『ダンケルク』(五回目と六回目IMAX次世代レーザー)



『ダンケルク』はほとんどのシーンが70ミリ15パーフォレーションフィルムを使っている。鮮やかさなどもそうなのですが、一番ぱっとわかる違いとしては、普通のIMAXスクリーンとは画角が違い、上下が大幅に切られてしまう。(109シネマズの記事参照:http://109cinemas.net/news/2983.html
IMAX次世代レーザーは大阪のエキスポシティの109シネマズにしかないし、切られたサイズで観ていたのですが、せっかくなので遠征してきた。

劇場に入った瞬間から明らかに違っていて、ほとんど真四角に見えたけど、高さ18メートル幅26メートルらしい(ちなみに大きさの比較としてガンダムが18メートル)。ただ、IMAXの中でも大きい成田HUMAXシネマズが高さ14メートル幅24.5メートルなので、他のスクリーンと比べると真四角気味です。

予告編は普通のスクリーン向けで撮られているせいか上下が黒くなっていた。上映時に真四角に変換されるのかどうかはわからないけれどどうだろう。

そして、実際に『ダンケルク』の上映が始まったとき、最初のドイツ軍からチラシがばらまかれるシーンからもう違っていて感動しました。
視界がぱっと開けたようになるし、空が高く、チラシも大量だった。

以下、ネタバレです。









圧倒的に明るいし、空もダンケルクのビーチも広大だった。
ドイツの戦闘機の目線だろうか、上空から桟橋にいる兵士を見下ろすシーンでは、浜で逃げようとする大量の兵士が米粒のように見えて、適当に爆弾を落としても簡単に着弾しそうで、もう逃げることはできないという危機感を感じた。

真ん中に兵士が待機する桟橋をとらえたショットでは、より奥行きが感じられて、兵士の数も多く見えた。

編隊を組む飛行機が広い空を飛ぶ様子や、ファリアのスピットファイアがビーチへゆっくり降下していく様子はより綺麗に見えた。スクリーンが広いため、ドッグファイトや追いかけっこも縦横無尽に動いていてより迫力があった。また、各戦闘機の動きも把握しやすかったと思う。

攻撃するファリアの目線になるシーンがあるが、IMAXの“スクリーンが視界いっぱいに広がっています”が上にも広がっているから本当に視界いっぱいで、それはスクリーンというよりももはや自分の視点のようになっていて、これぞメガネなしのVRだった。私もトム・ハーディと一緒にコックピットにいる気持ちになった。
コリンズとも一緒に水面への不時着した。この映画に関しては4DXはいらないと思った。

撃墜された戦闘機が煙をあげて堕ちていくときの煙も長く引いていた。
人物に関しても足まで映っているのが新鮮なシーンがあった。

何度か観ていても、今回は違った印象を受けた。わざわざ遠征して観る価値はあった。せっかくなので二日連続で観ました。

一応、2019年度には池袋に開業する109シネマに次世代レーザーが入るらしいので、その際にはリバイバル上映があるといいなと思っています。

ちなみにIMAXシーンがくっきりしてるし上下に広がるし明るいしで、普通に撮ったシーンとの区別がよくわかった。
ドーソンの船の上でのシーンと、桟橋のシーンと、商船の中のシーンと、最後の電車のシーンがIMAXではなかった。電車はすべて違ったが、他は一部IMAXもあったと思う。

特に桟橋のシーンは、狙ったわけでは無いのだろうが、ニッチもサッチもいかなくなってウィナント大佐がボルトン中佐に文句っぽいことを言っているシーンはスクリーン上下が黒くて圧迫感があるが、そこへイギリスからの民間船がたくさん来るシーンでぱっと上下に広がって明るくなる。音楽も不穏なものからガラッと安心感があるものに変わる。印象の変わり方がより明確になった。

以下、次世代レーザー以外で気づいたことと思ったこと。


ギブソンについてですが、特にトミーは彼に何回も助けられている。出会ったシーンでは水を分けてくれる、一緒にけが人の担架を運ぶ、桟橋の下に隠れるよう導いてくれる、戻るボートからロープを投げてあげる。
どれも眉間に皺を寄せながらのちょっとしたサポートなんだけど、魚雷が来たときには逃げようとして、船室にトミー(とアレックス)がいるから律儀に戻る。しかも船が傾いているから船室の扉のところへ行くのも大変。このような必死な様子をトミーとアレックスにも見てもらいたかった。
ギブソンはフランス兵だから喋らないからわからないけれど、あのシーンではすでに友情を感じてたんだな…。

