『シタデル』
Posted by asuka at 7:06 PM
2012年公開。アナイリン・バーナード主演でたぶん唯一日本で観られる映画。
ジャケットからはホラーかと思われたし、たぶんジャンルとしてはホラーなのかなとも思うがあまり怖くはない。
トミー(アナイリン・バーナード)は、住んでいたマンションから、臨月の妻との引越し作業中、妻が何者かに襲われる。赤ちゃんは助かるものの、妻は死亡。
以降、何者かの影に付きまとわれ、怯えて暮らす日々を過ごすが…という内容。
最初のほうで、事件の被害者同士が集まるセラピーのようなものに出ていて、被害者が再び被害に遭う可能性が高いのは被害者オーラが出ているせいだという話をされる。
だから、トミーは妻が殺される不幸な事故の後遺症のような感じで、強迫観念にかられているのかと思った。襲ってくる何者かも妄想。
しかし、病院で優しくしてくれた看護師さんが「大丈夫よ、怖くないところを見せてあげるわ」と言って何者かの集団の中に入って行って、結局本当に殺されてしまった。看護師さんはもちろん強迫観念にとらわれていないから、何者かは本当に存在するということになってしまったのだ。
また終盤、看護師さんが「病気なのよ」と言っていた神父の言うことが正しいとも証明されてしまった。彼女が唯一まともっぽかったので彼女の言うことを信じたのに。
トミーの住んでいたマンションが悪の巣窟みたいな感じになっていて、最後には爆破して事なきを得ていたけれど、トミーは長らくここに住んでたんですよね? 今までおかしいことは起こらなかったのだろうか。他の住民はいなかったのだろうか…。
序盤で妻にキスするトミーは幸せ真っ只中といった具合だった。何も心配事などなさそうだった。さすがにあれだけの悪の巣窟なら気づきそうだけど。
怯えや強迫観念、恐怖心を抱くことで異形の者たちに見つかるようだったから、今まではそのような感情がなかったから気づかなかったということだろうか。
ラスト付近では心を強く持つことで、異形の者たちの中を見つからずに歩いていた。これは、妻が殺されてしまったことで生まれた恐怖心などを克服して強くなったという捉え方でいいのだろうか。異形の者たちは何かのメタファーなのかもしれない。
でも、もしそうならば、看護師や神父を殺すのはやめてほしかった。特に看護師までも殺されるのは理不尽すぎるし、話の中でも必要性を感じない。トミーのサポート役兼ほのかなラブ要員として活躍させてほしかった。
神父はそのマンションに因縁があったようだから殺される必要もあったのかもしれないけど、そこまでの怨念マンションなら、トミーが幸せに暮らしていたのも疑問。
強迫観念とか恐怖心の克服をテーマにするか、本当に異形の者が存在して邪悪にどんどん殺していくホラーにするか、どちらかに振り切ってほしかった。中途半端です。
ゾンビものにしても、ゾンビが走る走らないとか、頭を撃ち抜けば死ぬとか、噛まれるとゾンビになるとかルールを徹底してくれないとおもしろくない。ホラー自体をそれほど観ているわけではないからわからないけれど、ルールが徹底されていないと世界観に入り込めない。この映画は異形関係でのルールも徹底されていなかったと思う。この点でも中途半端。
ただ、アナイリン・バーナードはとても良かったです。終盤以外は赤ちゃんを抱きしめて怯えている。守ってあげたい感じ。
たぶん看護師も同じ気持ちだったのだろうけど、目をつぶって怯えているトミーに口づけるシーンがあって、すごく共感しました。
アナイリン・バーナードは2009年にローレンス・オリヴィエ賞主演男優賞を受賞してるのに、もっとそれが活かせる映画を…と思ってしまいました。
中盤までは、赤ちゃんを抱いてはいるけれどほとんど一人芝居なので、演技は堪能できる。けれど、ストーリーがこれではもったいない。
calendar
ver0.2 by バッド
about
- asuka
- 映画中心に感想。Twitterで書いたことのまとめです。 旧作についてはネタバレ考慮していませんのでお気をつけ下さい。
Popular posts
-
アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、歌曲賞ノミネート、脚色賞受賞。その他の様々な賞にノミネートされていました。 以下、ネタバレです。 北イタリアの別荘に夏の間訪れている家族の元に、一人の青年が訪れる。家族の父親が教授で、その青年は教え子である。 まず舞台の北イタリアの夏の風景が素晴...
-
ウェス・アンダーソン監督作品。前作の『ムーンライズ・キングダム』は、ブルース・ウィリスやティルダ・スウィントンは良かったし、家の中の撮り方も良かったけど、お洒落映画でしかないかなという感想だった。そのため、今回もかまえてしまっていたけれど、すごく面白かった。 やはり、撮り方な...
-
いわゆるロードショー公開はされない注目作を上映するのむコレ2018にて上映。 今年公開された映画らしい。 あまり内容を調べずに観たので、タイトルと、主演が『ゲーム・オブ・スローンズ』のラムジー役でお馴染み、ウェールズ出身のイワン・リオンだったため、RAFのイギリス部隊の話かと思っ...
-
試写会にて。わかったことと、わからないこと。 以下、ネタバレです。 クーパーがどうやって助けられたのかがよくわからなかったんですが、あの時のアメリアの顔は幻じゃなかった。映画の序盤でワームホールを通る時に、アメリアが“彼ら”の姿を見てハンドシェイクをする。結局“彼...
-
ドルビーアトモスで観たんですが、席が前方だったせいもあるかもしれないけれど、あまり音の良さはよくわからなかった。前回がIMAXだったからかもしれない。 IMAXと同じく、最初のプロモーション映像みたいなのはすごかった。葉っぱが右から左へ。 以下、二回目で思ったことをちょこ...
-
2013年公開。あんまり評価がよくなかったので映画館へは行かなかったんですが、ハリー・トレッダウェイが出ているということで観てみたらおもしろかった! 映画館で観れば良かった。 149分と多少長く、長いわりにエピソードが細切れでまとまってない印象はあったけれど、これも劇場で観ていれ...
-
ほぼ半月あけて後編が公開。(前編の感想は こちら ) 以下、ネタバレです。 流れ自体は前編と同じ。ジョーがこれまであったことを話し、それに対して、セリグマン(今回はちゃんと名前が出てきた。ステラン・スカルガルドが演じている男性)が素っ頓狂なあいづちをうつ、と...
-
IMAXレーザーというと109シネマズ大阪エキスポシティのものが有名ですが、このたび109シネマズ川崎と名古屋にも導入された。そのプレオープンで『ダンケルク』の上映があったので行ってきました。 ただし、大阪のレーザーはGTテクノロジー(旧次世代レーザー)という名称で、スクリーンの...
-
新宿シネマカリテにて、毎年行われているちょっと変わった作品を集めた映画祭カリコレにて上映。 ステファン・ダン監督初長編作品。カナダ出身なのと、同性愛もの、家族もの、音楽がふんだんに取り入れられたスタイリッシュな映像…ということこで、第二のグザヴィエ・ドランというふれこみの...
-
2000年公開。曲や映像づくりなど、とてもダニー・ ボイルらしい映画だった。 幻のビーチに辿り着くまでの話なのかと思っていたけれど、 かなり序盤でビーチには辿り着いてしまう。 そこから物語が展開していくということは、 ビーチがただの天国ではなかったということ。 一人旅の若者が...
Powered by Blogger.
Powered by WordPress
©
Holy cow! - Designed by Matt, Blogger templates by Blog and Web.
Powered by Blogger.
Powered by Blogger.
0 comments: