『マイティ・ソー バトルロイヤル』



MCU17作目、『マイティ・ソー』としては3作目。
とはいえ、『マイティ・ソー』の前2作とは作風もだいぶ違うし、復習の必要はなさそう。でもそれよりはMCUを観てないとわからない部分がいくつかあるが、そっちの復習のほうがソー・シリーズを振り返るより数倍大変。
でも、中でも『アベンジャーズ』シリーズだけでも観ておいたほうが楽しめると思う。笑いどころが過去作関連だったりするので…。
でも『アベンジャーズ』シリーズを観るためにはどちらにしてもMCUを振り返っていかないとわからなかったりするのでどうにもならない。『アベンジャーズ』の一作目だけでもという感じはする。

監督は『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のタイカ・ワイティティ。
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は未見なのですが、本作はおそらく監督の色が濃く出てるのではないかと思う。系統としては『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』です。あれも、ジェームズ・ガン色なので。

以下、ネタバレです。











『マイティ・ソー』の前2作は、アスガルドから地球に来た王子が女性を好きになって…という感じで、ラブストーリー風味が強かったように思う。
それでも2作目は王子様のイギリス観光メイン(という印象)なのと、ジェーンの家の入り口のフックにムジョルニア(ソーのハンマー)を引っ掛けるなどコミカルな面もあった。

ただ、ソー自身の馬鹿真面目さが作品のトーンになってしまっていた。それは王子として必要ではある真面目さなのだと思うけれど、ちょっとかたい印象だった。もしかしたら、ジェーン役のナタリー・ポートマンのせいかなともちょっと思う。

本作では前作でジェーンと別れたのでナタリー・ポートマンは出てきません。地球もほとんど出てこない。これも良かったと思う。
オープニングからソーが網の中に捕まっていて、しかもこれはワザとだというようなことをカメラに向かって話しかけてくる。さながらデッドプールである。

そして、鎖に吊るされたまま悪いやつの口上を聞いていたのだが、その鎖が回転しちゃって、ごめんちゃんと聞いてなかったみたいなことになって…。
そのシーンいる?という無駄感とくすっと笑っちゃう感。最初のこの雰囲気が作品全体のトーンになっている。

そのあとに入るアスガルドで上演されているロキを讃える芝居もめちゃくちゃ。趣味の悪い、ロキのでかい銅像の下でロキの死を美談として受け継ぐ芝居が屋外劇場で演じられている。ここでのソー役がクリス・ヘムズワースの実際の兄のルーク・ヘムズワース、ロキ役がマット・デイモンというこのふざけ方。最高です。
演じさせていたのがオーディンに化けたロキだったんですが、今回、ロキがとにかく可愛い。

今まで、悪役なんだけどなんかかわいそうだった…という印象だったけれど、今作ではロキの愛されキャラっぽさが作品の中でとても目立っている。たぶん、監督がロキを好きなんだと思う。

悪いやつなんだけど、結局イタズラの範囲なんですね。しかも、兄の気を引こうとしてやってるフシがある。
あと、弟ならではのちゃっかりさと狡猾さを持ち合わせている。

本作はアスガルドで姉のヘラが大暴れしてるんですが、兄弟は辺境の地サカールへと飛ばされる。
そこでロキはちゃっかりしてるからグランドマスターの懐にすっと入ってしまう。ソーは闘技場で戦わされてるというのに。
でも、ああ、ロキならそうするだろうなーというのがよくわかる。
ハルクが出てきて怯えるのは『アベンジャーズ』一作目でのことを思い出してるのだと思いましたが、ハルクがソーの足をもって左右の床にバンバン叩きつける様子で「イエー!」となっていたのも一作目の自分が受けた仕打ちを思い出していたのだと思う。

ソーが話す「8歳のとき、蛇が好きな俺のもとに蛇に化けたロキが来て、近くで元の姿に戻って刺した」というほっこりエピソードも、映像はなく語られるだけだけどその様子が容易に想像できる。子供の頃から、今まで何回もそんな目に遭ってたんだろうし、はたから見ていると、結局じゃれているようにしか見えない。
そして、この語られるエピソードはクリス・ヘムズワースのアドリブだという…。

最近だと『お!バカんす家族』や『ゴーストバスターズ』でコメディっぽい役もやていて、意外さとギャップで笑ったんですが、もしかしたらすごく愉快な人なのかもしれない。

ホログラムのロキにぽいぽい石を投げつけているのもおもしろかったけど、本人がそこにいるか確かめるために別のシーンでも物を投げつけるのもおもしろかった。がつんと当たってた。
そのシーンでは笑うんですが、最後に「ここにいたらハグするのに」と言って投げた物をキャッチして「いるよ」というシーンはグッと来た。物を投げつけるのが三回出てくるのもおもしろいんですが(天丼…)、ここではいなかったりがつんと当たったりはせずにキャッチするのもいい。この後、ちゃんとハグしてもらったんでしょうか。

