『アクアマン』


DCヒーロー物というと、少しほの暗い部分を求めてしまうんですが、本作は細けえことはいいんだよ!系だった。でも、監督が『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワンだと聞いて納得した。
思っていたのと違ったのと、要素を詰め込みすぎだとは思ったけれど、その荒唐無稽さがコミックっぽくはある。衣装がぱっと変わったりもしてたけど、着替えたのいつ?などとは考えなくていいんだなと思う。

以下、ネタバレです。








オープニングの、海に流れ着いた見知らぬ女性を助けるシーンで、もう細かいことはいいのだなと思った。水槽の金魚を手づかみで食べたり、ウロコ柄のウェットスーツのような服装で只事ではないのに、名前を聞いたら言葉は通じるらしく、英語で答えていた。コミュニケーションはとれるのだ。そこまでカルチャーギャップもなさそうだった。

大人になったアーサーが潜水艦で海賊を倒して大暴れするシーンは、狭い船内なのにキメのポーズ満載で、ジェイソン・モモアが恰好良かった。海賊が未来っぽい機械のようなスーツを着ていたのも気になったけれど、彼が恰好いい限り、この映画は成功だろうと思った。
そこで、海賊親子の父親が死んで、恨みを募らせた息子が残されるので、今回のヴィランはこいつなのだろうと思った。

けれど、この映画はヴィランがいてそれを倒すという映画でもなかった。続編があるのかはわかりませんが、一作目なのでメタルかハードロックなんかをバックに(ジェイソン・モモアの見た目から)、単純に悪者をバッタバッタと倒すストーリーで良かった気もする。

しかし、序盤で海底に連れていかれて、異父兄弟と王座をかけて戦うことになる。この映画は海底パートと陸パートが半分ずつくらいなんですが、海底の色の鮮やかさが綺麗だし、武装したサメやタツノオトシゴなどに乗っていたりして映像が楽しい。海洋SFです。メラ王女のクラゲのドレスも美しかった。これはIMAX向けだと思う。細かいところまで観たいし、鮮やかさをもっと堪能したかった。しかし、IMAXでの上映がほとんど無いという…。
アーサーもなんですが、髪が長く、水の中なのでふわっと広がるのが独特。メラの赤い髪も綺麗だった。

この後の陸パートが、CGバリバリの海底パートとはまったく違っていて、個人的にはこちらがとても好きでした。メラとアーサーは、伝説の武器、トライデントを探しに行く。最初が砂漠なせいもあるけれど、まるで『インディ・ジョーンズ』のようだった。
砂漠で手がかりを得て、二人はイタリアに行く。陸を嫌っていたメラだが、アーサーの案内の元、陸の素晴らしさにも気づいていく…。もうこうして、宝探しをしながらメラが陸の良さに気づいて行く話でもいいのではないかと思ってしまった。そのつもりで観ていたら、また未来の機械のスーツのような人物が出てきてぎょっとする。普通のイタリアの風景に溶け込まないSF…。
しかし、この追手たちとアーサー、メラのバトルシーンがとても見応えがあった。カメラだけが動く長回し風のショットで、違う場所にいる二人の戦いを立体的にとらえるのがおもしろかった。
また、このシーンはアーサーよりもメラの活躍が目立ったんですが、ワインを使っての攻撃がそのアイデアも含めて新鮮だった。赤い髪の女性が赤ワインをナイフのように尖らせて放つことで攻撃をする。
この陸の中でもイタリアパートが本当におもしろかったので、ずっとこの調子ならいいのにと思ったけれど、こればっかりやってるとまったく海要素がなくなってしまい、『アクアマン』じゃなくてもいいのでは…いうことになってしまうのが悩ましい。

海溝で生贄となったはずの母と再会をするのも、2作目か3作目くらいでやってほしいエピソードだと思った。まさか、そのスーツの中身が母だとは!というのももっとためてほしかったし、トライデントの守護者とも、戦いではなく結局対話によりあっさりと問題を解決していた。アーサーだから、ということかもしれないけれど、トライデントもあっさり抜ける。このあたりからメラの活躍があまりなくなってしまい悲しい。

ここで、メラもアーサーも最終形態の服装にぱっと変わっていた。
最終決戦の場は多数対多数が戦っていて、最近のものだと『レディ・プレイヤー1』を思い出した。人間たち(正確には人間ではなく海底人とかそうものなのだろうけど)がわちゃわちゃしている後ろに、でかい蟹(のロボットに見える。SF風なので)がいる画が否応にも盛り上がる。
そこに、すべてを蹴散らすような、もっと巨大な何かが現れる。見た目の邪悪さから、大ボスが現れた!と思ったら、これを操っているのがアーサーだったので驚いた。この巨大さも、きっとIMAXのほうが楽しかったろうなと思う。残念。
『インディ・ジョーンズ』と『レディ・プレイヤー1』は普通なら一本の映画には同居しない。しかも二作を足して2では割らない。足しっぱなしなので、散らかっている。でも、もうそれでいいのだと思う。

最後のキメキメの構図とポーズとキンキラの色合いも、本当にコミックとしか思えなかった。だいたい、ジェイソン・モモアが漫画っぽいもの。きっとこれはこれで正解なのだ。
教訓とか説教臭さがなく、ただただ、恰好良く、楽しい作品だった。要素の多さやとっ散らかり具合も、この映画だからもう細かいことはいいのだと思う。お祭り映画。



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