『トゥモローランド』



『Mr.インクレディブル』、『トイ・ストーリー3』『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のブラッド・バード監督。
予告編を見て想像していたのとはだいぶ内容が違ったんですが、これはこれでおもしろかったです。
以下、ネタバレです。








予告編を見た感じだと、少年が家の納屋から探してきたとか父の形見とか、何らかのバッジをつけてディズニーランドへ行って、イッツ・ア・スモール・ワールドに乗ったら、バッジが反応してどこかちがう場所へ連れて行かれ、冒険を通じて成長して帰ってくるという、所謂“行きて帰りし物語”形式なのかと思った。

じゃあ、主役っぽいジョージ・クルーニーはなんなの?とか、“イッツ・ア・スモール・ワールド”はトゥモローランドじゃなくてファンタジーランドだけど?とかいろいろ疑問は残しつつ見始めたら、ちゃんと解決しました。

最初のディズニーのロゴは今回も遊ばれてました。お城ですらない。

それで、最初っからジョージ・クルーニーが出てくる。しかも、想像していた話と違って、夢も希望もなく、すべてをあきらめてしまっている様子だった。

舞台が1964年に移る。フランク・ウォーカーという予告編に出てきた少年が、ニューヨーク万博で発明コンテストに参加する。この子がこのままディズニーランドに行くのかと思ったら、謎の少女アテナにバッジを渡されて、「“イッツ・ア・スモール・ワールド”に乗って」と言われる。バッジは少年が何かしら昔から大切にしているものだと思っていたのに、違う世界に移動する直前に渡されるとは思わなかった。
また、ニューヨーク万博にイッツ・ア・スモール・ワールドがあるとは思わなかった。元々は、ニューヨーク万博に出品していたものをディズニーランドに移築したらしい。

フランクは発明と夢見る心を買われ、異世界であるトゥモローランドで研究をしている。前途は明るそうだし、ここから、このトゥモローランドを舞台に冒険が始まるのかと思っていた。

そこで、またジョージ・クルーニーに戻る。ジョージ・クルーニーはぶつぶつ言っていて、それと正反対のポジティブな女の子が語りを変わる。

ケイシー・ニュートンというこの子がかなりいいキャラクターだった。何があってもへこたれない。最初の方の、授業で質問をしようと一人だけ挙手し先生に無視され、次の授業でも挙手しまた無視され、やっと当てられたと思ったら終業のチャイムが鳴るという流れが、アニメーションっぽくておもしろかった。
また、立ち入り禁止と書いてある札を見もせずに柵を飛び越えたり、ロケットで飛んだ後、大変な目に遭って気絶をしていたのに、起きた瞬間からにやーっとして好奇心が勝ってしまっていたりと、端々に性格が出ていたのも良かった。

ケイシー側の話はおもしろいけれど、トゥモローランドに行ったフランク少年はどうなったのか、向こうの世界には話は戻らないのかと思っていたら、ケイシーとフランクが出会った。ジョージ・クルーニーが大人になったフランクだった。少年フランクメインではなく、大人フランクメインだった。また、トゥモローランドが舞台の話というより、地球でのシーンのほうが多かった。

ケイシーとフランクの年齢も性格も違うでこぼこコンビの相性の合わなさもおもしろいんですが、一緒に行動するアテナもまたいい。最初にフランクにバッジを渡したときには、1964年の万博ということで、レトロフューチャーというか、昔の人が想像する未来みたいな服装がとても可愛かった。ワンピースのスカートがふんわり広がっていて、ポニーテール。対して、ケイシーをスカウトしにくるときには現代的でボーイッシュな服装だった。
昔と姿が変わらないんですが、それが実はオーディオアニマトロニクスだから、ということなんですが、オーディオアニマトロニクスがディズニー固有のものだと知らなかった。ただ単に人間っぽいロボットの総称かと思っていた。この映画に関しては、後から知って驚くことが多い。

