人たちだって一緒だ。食べたいものを、食べたいだけ食べる。食べられないものはいらない。こんなことを続けていたら破綻する。
たくさんの食べ物が降ってきて楽しいね!だけではなく、ちゃんと別の方面からも描かれているのが素晴らしいと思う。

そして、ここからはスペクタクル。食べ物が降ってくるのは気象だから、それが原因の災害も起こる。
FLDSMDFR(Flint Lockwood Diatomic Super Mutating Dynamic Food Replicator 略して。略しても読み難いというシーンで笑った)が暴走し、フリントは責任を感じ、止めに雲の中へ飛び込んで行く。
もちろん、ピンチに陥るけれど、そこからの怒濤の伏線の回収がすごかった。
前半に出てきたものが畳み掛けるように登場し、あー猫の動画、あーくまさんグミ、あーあのスプレー、あーネズミドリ(繁殖してる!)みたいに、一々なるほど、なるほどと思ってしまった。

最後は、本心を話す機械をつけた父がフリントに言葉をかける。無骨で、漁師のことわざみたいなものでしか気持ちを伝えられなかった(結果、伝わらなかった)父の、本当の気持ちが聞けて、涙も出た。

この映画も本当によくできていると思った。明るいだけではなく、ちゃんと苦さも用意されている。もう彼らが監督した作品、全部が好きです。


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