結局、ソーとロキは仲がいいですよね。兄弟だもんね。
助けて作戦もすごく笑った。ロキがぐったりしてて、ソーが「怪我人なんです!助けて!」と言って相手が油断したところにロキを投げつけるという。
これ、兄弟が協力しないとできない技だし、話しっぷりからして今までも何回もやってきてるようなんですね。今までの作品以上に二人の一緒に過ごしてきた時間の長さと絆の深さが感じられた。
しかもこれが壮大な話ではなく、ちょっとしたエピソードやくだらない話を通して感じられるのがうまい。

今までのアベンジャーズシリーズやソーシリーズを観ていて、ロキについては様々なおかしな想像をしていたけれど、想像の上をいく可愛さだった。

ソーはきっとここまでもロキに相当苦労させられていたんだろうなというのも想像に難くないんですが、今回はハルク/バナーもかなり面倒。
ハルクとバナーはどうもお互いを嫌い合ってるみたいで、ソーはハルクの機嫌をとるために「バナーより君の友達だよ」と言い、バナーの機嫌をとるために「ハルクより君のほうが」と言う。どっちも大事だろうし、協力してもらいたい気持ちが本心でも、どっちも大事では彼(ら)は納得しない。だから「君のほうが好きだ」と嘘をつく。
ハルクもバナーも、「どうせ僕なんて…あっちのほうが好きなんでしょ?」みたいな感じでまるで面倒くさい彼女である。「そんなことないよ!」と必死で取り繕うソーの苦労が見えておもしろかった。ただでさえ、ロキ(と今回はヘラ)に苦労させられているのに大変。

ハルクについては予告にもバンバン出ていたから知っていたのですが、本当なら知りたくなかった。本編では、闘技場でのソーの相手、グランドマスターの隠し玉についてはだいぶもったいつけられるので。
ただ、バナー姿のシーンがあんなに多いと思わなかったからそれは嬉しかった。今回もハルクのモーションキャプチャーもマーク・ラファロなんだと思いますが、緑の粉末みたいなのをかけられたバナーは本当にハルクに見えてなるほどと思った。

バナーが出てきたときにすごく怯えていて、それが違う星にいるからだとわかったときには納得した。地球の普通の研究者が目覚めたら違う星にいるんだからそりゃそうですよね。なんとなく、『スター・ウォーズ』とか違う星で人間と宇宙人が普通に暮らしていてもおかしくないファンタジーSFのつもりで見ていた。
スタークの服を着てるバナーも可愛かった。デュラン・デュランの『RIO』のアルバムジャケットTシャツだった。とてもスタークっぽい。

本作はどちらかというとキャラ萌え映画だと思うんですが、サカールを抜け出すとき、宇宙船での撃ち合いではなく、追っ手の宇宙船の上に乗って生身の人間が戦うというアクションも楽しかった。

また、序盤でムジョルニアを壊されているから、ソーには武器がない。だから、自身が最終兵器というか、力を解き放って雷を操りながら戦うのもかっこよかった。短い髪も似合ってる。

ただ、それでも全員束になってかかってもヘラには敵いそうにない。それで、最初に倒した敵をアスガルドに復活させ、星もろとも滅ぼすという…。乱暴だけれど仕方ないのか。宇宙船で逃げ出した民たちは故郷を失い、難民になってしまった。

予告でレッド・ツェッペリンの『移民の歌』が使われていて、本編中でも戦いの盛り上がるシーンで使われていて恰好良かった。最近は予告で使われていても本編で使われないことも多いからうれしかった。
和訳を見ると、本編の内容とも合っていて、まさに主題歌である。

ソーは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で帰ってくる、とのことでMCUはまだまだ続く。一応、2018年4月27日公開予定とのこと。
そういえば、今回、ドクター・ストレンジもちょっと出てきた。『ドクター・ストレンジ』の本編のおまけ映像で、ストレンジがソーに魔法の力でビールを注いであげるシーンがあったけれど、本作ではあれが本編に入ってました。おまけシーンがそのまま本編に入るのも珍しい気がする。
それ以外にもストレンジの魔術に翻弄されるソーがおもしろかった。ソーはビールこぼしまくるし、ストレンジのアジトの物を壊しまくる。雑。性格が合わなそう。

MCUとしては次は2018年3月1日(日本公開日。アメリカは2月16日)の『ブラックパンサー』かな。最近公開になったポスターも恰好良いし楽しみです。

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