『ゴッズ・オウン・カントリー』(二回目)
Posted by asuka at 8:15 PM
のむコレから二ヶ月、配給会社がついて、晴れて正式公開となりました。ご祝儀としてクリアファイル付きパンフレットも購入。クリアファイルは抱き合うジョニーとゲオルゲが表と裏になっていて、とても良いデザイン。
二回目の感想を簡単に。(一回目の感想はこちら)
以下、ネタバレです。
少し前までの同性愛を取り扱った作品では、愛し合う二人は結ばれないものだった。死んでしまったり、酷い迫害を受けたり、それ故に片方が相手のことを思って身を引いたり、世間体を気にして別れたり。とにかくアンハッピーエンドになるパターンが多かった。
実は、何の情報も入れずに観た一回目は、序盤の荒涼とした風景とジョニーの堕落っぷりと逃げ場の無さっぷりからハッピーエンドになるのかはわからなかったし、またいつものパターンに当てはまるのではないか…と思いながらひやひやして観ていた。
二回目はある程度流れがわかっているので安心しながら観ました。誰も死なないというのがわかっているのもいい。
ジョニーの表情が何も望みがなくやる気も感じられないところから、ゲオルゲに会って警戒感丸出しになり、それからでれでれの締まりがないものになり、ゲオルゲに出て行かれてからは家族を守る強さが見える表情になり、最後はとても優しい表情になる。
その移り変わりは彼の成長そのままである。
人が一生懸命何かをする姿というのは見ていて応援したくなるし、成就した時には良かった!と思うし、何をかはわからないけど、私も頑張ろうという気持ちになる。見終わった後に自分の中に前向きだったり優しい気持ちが広がる。
こういう映画を自分の中に作っておくと、気持ちが落ち込んだ時などにこれを観れば、観終わった後には自分が優しい気持ちになることができる。映画によって自分の機嫌をとることができるのはすごいことだと思う。だから是非、ソフト化されてほしい。
同性愛者であることでの問題はそれほどないと思ったけれど、牧場の後継ぎができないというのは問題といえば問題なのかもしれないし、ゲオルゲも結局それを一番気にしていたようだった。けれど、女性をパートナーにしたところで、跡継ぎができるとも限らない。
それよりも、具体的にどうするのかはわからないけれど、ジョニーは建設的な意見を持ち、それを自分の父親に提案することができるようになったのが素晴らしい。序盤だとジョニーは父に畏れと苛立ちしか感じていなかったと思う。発作の影響もあると思うけれど、父を気遣う心を持つことができたのも、ゲオルゲのことを好きになったからだろう。ジョニーが父を気遣えば、父もジョニーに感謝をし、今まで叱責しかしていなかったのに礼を言うようになる。恐らく初めてなのではないかと思う。
すべてが良い方向へと進んで行く稀な映画だと思う。扉が閉まるエンディングなので、この先のことはわからない。神のみぞ知る。大変なことも多いと思うけれど、きっと良い方向へ進んで行く。扉の向こうは新たな始まりなのだ。だから、観終わった後に、ああ、観て良かった…と心から思う。
calendar
ver0.2 by バッド
Archives
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
いわゆるロードショー公開はされない注目作を上映するのむコレ2018にて上映。 今年公開された映画らしい。 あまり内容を調べずに観たので、タイトルと、主演が『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役でお馴染み、ウェールズ出身のイワン・リオンだったため、RAFのイギリス部隊の話かと思っ...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
-
2013年公開。あんまり評価がよくなかったので映画館へは行かなかったんですが、ハリー・トレッダウェイが出ているということで観てみたらおもしろかった! 映画館で観れば良かった。 149分と多少長く、長いわりにエピソードが細切れでまとまってない印象はあったけれど、これも劇場で観ていれ...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
IMAXレーザーというと109シネマズ大阪エキスポシティのものが有名ですが、このたび109シネマズ川崎と名古屋にも導入された。そのプレオープンで『ダンケルク』の上映があったので行ってきました。 ただし、大阪のレーザーはGTテクノロジー(旧次世代レーザー)という名称で、スクリーンの...
-
新宿シネマカリテにて、毎年行われているちょっと変わった作品を集めた映画祭カリコレにて上映。 ステファン・ダン監督初長編作品。カナダ出身なのと、同性愛もの、家族もの、音楽がふんだんに取り入れられたスタイリッシュな映像…ということこで、第二のグザヴィエ・ドランというふれこみの...
-
2000年公開。曲や映像づくりなど、とてもダニー・ ボイルらしい映画だった。 幻のビーチに辿り着くまでの話なのかと思っていたけれど、 かなり序盤でビーチには辿り着いてしまう。 そこから物語が展開していくということは、 ビーチがただの天国ではなかったということ。 一人旅の若者が...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
©
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: