『メリー・ポピンズ リターンズ』



1965年公開(アメリカでは1964年)『メリー・ポピンズ』の続編。なんの情報も入れずに観たので、メリー・ポピンズだけが前作に出てくる登場人物で、彼女が違う家庭に家庭教師として現れて…という内容だと思い込んでいたが、同じバンクス家が舞台だった。前作との繋がりがかなり深いので、観ておいたほうが楽しめそう。
私は観ないで臨んだので、たぶんこうなんだろうな…と予想するしかないシーンもたくさんあった。前作を観て復習したい。
ただ、2014年公開(アメリカでは2013年公開)の『ウォルト・ディズニーの約束』を観ていたためにわかる部分も多かった。原作者のP.L.トラヴァーズと前作の『メリー・ポピンズ』の製作裏話のようなストーリーで、彼女の家庭の問題についても描かれている。原題は『Saving Mr. Banks』だったが、本作もまさにそのような内容だった。

以下、ネタバレです。







オープニングは男性ジャックが歌いながら町中の街灯を消している。前作の25年後という設定らしいのだけど、前作では煙突掃除をしていた子供らしい。しかし、『チム・チム・チェリー』は歌わない。『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス 』も出てこない。前作の有名曲は潔く使われない。でもエンドロールでワンフレーズ出てきました。
大恐慌時代ということでロンドンは曇っていて暗い。その中でジャックはとても楽しそうに働いているし、一気にミュージカル色に染める。
ミュージカルに無知なので知らなかったのですが、ジャック役のこの男性が『ハミルトン』で脚本・作曲・作詞・主演を務めているリン=マニュエル・ミランダだった。そんな有名な方だったのか!と観終わってから知りました。
最初の歌も長く、オープニングのインスト曲も長くてなかなか話が動き始めない。最初のシーンからもわかるんですが、かなり本格的なミュージカルだった。話が始まっても、俳優さんたちは少し大げさな舞台演技である。でも、衣装も奇抜だし、歌も多いし、普通の演技では温度差が出そうなのでこれでいいと思う。
途中、ジャックと同じ仕事をしている人たちの夜のダンスシーンなどはカメラワークからも舞台が意識されているように思えた。ナショナル・シアター・ライブのようでした。

バンクス家の父親役にベン・ウィショー。彼にしては珍しい役かなとも思うけれど、歌のシーンも多くて満足。
前作での姉弟が成長していた。子供時代の思い出などもふんだんに取り入れられているために、前作を観ておいたほうがいいと思った。
『ウォルト・ディズニーの約束』では、トラヴァーズ家の父がバンクスのモデルになっていて…とのことだったけれど、本作の父バンクスも妻を亡くしていて、心に傷を抱えている。そんな中で、金を返さないと家を差し押さえられそうになっていて、株券があればそれが逃れられるが…というのが大人パートのストーリー。
大人たちが株券を探す中、子供たちの面倒を見るためにメリー・ポピンズが現れる。演じるエミリー・ブラントはメイクもばっちり、衣装は奇抜、話し方は平坦と、他の役を演じている時とはまったく違っていて、メリー・ポピンズという人間離れしたキャラがよく合っていた。

ただ、最初のお風呂の海洋パートは良かったのですが、割った陶器の中に入っていくパートはメリー・ポピンズが舞台で踊っているあたりから、脳が拒絶するというか、あまりにも奇抜すぎて受け入れられなくなってしまった。はやく現実パートを見せてくれと思ってしまった。もっと柔軟にならないといけないと思う。前作のあのアニメのペンギンも出てきていました。

バンクスのイライラが最高潮に達して子供たちを怒鳴りつけるあたりからは、ああ、本作もメリー・ポピンズは子供たちに夢を与えるだけではなく、大人も救っているのだな…と思った。やはり、大人側からの目線で観てしまう。

凧の修理をしていたのが株券だったとか、あれだけハシゴを駆使して必死に登ったのに結局メリー・ポピンズが傘でふわっと浮かんで時計を戻すとか、2ペンスが運用で膨れ上がったとかの終盤付近のエピソードは御都合主義だと思ってしまった。けれど、現実離れしたミュージカルなのだし、これはこれできっといいのだと思う。

すべて解決した後の春の祭りのシーンは服装も背景も色合いが優しくて、わくわくした。風船で上がって行きながら歌うのも幸せな気持ちになったので、もう細かいことはいいかなと思ったし、いい映画を観たなという印象で終われたので良かった。ここのベン・ウィショーは服装も春めいていて、風船で浮かびながらハッピーに歌っていて、まさにディズニー映画に組み込まれていて、こんな役ができるのだと少し驚いた。

単純だし、悪役っぽい悪役が出てくるストーリーで、少し『パディントン』を思い出したが(ベン・ウィショーだし)、『パディントン2』の悪役に向けられる視線の優しさが好きだっただけに、本作は悪役にまったく救いがなくて可哀想に思ってしまった。何かあの場所で改心するか何かして、風船で浮かばせてほしかった。悪役がコリン・ファースだから余計にそう思った。
また、コリン・ファースが出ると聞いた時に、歌うのか?踊るのか?と思ったけれどそんなシーンはなく、その点では『マンマ・ミーア!』が上。

また、『マンマ・ミーア!』から、メリル・ストリープも出てます。彼女もビビッドなオレンジ色のウィッグにおかしな訛りで、元の俳優っぽさをまったく出さないキャラクターになりきっていた。歌も踊りもあって、もちろんうまい。

原作は8部作で続編構想も出ているらしいが、本作もですが、トラヴァーズさんはどう思うかね…と『ウォルト・ディズニーの約束』を思い出して考えてしまった。


0 comments:

Post a Comment