『パンドラ ザ・イエロー・モンキー PUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIE』



2013年公開。ライブDVDかと思ったらライブツアードキュメンタリーだった。
曲も一曲まるまるは入っておらず、音も悪い。曲を聴くための映画ではない。

しかも最新のものではなく、1998年に行われた113本という長期のツアーを振り返るという内容。なぜこんなに間が空いているかというと、ツアー長すぎるが故に、裏でかなり大変なことが起きていたからだ。時間が経たないと明かせない真実。
ANNIEが腰がおかしくなって、インタビュー中は座れなかったけどライブ中は座らざるをえなくてきつかったみたいな話は序の口。吉井の妻が精神的におかしくなって、途中からツアーに帯同してたという話は壮絶。途中で事故でスタッフが亡くなったりもしている。

最初のほうで『SUCK OF LIFE』でおなじみギターフェラもおさめられている。ひざまずいた吉井がエマのギターを歯で弾くんですが、股の間から手を突っ込んでエマの尻を鷲掴みしてて変な声出た。ギターだけじゃなくて腹とか胸あたりにも頬を寄せたりキスをしたりしていた。ものすごく綺麗に撮られていたけれど、これはこの映画のサービスシーンで、他のシーンは結構ずっと厳しい。

ホール公演の最終日のMCで、吉井が「このツアーは失敗だった。ほかのメンバーはどうかわからないけど個人的には失敗だった」とMCで言っていて、いつもの冗談だと思ってる客席が笑ったり、「えー」と言ったりしてるけど、このドキュメンタリーを観た後だと、冗談でもなんでもなく、吉井が本心で言っていたのがわかってぞっとする。


スタッフの「フラッシュバックが起こる人はもう一回その場所に行って何もないんだって確かめないと克服できない」という話をしていてそれもつらかった。もう一度その場所を訪れる前にバンド自体が解散してしまったとのこと。


監督は高橋栄樹。『SPARK』以降のPVを多く手がけているけれど、最近だとAKB48のドキュメンタリーでも話題になってた。AKB48はまったく知らないから観てないけど、かなり厳しい内容だという話は聞いたことがある。本作の厳しさ見るとそれも納得出来る。
厳しいというのは駄作という意味ではなくて、観ていて、心が削られる。観ていてつらいから、二度は観られない。


『PUNCH DRUNKARD』というアルバムはそこまで好きじゃないからこのツアーは行ってないだろうと思ったけど、この前年がフジロックで、フジロックの時はイエモンが大好きだったのでこのツアーも多分行ったのだと思う。

『真珠色の革命時代』をステージにオーケストラを配して演奏したものは、観に行った気もするけれど、このことを雑誌で読んだか行った人の話を聞いたのか、情報として仕入れただけなのかわからない。

終盤の『ROCK STAR』は普通のライブDVDのように音もちゃんとしてるし、一曲丸々入ってる。横浜アリーナでのツアーファイナルの様子なので、私が行ったとしたらここかもしれない。113箇所のツアーをやると、こんなことになるんだって知らなかった私は、たぶん無邪気に観てたのだろうし、でもその楽しみ方で正解なのだとも思う。

この時に、「内容の濃い充実した旅でした。みなさんにもこの先、内容の濃い旅が絶対に待っています。頑張って乗り越えてください」というMCをしていて、“濃い”の部分を卑猥に強調して言っていてここでも客席からは笑いが起こっているけど、“頑張って乗り越えてください”と言ってしまっているということは、濃い=つらいorしんどいだったのだと思う。君らも乗り越えて大人になってねということ。

ただ、これを観て、またイエモンが好きになるかといったら、それはまた別の話だ。あの頃の、イエモンが好きだった頃の私と対話をするだけです。

最後に入っていた『SO YOUNG』もフルバージョンだった。今あらためて聴くと“いつか忘れて/記憶の中で死んでしまっても/あの日僕らが/信じたもの/それはまぼろしじゃない/ない/ない”のあたりがまさに現在の私とイエモンの関係みたいでちょっとだけ泣いた。

ブラーのドキュメンタリー映画、『ニュー・ワールド・タワーズ』を観た時にも思ったけれど、バンドのドキュメンタリー映画だと思ってひとごとのように観ていると、急にその奥に自分が透けて見えてきて、映画の内容と自分が繋がってしまいハッとする。


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