『メイジーの瞳』


2014年公開。アメリカでは2012年公開。1897年の小説が原作になっているらしい。だいぶ前の小説ですが、映画は舞台も現代になっていて、それを感じさせない。むしろ、設定などは今風に感じた。

ポスターなどから、若い二人が両親なのかと思っていた。そのため、最初に役者名が表示されてジュリアン・ムーアが出ていることを知ったし、まさか、二作連続でスティーヴ・クーガンの出演作を観ることになるとは思わなかった。この二人が本当の両親役だった。

『スティーヴとロブのグルメトリップ』の独身貴族というか、遊び人っぽいスティーヴ・クーガンが良かったので、妻と喧嘩の末に離婚し、子守の若い女性と再婚というなかなか酷い役柄がまた良かった。

最初、演技というよりドキュメンタリーなのかと思った。両親役の二人を大喧嘩させて、その様子を子供役の子に見せ、不安げな表情を撮影しているのかと思った。でも、すべて演技でした。

原題は『What Maisie Knew』。“メイジーの知ったこと”ですが、『メイジーの瞳』もいいタイトルだと思う。そのタイトル通り、6歳のメイジー視点で話が進んでいく。だから、次第にメイジーに感情移入してしまう。

メイジーが母のバンド仲間か音楽仲間の中に連れて行かれるシーンがある。ちなみに母のバンドはホールのような感じで、ジュリアン・ムーアはコートニー・ラブ のように見えた。そんな音楽性なので、少し怖い目の人たちなんですが、そういえば子供の頃に、よくわからない大人の集まりに連れて行かれるのって怖かった なと思い出した。

また、母の新しい夫が働く店の前で一人置き去りにされて、店に入っても誰も知ってる人がいなくて…というシーンは本当に怖かった。幼い頃、迷子になったことを思い出した。
この場合は迷子とは違うけれど、結局バーテンダーも非番で、知らない大人の中にぽつんという状態は同じである。しかも、夜で不安は倍増する。

だから、前の子守のマーゴが来てくれたときには、やっと知ってる人が来た!というメイジーの気持ちがよくわかって泣きそうになってしまった。

小さい頃、とはいえ6歳も十分小さいけど、ここまでもずっと両親の喧嘩を見てきたせいなのか、メイジーは喧嘩を見ても、癇癪は起こさない。無表情になってしまっている。

でも、バーテンダーのリンカーンや子守のマーゴと遊んでるときは、笑顔だし、子供の表情だった。

母も父も、結局新しいパートナーともうまくやれなかったということで、きっと子供はかわいかったとしても、それとこれとは別な人間なのだろう。
両親の喧嘩と両親と新パートナーとの喧嘩をつぶさに見てきたメイジーが、バーテンダーと子守が仲良さそうにしているのを見て、一緒に幸せな気持ちになっているのが伝わってきた。
仲の良い男女を間近で見たのは、初めてだったのかもしれない。

そこでそんなにうまいこと若い二人が恋人同士になるのかなとも思うけれど、二人ともパートナーにひどい仕打ちを受けて別れ、二人ともメイジーのことをかわい がっていて、おそらく実の両親に対する思いも同じだったということで意気投合したのかもしれない。年齢も近そうだったし。

バーテンダーと子守とメイジーという疑似家族は幸せそうだった。でも、きっとあの母親は黙ってないだろうと思った。
後半でメイジーの元へ来て、自分のツアーに同行させようとしていて、この人は本当に何もわかってないんだなと思った。
でも、メイジーの怯えた態度ですぐに気づいたようだった。
別にメイジーが憎いわけじゃない。メイジーのことはかわいくて仕方ない。だから、娘強奪とかもっともめるのかとも思ったけれど、ここではちゃんと娘の幸せを一番に考えてあげることはできていて、ほっとした。

両親が離婚して、居所のなくなった子供が若い恋人の養女になるというと、かなり辛辣な感じだけれど、それが優しく自然なタッチで描かれていて、こんなことも現実にあるのかもしれないと思わされた。



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