『ローガン・ラッキー』



監督はスティーブン・ソダーバーグ。
チャニング・テイタムとアダム・ドライバーが冴えない兄弟役で、強盗を計画するクライムムービー。

以下、ネタバレです。








中盤以降は強盗シーンであり、強盗シーンになるとそれほど気にならないが、前半のテンポが悪く感じた。
説明不足な面も多く、ローガン兄弟がそもそもなぜ強盗をすることになったのかがいまいちわかりづらかった。仕事を解雇されたからだろうか? ジミー(チャニング・テイタム)が離婚した妻が親権を持つ娘が引っ越してしまうからだろうか。
しかも、弟のクライド(アダム・ドライバー)を誘っての強盗は二回目らしく、一回目の時には失敗して弟は刑務所に入ったらしい。

ただ、金庫破りのプロで現在は刑務所に入っているジョー・バング(ダニエル・クレイグ)とも友達のようだった。友達というか知り合いかな。
予告編を見る限りだと冴えない兄弟が急に刑務所の面会に行ったのかなと思われたけれど、まったくの初対面ではない様子だった。
小さな田舎町が舞台なので、全員知り合いみたいなところがあるのだろうか。

ただ、舞台となる場所についても、どこどこ州のどこと場所が日本語テロップで出る。英語での字幕は出ていなかったので、日本語でのみ丁寧に付けられたのだと思う。やはり説明不足な面がありそう。
でも、もしかしたらアメリカ人には理解のできることなのかもしれない。

いわゆるニューヨークなどの都市が舞台ではない。
そこまでちゃんとは理解できなかったのだけれど、想像以上に背景の厳しさがあるのかもしれない。
仕事がない、離婚率も高い、犯罪も多発している地域で、だから兄弟も手軽に強盗を計画してしまったのではないだろうか。
ましてや、ジミーはNFL花形選手だったのに足を怪我して挫折している。そのことも周囲には知れ渡っているだろう。弟のクライドはイラクに戦争に行って片腕を失った。
だから、ローガン家は呪われているなどとクライドは言っていたけれど、周囲にも噂をされていたのかもしれない。


ジミーの娘が、発表会でリアーナの『アンブレラ』を歌うべきところを、急遽、パパの好きな曲ですと言って、ジョン・デンバーの『カントリーロード(TAKE ME HOME,COUNTRY ROADS)』を歌うシーンがある。
まさにウエストバージニア州の、地元の歌で、会場は合唱に包まれる。歌の内容は故郷の美しさと、生活のつらさが歌われている。
この土地柄のことは日本人にはなかなか理解しづらい。
脚本のレベッカ・ブラントが実際にウエストバージニア州ローガンの炭鉱の家庭で育ったらしく、その辺のテイストが組み込まれているのではないかとも思う。
(ただ、このレベッカ・ブラントという方の素性は不明らしくソダーバーグの妻ではみたいな話も出ているらしい。謎)

あと、日本人というか、私は知らなかったのですが、NASCAR(National Association for Stock Car Auto Racing、全米自動車競争協会)の方々が多数カメオ出演されていたらしい。強盗の場面がレーシング場なので、全面協力してもらったのだろうか。

強盗シーンは地上でレーシングが行なわれていて、その地下でわたわたやっているという作りが面白かった。また、強盗を行うにあたっての前段作戦として、ジョー・バングの脱走作戦もある。それにあたって弟のクライドがわざと捕まって刑務所に入ったりと凝っていた。

ただ、ジョーの弟さんたちはあまりにも雑で強盗向きではないし、ローガン兄弟もあまり向いているようには見えなかった。ローガン妹は運転とサポートで活躍していたと思うが、地下にいなかったのでいまいち登場シーンが少なかった。
ジョーだけが玄人で、一人大活躍をしていた。グミベアは娯楽で買ったのかと思っていたら、それで爆発物を作るというアイディアがおもしろかった。
爆発物を仕掛けた後、ジョーがひょいひょい逃げて、顔を見合わせたローガン兄弟が慌てて逃げ出して建物が爆発というシーンが予告編で使われていたけれど、これは騙しで、本編では違うシーンで爆発する建物だった。

ここで、不発だった手作り爆発物がクライドの手に戻ってきちゃうのが面白かったので騙し予告にしてくれてよかった。一瞬何が起こったのかわからない感じになりつつも、完全に固まってしまうクライドが可愛い。

ただ、タイトルで言われているからそうなんだろうとは思うけれどまさにラッキーの連続でトントン拍子で進んでいき、わりとスムーズにことが済んでいた。

成功をして、でも結局お金は返して…ということでなぜかなと思ったら、自分たちの必要な分や、計画に巻き込んでしまった人の分はちゃんと別の場所に取ってあった。
ジョーの弟たちを信用してなかったのかもしれないけれど、強盗は実は二重作戦で、本当の計画はローガン家の三人で行われていたというネタバラシも面白かった。

ただ、この後にFBIがしつこく追いかけてくるのはちょっと蛇足気味かなと思ってしまった。
しかも、最後にはクライドの店に現れていて、不気味でした。
クライドは簡単に騙されてしまいそうだから、FBIの女性に心を開いた末に犯罪を告白する未来が見える…。

内容やテンポなどを考えると完全に好みという感じではなかったけれど、キャラクターや演じた俳優さんは好きでした。
特に、クライドを演じたアダム・ドライバーが本当に可愛い。
結局演技でしたけれど、腕を吸い込まれた時の取り乱しかたは笑ってしまった。
ジミーが最初に強盗計画を話す時も「朝食を作ってくれたし、ベーコンの焼き加減が僕好みだったから話を聞く」と言っていて、可愛すぎてびっくりした。図体の大きい大人の男の言うことではない。

兄のジミーを演じたチャニング・テイタムも体が大きいから、二人ともぬぼーっとしていて朴訥兄弟具合が愛らしかった。
結局ネタバラシの時には二人が素早く動いていたけれど、その前にはとても強盗向きではないと思った。素人臭すぎる。動きも鈍そう。

だから、ダニエル・クレイグ演じるジョー・バングの凄腕具合が目立った。007で見せたスマートさがまったく無くて、刺青が入っているし、ランニングも似合う。田舎のヤンキーくささも出てたし、演技がうまいのだなと思った。

あと、ちょい役だけれど、いい役だったのが上でレースをしているドライバー役でセバスチャン・スタン。
立て看板が作られるくらいだから人気なのだろうし、やり手なのだけれど、「自分の中のOSを…」とか言うことがいちいち胡散くさくて笑ってしまう。嫌な感じだけど憎めない役が彼に合っていた。

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