商船の中でゴタゴタするシーンのアレックスには何も通じていなかったのだろうかと思う。ギブソンのことを「フロッグ!」と呼びますが、これはイギリス人が使うフランス人を示す蔑称で、カエルを食べることに由来するらしい。カエルらしく(イギリス人の)列を飛び越えてきたのか?みたいなことを言っていた。
ひどいなと思うけれど、逃げるときには、ちゃんと「ギブソン!」と名前で呼んでいた。もうギブソンって名前じゃ無いこともわかっているのに。さっきまではフロッグと馬鹿にしていたのに。
本当に憎かったらそもそも呼びかけもしないだろう。アレックスがギブソンにひどいことを言ったのは追いつめられていたからだけだろうとは思うけれど、さっきまで一緒に行動してたのに銃をつきつけるのはどうなのかと思う。本当にドイツのスパイだと思っていたのだろうけれど。
もちろん本当にギブソンがドイツ軍の人間だとしたら追い出していたか、その場で撃っていたとも思う。

ハイランダーの乗った船が沈められて、桟橋に隠れていた二人がアレックスを救ったのが出会いである。ボルトン中佐は「ハイランダーは別の船へ移れ」と言うのを聞いて、トミーとギブソンも一回海に潜って体を濡らしてハイランダーに混じって脱出しようとする。ずぶ濡れになった二人を見て、アレックスはお前らよくやるなという顔でにやりとしていた。助けられた直後だからかもしれないけれど、このときはハイランダーに二人が混じっていても隊が違うくせに云々と文句は言わない。

その次に乗った船でギブソンが船室に入らなかったのを見たときに最初におかしいなと思ったのだろうか。
それで、船室でトミーに「友達はどうした?」と聞いたのも探りを入れていたのかもしれない。トミーもギブソンが見つけられなくて、「逃げ道をさがしてるんだよ」と答えたあとで、二人ではっとした顔をして、扉付近へ移動する。呑気にジャムパンを食っている場合ではないのかもしれないと思い出したのだろう。この判断がなければ二人はここで魚雷の攻撃を受け、死んでいたかもしれない。

トミーとアレックスは同じ商船から逃げ、おそらくアレックスのほうが抜け出したのは遅かったのでは無いかと思う(ギブソンに声をかけていたから)けれど、ドーソンの船に着いたのはアレックスがだいぶ早かった。
ハイランダーの身体能力の高さなのかもしれないと思ったけれど、商船の中でリーダー格だった男はオイルに火がついたときに燃えてしまったし、判断力もあるのかもしれない。

空が一時間、海が一日だからということもあるかもしれないけれど、時間軸的にも空がだいぶはやい。
一番最初に登場したときに、3機で編隊を組んで飛んでいる下にドーソンの船が見える。これが、ドーソンがロールスロイス製エンジンの音が心地いいと言っているシーンである。その前にドーソンが見てないのに「わが軍だ」と言うシーンがありますが、この時に飛んでいるのは1機なので、他の隊員は撃ち落とされて、生き残った一機が帰るところだったのかもしれない。帰還した1機と交代で、ファリアたち3機が出て行ったのではないだろうか。

陸よりも時間軸がだいぶはやくて、沈みゆく商船から人が海へ逃げ出しているのもファリアは空から見ていた。その近くには船(ヴァンキッシャー?)が倒れ、オイルが流れ出ている。ドーソンの船も近くにいる。
陸のほうでは商船すら出てきてないうちに空のほうではすでに沈むことがわかっていたのだ。このあと「射撃訓練だ」とか「穴を塞げ」とか「オランダ人です」とか「フロッグ!」とか狭い中でだいぶゴタゴタするがわかっていたのだ。

あともう一つなんですが、ドーソンとピーター、そしてハリケーンで出撃して3周目に亡くなった兄の話は出てくるけれど、妻(母)の話は出てこないし、なんとなく父と息子二人暮しなのかなと思っていた。
けれど、最後、ジョージの記事が載った新聞が届いたときに、一瞬だけ台所が映り、そこで、誰だかはわからないけれど女性が洗い物をしていた。
妻(母)かもしれないし、娘(姉)かもしれないし、お手伝いさんかもしれない。ピーターよりは年上のようだった。ソフト化されたら一時停止して確認したい。後ろ姿だったし説明もないからどちらにしてもわからなさそうだけど。

あと、改めてですが、ピーター役のトム・グリン=カーニーの見る演技が素晴らしい。セリフ無くじっと見つめるシーンが多く思えたけれど、その力強い視線から感情が溢れ出してる。
キリアンのいる船室に迷ったすえ鍵をかける判断を決めた顔、ジョージを突き飛ばしたキリアン(仮名)に向けられた怒り、墜落した空軍兵を救うため船を飛ばすドーソンを見る心配そうな顔、ジョージが死んだあとにキリアンに大丈夫だと嘘をついてその後ドーソンにこれで良かったよね?と問うような顔、イギリスに帰ってきた後、船から運び出されるジョージの遺体を見て振り返ってキリアン(仮名)を探す顔。
あの時、キリアンは一瞬前にジョージの姿を見ていたから、大丈夫ではなかったのがわかっただろうし、大丈夫ではないのに大丈夫だと言ったピーターのことも何か思ったはずだ。でも何もせずに行ってしまった。今回のキリアンはここを含め、すべてにおいて仕方が無いにつきる。
ピーターは振り返ってもたぶんキリアンの背中すら見つけることはできなかったと思う。





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