エッフェル塔からロケットが飛ぶのも、そういう都市伝説を生かしたものなのかと思ったら、そんなものはなかった。この映画だけの創作らしい。ただ、エジソンなどの蝋人形はあるらしい。

エッフェル塔の警備員が人間かオーディオアニマトロニクスなのか調べるやりとりも面白かった。フランクが音叉みたいな金属の棒を持って、ケイシーに「この棒であの警備員を叩け。人間なら気絶する」と言う。「オーディオアニマトロニクスなら?」と聞くと、フランクはアテナのおでこをカーンと叩く。「なにすんのよ!」と怒るアテナ。「こうゆう風に怒る」とフランク。ケイシーが音叉を受け取って、警備員のほうへ歩き出す。影に隠れてるフランクとアテナが「あいつ、根性あるな」みたいなことを話してる。
このような軽快なぽんぽんとした会話のやりとりをするシーンがいくつかあって、どれも印象に残っている。

アクションのみどころだと、大人フランクの家で襲撃を受けているときに、フランクの不思議発明品の数々を使って切り抜けるのがとても楽しかった。それと同時に、説明はされないけれど、一人で襲撃に備えてシェルターを作っていたのだろうとか、家族の写真が飾ってあったけれどもう子どもの頃から会っていないのだろうとか、彼の孤独も感じることができた。

終盤はメタ目線というか、ディザスタームービーばかりが作られるせいで人々は破滅へ知らず知らずのうちに向かって行っているという話だった。
だから、夢を持っている人たちを集めて、新しい世界を作って行こうよ、そうしたら、きっと明るい未来が待っている。
そんな結論で、夢を持って生活している人にバッジを配るんですが、ちょっと理想主義過ぎないかな…とは思った。

でも、調べてみたら、トゥモローランドって、ディズニーランドのトゥモローランドなんですね。最初は、ディズニーランド映画だと思って臨んだものの、“イッツ・ア・スモール・ワールド”は万博だし、ほぼ地球だし、もう関係ないものだと思っていた。
トゥモローランドが映ったときに、なんの説明も無く“スペース・マウンテン”があったのが気になったけれど、まさにそこだった。
トゥモローランドからの追っ手が持っていた武器も、“バズ・ライトイヤーのアストロブラスター”で使う武器だった。
ロボットではなく、わざわざオーディオアニマトロニクスと言っていたのも頷ける。

そして、ウォルト・ディズニーこそが、理想主義者だったらしい。彼の遺志を元に作られているのだ。
そう考えると、入り口が世界平和をテーマとした“イッツ・ア・スモール・ワールド”であったこともなるほどと思う。

よくよく考えてみて、あとから気づくことの多い映画でしたが、観ているときには『ドクター・フー』のエピソードにありそうな話だと思った。
アテナがドクターで、フランクとケイシーがコンパニオン的な存在。
地球の未来をいいものに変えるべく、異世界(ドクター・フーの場合は他の星)を旅する。
異世界から追放される。
人間の形をしたのが実はオーディオアニマトロニクス(ドクター・フーの場合はエイリアン)で、襲ってくる。
自己犠牲によって、地球の未来を救う。
などなどと同時に、ドクターも究極の理想主義者だと思う。

あと、姿の変わらないアテナ(ドクター)と人間の時がずれてしまうのもありそうだと思ったし、何度か書いているけれど、個人的に好きなエピソード。
今回の場合は、少年フランクはとっくにおっさんになってしまっているのに、アテナは少女のまま。フランクはアテナがおそらく初恋の相手で、彼女からオーディオアニマトロニクスだと聞かされていなかったため、裏切られたと思っている。だから、大人フランクはアテナに冷たくあたって、その様子は見ていてコミカルでもあったけれど、アテナ最期のシーンは切なかった。

見た目がおっさんと少女だし、キスシーンや「好きだ」なんてセリフもない。でも、中身はずっと変わっていないことがわかるし、容赦なく時は経ってしまっているのが切なかった。

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