『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』



2012年公開。アメリカでは2011年公開。
ジョージ・クルーニーが大統領候補役でライアン・ゴズリングがその選挙スタッフ…というのはなんとなく知っていた。二人を押し出したポスターなどを見ていたけれど、二人の映画というよりは、ライアン・ゴズリングが前面に出ているのに対して、ジョージ・クルーニーはあまり出ていない印象だった。

映画というよりも、政治スキャンダルを取り扱ったドラマのような、少し小粒な印象だった。政治が題材であっても、難しくならずに、裏切った裏切られたの人間関係のごたごたが描かれている。そのわりに、上記の二人の他に、フィリップ・シーモア・ホフマンやポール・ジアマッティ、ジェフリー・ライト、マリタ・トメイなど出演者がやたらと豪華。
なんとなくちぐはぐな感じがしたけれど、この映画の監督がジョージ・クルーニー自身だと知って納得した。

知らずに観ていたけれど、知ったあとだと、(こんなことを思われたくないだろうけれど)俳優が監督したものとしてはすごくよくできているし、そちらでの才能も感じた。
終盤の、暗闇の中で知事(ジョージ・クルーニー)とスティーブン(ライアン・ゴズリング)が対峙するシーンの緊迫感など好きでした。

また、この作品はもともと、実際の大統領選挙に立候補した方の選挙スタッフだった方が書いた戯曲が元になっているらしいけれど、その戯曲だと、不倫をするのはポール(フィリップ・シーモア・ホフマン)だったらしい。知事は出てこないとか。
それはそれで、裏方だけのごたごたというのもおもしろそうだけれど、映画にするためにはもう少し広げたほうがいいだろうし、不倫をするのが知事というのもより衝撃的になっていいと思う。
この辺の変更はジョージ・クルーニーが行ったみたいだし、アカデミー脚色賞へのノミネートもうなずける。

元々の戯曲は『Farragut North』というタイトルで、この芝居の映画化というのをわかりやすくするために同じタイトルにしたほうがいいのではないかという意見もあったらしいけれど、ジョージ・クルーニーは『The Ides of March』に変更したらしい。
Farragut Northは、南北戦争で北軍を指揮したファラガット提督…というよりは、単純にワシントンの地名でいいのかな。
The Ides of Marchは3/15の意味。「3/15にご用心」というのは、占い師からジュリアス・シーザーへの忠告であり、その後、「ブルータス、お前もか」になる。つまり、身近な者の裏切りというわけですね。

このタイトルもうまく付けたなと思うんですが、邦題ではジョージ・クルーニーのその苦労を無視されている。サブタイトルが付いているし、原題が『スーパー・チューズデー』なのかと思ったら違った。何より、映画を観てみると、選挙そのものよりも、その裏のどろどろしたやりとりが描かれているので、邦題は安直だと思う。
けれど、なんとなく選挙の映画という印象を植え付けることには成功しているし、苦肉の策でもあるのかもしれない。



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