『ドリーム』



原題は『Hidden Figures』。直訳すると“隠された数字”という意味。1961年、NASAの有人宇宙船計画に関わるある計算手の実話だから“数字”なのかもしれない。けれど、この計画に黒人でしかも女性が関わっていたというのは今まで知らなかった事実で、彼女たちにスポットが当てられているのでタイトルにはこの辺の意味も含まれていそう。

監督は『ジーサンズ はじめての強盗』のセオドア・メルフィ。

以下、ネタバレです。












NASAで働く三人の女性が主人公。その中でも計算手のキャサリンが中心になっている。
女性であるというだけでも差別されるのに、おまけに黒人であることでも差別される。おまけに1960年代のアメリカ南部である。コーヒーのポットも別、トイレも別だ。
才能があるから仕事は任される。その辺でしっかりと評価されていたのはほっとしたが、キャサリン以外の二人は才能を発揮する場を与えてもらうのにも一苦労だった。

黒人の男性陣は怒りを爆発させ、デモなどへも参加していたが、彼女たちはそちらへは進まない。もちろん怒りが原動力になっているのかもしれないけれど、ひたすら前進していくのが気持ちいい。捻くれることはない。

徐々に肌の色、性別関係なく、認めてもらえるのが観ていても嬉しい。特に、冷淡かとも思われる上司のハリソンを演じたケビン・コスナーが良かった。仕事一番だから仕事ができる人間は外見を問わずに認めるのだ。有色人種用というトイレの看板を壊すシーンは涙が出た。

また、同じように差別なくキャサリンを認めていたのが宇宙飛行士のジョン・ハーシェル・グレン。最初からキャサリンたちに一目置いているようだったが、会議の場で計算を展開したキャサリンに完全な信頼を置いていた。君に任せれば間違いないねという顔をしていたのが印象的。最後の飛行の時もキャサリンに検算を頼んでいた。いくら火の玉になっても、着地だけは安心していたのだと思う。

もちろんそんな人だけでなく、心無い人もたくさん出てくる。冷たく当たる女上司や同僚は、仕事ができるできない以前にとにかく気に食わなかったのだと思う。
でも映画の中ではそこまで陰湿ないじめは出てこず、冷たい人々も必ずギャフンと言わされる展開があるのでスカッとする。

会社でのことだけでなく、家族内や黒人コミュニティの話も出てくる。でもそこでも迫害されて悲観にくれるというわけではなく、さりげなく背中を押してくれたり愛を与えてくれたりと、ほっとするエピソードが多かった。
夫がデモに参加して警察沙汰なんていうギスギスしたエピソードはない。

頑張る人がしっかりと報われたり、痛快さや爽快さはなるほど、監督が『ジーサンズ』の脚本の方だなと思ってしまった。泣いてしまうシーンがないわけではないけれど、感動を押し付けられたり説教くさくなることがない。

メイクやファッションについても色合いが明るいのも良かった。キャサリンを演じるタラジ・P・ヘンソンと中心となる二人、ジャネール・モネイ、オクタヴィア・スペンサーの三人が並んでいるポスターや画像を見ていると元気が出てくる。
また、作品のポップさにファレル・ウィリアムスの音楽がよく合っているのも良かった。

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