『ROMA/ローマ』



Netflixオリジナル映画で、配信のみにもかかわらず(一部劇場公開もされたらしい)、様々な賞を受賞したりノミネートされたりしていて、アカデミー賞も作品賞など主要部門含め10部門ノミネート。
アルフォンソ・キュアロン監督。監督の半自伝的な物語とのこと。

以下、ネタバレです。





ネタバレとは言え、完全に理解できたわけではない。内容が難しいわけではなく、背景がわかりにくかった上に、説明はほぼない。
時代は1970年と1971年(これは1971年の年明けが描かれるのでわかる)。
解説には中流家庭と書かれているけれど、金持ちの家なのかと思いながら観ていた。そこで家政婦として働くクレオが主人公。同じメキシコではあるようだけれど、クレオの故郷は遠いようだった。もしかしたら人種も違うのかもしれない。
その辺の、家政婦を仕事とする人と雇う側の関係もよくわからなかった。
住んでいる家がメキシコシティ近郊のコロニア・ローマということで、タイトルの『ROMA』らしい。これも場所の説明などはないので、観る前や観ている間も、イタリアのローマのことかと思っていて、何が関係あるのかと思いながら観ていた。関係ありませんでした。

全編モノクロ。過剰に動かないカメラが長回しのように生活を映し出す。淡々としているけれど、非常に美しい。ただ、途中まではあまり物語の動きもないので、集中力を要する。これが映画館なら…と思ってしまった。
また、本当に画が綺麗なのと、モノクロなので、黒い色を真っ黒で観たいので、そのあたりも映画館向けだと思う。一応電気を消して観ましたが、物足りない。日本でも映画館で公開してほしい。

年明けのシーンで乾杯のカップが、乾杯できずに割れてしまうのが示唆的だった。
そのあとの夜の山火事も、大変なことが起こっているのに美しい。男が燃える炎をバックに歌っているシーンも宗教的で美しかった。背後ではバケツリレーで必死の消火活動が行われている。

雇い主の家の夫は不倫をしているのが確実になる。妊娠したクレオは父親である男性に会いに行くけれど、逆に脅される。
この辺りから、雇い主の家の妻はクレオへの親近感が強くなったように思えた。この家には子供が四人いるのですが、子供たちは元々クレオのことが大好きだったようだ。

家具屋にクレオの子供のベビーベッドを見に行った時に、学生のデモ行進と思われる集団に遭遇するが、デモ行進ほど穏やかなものではなく、銃も扱っていた。これはロス・アルコネスという政府軍の支援組織らしく、映画内に出てきたのも“血の木曜日事件”というものらしい。
ここで、父親である男性もこれに参加をしていることがわかり、クレオに銃を突きつけるのがつらい。クレオは破水し、死産してしまう。

雇い主の家の妻もつらくないわけはないのだろうが、家には大きすぎる夫の車を売っぱらったことで、何かが吹っ切れたようだった。すっかり表情が無くなってしまったクレオの気分転換のために、クレオと子供達と一緒に海へ旅行に出かける。モノクロの海の景色がまた素晴らしく綺麗。

子供たちが海で溺れそうになっているところを助けに行くクレオが印象的だった。泳げないクレオが波の中へ入って行く。押し寄せる波をかき分けて海へ入って行くクレオは、今まで困難を乗り越えてきた姿と重なるようで涙が出てきた。強くあらねばならないという今までの苦労が見えるようだった。
そのあと、キービジュアルにもなっている、家族と抱き合うシーンがあるんですが、クレオが家族に愛されているのもわかった。また、妻も夫と別れて傷ついているし、子供たちも父親と別れるのがつらい。全員それぞれが傷ついているけれど、身を寄せ合って、みんな一緒なら生きていけるという希望が見えた。

最後に映された空を飛行機がゆっくりと飛んでいるショットも本当に綺麗だった。もうどのシーンを切り取っても美しい。だからこそ、大きなスクリーンで観たかったとも思う。
Netflix配信も一長一短だと感じた。
映画館での上映だと今まだ観られなかったかもしれないと思うと、全世界同時配信はありがたい。特に、アカデミー賞受賞有力だと思うので、アカデミー賞前に観られるのは本当に嬉しい。契約していれば何度でも観られる。しかし、こんなちゃんとした作品が家のテレビでしか観られないのはもったいない気もした。


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