『IT/イット “それ”が見えたら全てが終わり』



1990年の映画のリメイク。原作はスティーブン・キングの小説(1986年)。
一言で言ってしまえばピエロが怖いホラー映画だけれど、本作はその実、青春映画である(旧作は未見)。
特に、今年公開された映画『パワーレンジャー』のような、それぞれに悩みを抱えたスクールカーストでも下のほうになりそうなはぐれ者たち(この映画では“Losers(負け犬たち)”と言われている)が好きな人にはたまらないと思う。また、彼らがまだまだ少年なのもたまらない。

ただ、ピエロが怖いことには変わりないので、ペニーワイズ役のビルスカルスガルドの素顔(イケメン)を思い出して乗り切りました。

以下、ネタバレです。











『パワーレンジャー』はヒーロー物でありながら、彼らがなかなか変身しないことで賛否両論だったようだが、私はもういっそのこと、返信しないで彼らの日常だけ見せて欲しいというくらいに思っていたので賛成側でした。今作もホラー要素はもっと少なくしてくれても良かった。

いじめっ子から逃げたり、いじめられているところから助けたりして、はぐれ者たちが次第に集まっていく展開も良かった。全員揃ったところで、川に飛び込むシーンの甘酸っぱさには泣いてしまった。『パワーレンジャー』でも水に飛び込んでましたね。水に飛び込む青春映画は良作という法則ができつつある。『スイス・アーミー・マン』然り。

ただ、こうゆうきゅんとしてしまうような日常シーンの合間合間にホラーというか、非日常のピエロが混ぜ込まれているので余計に怖い。

ベバリーの家の洗面台の排水溝から声がして覗き込んでいたら髪の毛が中から出てきて引っ張られるシーンは本当に怖かった。その後、大量の血が排水溝から噴出して、バスルームが血まみれになる。個人的にはここが一番怖かったかもしれない。

でも、その風呂も友達みんなで掃除をする。そして、そこで流れるのがThe Cureの『Six Different Ways』という…。これが青春映画じゃなくてなんなんですか。

そのあと、みんなで不良グループに石を投げるシーンがあるんですが、その時の曲がANTHRAXという。XTCも使われてました。80年代が舞台ということでこのような選曲になっているのかもしれないけれど、良かったです。

怖かったシーンは他に、止まらなくなったスライドのシーンでしょうか。これは予告にも出ていて、風で女の人の髪の毛が舞い上がって顔が隠されているのですが、次第にピエロの顔が見えてくる。予告の時点で怖いと思っていたのですが、この後、スクリーンから巨大なピエロが出てきてさらに怖い。
あと、個人的に動きが速くなるのが怖いんですが、結構何度か出てきて怖かった。

屋敷探索のシーンでも、ところどころに出てくるのが怖い。あんなに怖くなければ子供たちの肝試し感覚でほっこりシーンとして見られるのに。
ただ、びっくり表現(急に大きい音とともにバン!と出てくるやつ)はあっても、基本的に出てくるものと思って構えているから、椅子に座りながらビクッとすることはなかった。もっとタチが悪い驚かせ方をしてくる映画はたくさんある。

結局、大筋は主人公のビルが行方不明になってしまった弟のジョージーを探すことが目的なので、他の友人たちは巻き込まれた感はある(ちょっと『インセプション』で結局コブが入国するためにみんなが付き合わされただけでは…みたいなのを思い出した)ので、ラストの「僕を置いて逃げて!」という場面ではどうするのかと思った。でも、リッチーが熱い言葉を吐いて、みんなで協力して恐怖に打ち勝つ。私はリッチーが一番好きでした。ドラマ『ストレンジャー・シングス』にも出演しているとのこと。

ただ、ビルがジョージーを探すためにピエロを倒すという単純な話ではなく、その裏に、子供達による恐怖の克服という面もある。
一人一人の日常はそれはつらいのだ。悩みもたくさんある。怖い絵や病気、両親を火事で亡くしたこと、親からの虐待、いなくなってしまった弟…それぞれが抱えている暗い出来事や心の闇。
それは友達と一緒なら忘れられるし、克服もできる。

それでも最後にそれぞれが散り散りになってしまう切なさは少年期の終わりを意味しているのかもしれない。
最高のジュブナイルムービーなのに、これがR15というのはもったいない。怖くない版を出して欲しい。でも克服する恐怖の象徴としてのピエロだから、ホラー要素を除くわけにはいかない。

黒人のマイクやラビの息子スタンリーについてはもう少し掘り下げて欲しかった。
軽口をたたいて乗り切るリッチーについても掘り下げももう少し欲しかった。のらくらかわしながらも、最後でぐっとくるセリフを吐くというキャラクターの時点でいいんですが。

そして、最後に第1章という文字が出る。
少し前に二部作だとは聞いていたんですが、一応終わるし、最後にやっと第1章と出ることから考えても、二部作というのは事前には知りたくなかった。最後にタイトルと一緒に第1章と出た時点で絶望感に包まれたかった。最後にピエロの笑い声も聞こえる。まだ死んでないよー終わってないよーというお知らせでもある。

でも、大人になってはいても、またLosers clubのあいつらに会えるというのは嬉しい。はやく観たい。
(『パワーレンジャー』の続編も待ってます)

俳優関連では、すごく怖いいじめっこのヘンリーを演じていたニコラス・ハミルトンは『はじまりへの旅』の一人だけ妙にさめてる弟さん役だった彼でした。確かに同じ顔。少し意地悪っぽい顔だと思っていたけれど、こんな本格的ないじめっこの役をやるとは…。
(自分が書いた『はじまりへの旅』の感想を読んだらニコラス・ハミルトンについて、“小さい頃のリヴァー・フェニックスにも似ている。テオ・トレブス系の顔”と書いているけれど、もうちょっと意地悪顔方面に育っちゃったかなーという印象…)




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