『リリーと空飛ぶドラゴン Episode 1:新しい魔法使いの誕生』


2009年ドイツで公開。原題『Hexe Lilli:Der Drache and das magische Buch』。直訳すると、“魔法使いリリー:ドラゴンと魔術書”みたいな感じ。テオ・トレブスが出ていたので気になっていたけれど、まさか、日本版が出るとは思わなかった。

童話を原作とするキッズムービー。年を取った魔女が、自分の後継者候補の女の子に魔術書を託す。彼女が適しているのかをドラゴンがテストする中、その魔術書を狙う悪い魔法使いが襲ってくる。

話自体はまあまあ。すごくおもしろい!というわけでもなければ、つまらなくもない。CGなどの特殊はあまりお金がかかってなさそう。とはいえ、ドイツの子供向け映画を観たことがないため、その辺のクオリティもそんなものなのかもしれないし、よくわからない。

主人公リリーが可愛らしかった。好きな男の子(これがテオ・トレブス)の前でちょっと大人っぽく振る舞ってみたり、魔法を使えるようになったら調子に乗ってくだらないことに使ってしまったり。アニメ版の映画『時をかける少女』でも出てきたけれど、不思議なパワーを些細なことに使ってしまうのっていいですよね。
リリーはライバルの女の子たちに動物の尻尾を生やしたり、勉強せずにテストでいい点を取ろうとしたり、好きな男の子の気持ちを自分に向けさせたり。
テスト関連では“先生の言うことが実際に起こる”という呪文を唱えるんですが、「みなさんがいい点をとるよう信じています」までは良かったけれど、算数の授業で「教室に何リットルの水を…」みたいな話をして、教室がプールのようになってしまう。それでも、劇中で子供たちはパニックにならずに、楽しんでいた。順応性の高さに違和感があったけれど、これも細かいことを気にしてもどうしようもないことなのかもしれない。大体細かいことを気にしたら、教室の扉などから水が漏れて、プールのように溜まることはないだろうし。

後半、敵の施設に乗り込むときも、「好きな人、愚鈍な牛、インテリ、ドラゴン」とキーワードを元に仲間を見つけるが、ならば、それぞれが役割をもって行動して欲しかった。
ドラゴンとインテリは活躍するけれど、好きな人と愚鈍な牛はなんのために付いてきたのかもわからなかった。

悪い魔法使いがまったく魔法使いそうに見えないのは、狙ったのかどうかわからないけどおもしろかった。細身で無精髭、肩くらいまで髪が長く、顔は松本人志とジョニー・デップを足したような感じの小汚めのおじさんです。
最初、女性に変身していて、魔法が中途半端に解けてしまったので、女装姿になってしまっていた。
最後の方で、電波ジャックをして全世界の人々を操ろうとしたときのテレビに映っている姿は、バンドマンのようだった。

この全世界の中に日本も入ってるんですが、畳の上で正座をして着物姿でうどんを食べていて、障子のような外観ながら中程が折れて開閉しそうな扉で、テレビにはチャンバラの様子が映っているという、トンデモニッポンだった。

ともあれ、とにかく良かったのはテオ・トレブス。2009年だとたぶん15歳ですね。長編映画出演はこれが初めてだと思う。
学校のモテる男の子アンドレアス役。朝、リリーに声をかけるときに、「厩舎行く?」と言うんですが、何かと思ったらその後でポニーで乗馬をするシーンが出てくる。ドイツでは授業で乗馬をするのが一般的なんだろうか。
その声をかけられて去って行ったあとで、リリーがドラゴンに「アンドレアスよ!かわいいでしょ!」と紹介する。ドイツでは、男の子に向かっても、“かわいい”というのは褒め言葉になるのだろうか。それとも、最後の方で、アンドレアスがリリーのことを、「学校で一番かっこいいよ」と言うので、そのセリフと対比させるための“かわいい”だったのだろうか。
わからないけれど、間違いなくかわいかったです。
教室に水が溜まるシーンでは、後ろの方にちょこっとしか映らないけれど、水浸しになっていた。

おまじないのような感じで、魔法を使って、リリーがアンドレアスの気持ちを自分に向けるシーン。何事も起こらないかと思いきや、花がすっと差し出される。横にアンドレアスが膝をついて座っていて、手を前で組んで、もう目はハートになっている。好きというよりも、どちらかというと崇拝に近い気持ちを向けられる。わざとらしいくらいに恋しているテオくんが可愛かったし、魔法が解けたあとの自分は何をやってるんだというようなそっけない態度もかっこいい。

最終決戦に向かう前のメンバー集めで、アンドレアスは“好きな人”として招集される。その時に、前方の席に座っているアンドレアスが、ちらっとこちらを振り向いて肩をすくめるんですが、それがすごく良かった。学校で、好きな、かっこいい人が自分のほうを、わざわざ振り向いて見る。たまらないシチュエーション。

最終決戦はアンドレアスはついてきているだけで、特に何をするでもない。ただ、柵から下を見ているときに、リリーのすぐ後ろにいて、両者はまったく意識してないだろうけど、見ている私がその近さにドキドキしてしまった。

最後は「あとで二人で会える?」みたいなことを言われてめでたしめでたしなんですけども、この『リリーと空飛ぶドラゴン』、Episode 2もあるんですが、そこにはテオくんは出ていないようで。出番はここで終了なんですね、残念。

テオ・トレブスですが、2012年の『コーヒーをめぐる冒険』(原題『Oh Boy』)以降、久々の長編映画出演があるようです。
ドイツでは5/21公開の『Abschussfahrt』。日本語でたぶん、“ハジけた旅行”みたいな意味。予告編を見る限り、モテない童貞四人組のコメディっぽい。旅行だからおそらく、童貞喪失目的じゃないかと思われます。テオくんはその四人組には入っておらず、たぶん、彼らに意地悪をする厭味なイケメン役かな。
どちらにしても、ドイツ映画でコメディとなると、日本公開は難しいと思う。DVDスルーでもいいのでなんとか観られるといいなと思ってます。『俺たち〜』みたいな適当な邦題でも文句言わないので…。




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