『モンスターズ/地球外生命体』



2011年公開。アメリカでは2010年公開。2014年公開の『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズ監督。

ギャレス・エドワーズ監督は元々ゴジラシリーズの大ファンだったらしく、この映画もタイトル通り、モンスター=謎の巨大生物が出てきます。けれど、謎の巨大生物と人間の戦いが主題ではないところが面白かった。

カメラマンのアンドリューと社長令嬢のサマンサ(サム)の、危険地帯から安全地帯への移動が描かれている。
こう書くとつまらなそうだし、ギャースギャース言うパニック映画を期待して観た人には物足りないと思う。
でも、もしも本当に謎の巨大生物が現れたら…と考えたときに、おそらくこの映画のような状況になるのではないかというリアリティを感じた。
常に襲ってくるわけではない。案外、遭遇することも少ない。遭遇しても、こちらが何もしない限りは攻撃してこない。
なんとなく、自然災害に近いというか、『インポッシブル』を思い出させる雰囲気があった。得体がしれない、急に遭遇する巨大な力。相手に悪意は無い。

川を渡るシーンで、どうやら何かいるらしいとぞわぞわした雰囲気になっても、空がかき曇ったりはしない。謎の生物がいても、夕日はきれいなままで、それが逆に怖かった。自然現象はそのままで、謎の生物だけがそこにいる。本当にありえそうと感じた。

アンドリューとサムは年頃の男女ですが、別に恋人同士ではない。だから、別部屋にして、アンドリューがつれこんだ地元の女性にパスポートを奪われて…みたいな事件も起こる。ここでパスポートがあれば、苦労して移動することもなく、あっという間に安全地帯に帰れてしまい、映画も終わってしまう。
二人の関係を恋人にしないことで起こった事件は、話をスムーズに進めない役割も担ったけれど、それ以外にも距離感が良かった。

アンドリューには妻がいたが別れている。子供にも会えない。サムはフィアンセがいるが、いまいちうまくいっていない様子だった。
お互いの悩みを話し、最初はまったくお互いに興味のなかった二人が、一緒に旅をするうちに少しずつ心の距離を縮めていく様子が良かった。ロードムービーっぽくもあるのだ。

後半、二体の謎生物を見ている二人の表情が良かった。ちっぽけな人間など相手をせずに、夜の暗闇の中、強烈な光を発しながら、触手のようなものを絡ませる二体。もしかしたら交尾だったのかもしれない。それを見上げている二人の表情に浮かぶのは、恐怖というよりも驚愕で、今までには見たことの無い、何かとても綺麗なものを目撃して、言葉が出ないといった様子だった。

それは多分、今までの意識や考え方をぐるっと変えてしまうようなもので、二人に帰りたくない、離れたくないと素直な気持ちを吐かせたのだろう。

このシーンの少し前に、二人は軍に救護要請を送る。助けにきた兵士の一人が、ワルキューレの騎行を口ずさんでるんですね。
あれ、これって、映画の一番最初のシーンで出てきた兵士も口ずさんでて、「これは俺のテーマ曲だから」って言ってたような…と思い出し、何か嫌な予感がしていたら、兵士たちが二人の元に到着し、謎生物たちを攻撃し、空爆まで仕掛ける。

そこで映画は終わる。
まさか、最初のシーンがこれだとは思わなかった。

映画は夜の謎生物と兵士の戦闘シーンから始まって、次のカットでは朝になる。倒壊した建物が映っていて、おそらくさっきの空爆で壊されたのだろうと思った。そこにアンドリューがサマンサを探しに現れる。サマンサは病院にいて、腕を少し怪我していたものの無事で、二人で安全地帯へ戻っていく…という流れだった。
時系列では、最初の空爆シーンが最後だった。アンドリューがサムを探しにくるのが一番過去だった。

もう一度最初のシーンを見てみたら、ぐったりしたサムを抱えて叫ぶアンドリューの姿が映っていた。おそらく容赦ない空爆によるものだろう。後半に誰もいない村が映るけれど、あれも、謎生物に破壊されたわけではなく、空爆で破壊されたのだと思う。

これはつらい。けれど、話の作り方がとてつもなくうまい。特に、ワルキューレの騎行を口ずさむ兵士が出てきたときの、もやっとした違和感と不安感がたまらない。
二人の気持ちが通じたし、謎生物も実は悪者ではないのではないかという希望のようなものが沸いてきて、ああ、ハッピーエンドだなと思ったところでの突き落とし。
どんでん返しの一種ではあると思うんですが、おもしろい手法だと思った。




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