ショートショート フィルムフェスティバル 2014 アカデミー賞プログラム


アカデミー賞短編の実写部門とアニメーション部門のノミネート・受賞作をまとめて。『The Missing Scarf』のみ、ノミネートの前段階だったのかな。
ショートフィルムはDVDなどにもなりにくいし、なかなか観られる機会がないのでまとめてあるのはとても嬉しかった。しかも入場無料。

以下、全作品について、ネタバレなど含みます。






『The Voorman Problem/ミスター・ヴォーマン』
マーティン・フリーマンとトム・ホランダー主演。監督さんがケヴィン・スペイシーに脚本をもちこんで、豪華キャストが決定したらしい。アカデミー賞授賞式を見 ていたときに、ノミネートでマーティンが出てきたので気になっていました。iTunesでも300円で買えるらしいけれど、字幕がついていないとのこと。
一応、マーティン演じるウィリアムの奥さんと上司みたいな人は出てくるけれど、ほぼ二人芝居。囚人であるヴォーマンと精神科医ウィリアムの対話。自らを神だ というヴォーマンを最初は馬鹿にしていたけれど、奇怪な現象が実際に起きて信じざるをえなくなって、結局…というあらすじ。
12分ほどの作品で、謎の解明はなされないまま終わる。世にも奇妙な物語的な感じに不思議で不気味な後味を残す。

巻き込まれ系の役が多いマーティンは今回も順調に巻き込まれる。その前のベルギーの件にしても、奥さんはベルギーを知らないみたいだったので、ウィリアム以 外の人間もそっくり変わってしまっている。自分以外の世界が変わってしまったことを考えると、いくら叫んだって、最後のあのシーンは他の人から見たらきっ と狂人にしか見えないのだろう。

トム・ホランダーの囁くような話し方と、万能で怖いものなしというような余裕が恐ろしかった。

それほどセリフは多くなく、簡単なものなため、字幕がなくても大丈夫だと思うので購入してみようかな。



『Feral/野生の少年』
アカデミー賞短編アニメーション部門のノミネート作品。
今回観た6作品の中で、少しわかりにくかった。セリフはほとんどない。森の中で狼と共に育った少年が猟師に発見され、町に連れて帰られて学校に行くけれど結局馴染めずに帰っていくというあらすじだと思う。
少年の心象が映像で表される。学校で他の子供たちともめ、檻に入れられた時に、木になってしまうのが印象的だった。
最後、結局綺麗な召し物も脱いで裸に戻り、姿が鳥に変わって空を飛んでいたので、野生に戻っていたのだと思う。
ほぼ白黒のアニメが綺麗だった。



『Helium/ヘリウム』
デンマークの作品。アカデミー賞短編実写部門受賞作品。
受賞したと聞いていたせいもあるかもしれないけれど、ダントツでこの作品が良かった。

病院の清掃員の男性が、余命僅かな少年に、死が怖くないように物語を聞かせる。飛行船好きの少年に合わせて、その飛行船の中に入っているヘリウムをヒントに、君はヘリウムの国へ行くんだよと言う。少年は徐々に弱っていくけれど、ヘリウムへ行くのを楽しみにし始める。

単純に少年役の子の演技もうまさも際立っていた。
ヘリウムの世界はまるでファンタジー映画のようにCGを使ってちゃんと作ってあるのもすごい。その世界ではしゃぐ少年の姿は、少年の想像なのか、清掃員の男性の想像か。
最後、迎えにくる飛行船の映像もしっかり作ってあった。

案内人はレッドという犬で、バルーンドッグを作ってプレゼントしてあげるのですが、ラスト、カメラがひいていくと、複数の病室の窓辺に赤いバルーンドッグ が…。そりゃそうだ。病院のしかも隔離病棟なのだから、亡くなるのはこの少年だけではない。そして、清掃員の男性は、他の子供にも同じように物語を聞かせ てあげていたのだろう。
この辺は説明がないので、もしかしたら、ここの病室でも人が亡くなっているというイメージとしてのバルーンドッグで、実際には置いてなかったのかもしれない。

途中、清掃員の男性は看護士の女性に、「君はよくこの仕事が耐えられるな」と言うのですが、ラストでそのセリフが重みを増した。

この映画もわずか23分ですが、映像も内容もしっかりと丁寧に作られていて、感動作でした。



『The Missing Scarf/なくなったマフラー』
一人のナレーションで進んでいく絵本形式。リスのアルバートがマフラーを無くし、森の仲間にヒントを得ようとするけれど、森の仲間にもそれぞれ悩みがあった。アルバートはその悩みに対するアドバイスをするけれど、なぜか仲間の不安が的中してしまう。

この様子をコミカルにテンポ良く描いている。アルバートのみ折り紙で作られている。映像がおしゃれで、原色使いがカラフル。ミュージックビデオっぽい。

クマの悩みは大袈裟だろ、と思ったけど、実際に地球が滅亡して終わる。映像がおしゃれなので、滅亡も地球がぱかっと割れるという真剣味のないもの。

可愛いながらもブラック。6分半、駆け抜けて終わる感じ。

ナレーターはジョージ・タケイさん。クマのあたりの盛り上がり方がおもしろかった。



『Do I Have to Take Care of Everything?/結婚式の朝』
フィンランドのコメディ、初めて観ました。

結婚式の朝に寝坊をしてしまい、何もかもがうまくいかない家族のすったもんだ。
人が慌てているだけなんだけれど、その様子がすごくおもしろかった。慌てていると何もかもがうまくいかないというのは、誰しもが経験があることで、共感を呼んで更におもしろかったのかもしれない。
ド レスが洗濯機に入れっぱなしで、「パーティー用の服を着て!」と子供らに任せたらハロウィンの服を着ちゃう。夫はコーヒーをワイシャツにこぼす。ヒールが 折れて転び、鉢を割っちゃうあたりとか、夫が「それ、持とうか?」って提案した時点から嫌な予感がしたけれど、そんな予感の次の瞬間にもう転んでた。さす がショートショート。

これも、6分間ノンストップ駆け抜け系。
でも、最後に教会の外で、家族みんなでわははははってやっているのがほのぼのした。こうゆう作品、大好きです。



『Just Before Losing Everything/すべてを失う前に』
フランス映画。セザール賞受賞。
最初、何が起こっているのかまったくわからないけれど、観ているうちに事態がどんどん明らかになっていく。この説明しない感じが緊迫感の持続に役立っているのだと思う。

女性の車に子供たちが乗せられる。どうやら、その女性は母親らしいと途中でわかる。
車でスーパーに到着。どうやら、女性の職場だとわかる。上司や同僚との話を聞いていると、告訴だの逃げるだの、なにやらトラブルに巻き込まれていることがわかる。
その内、着替えるときの女性の体の痣や、子供の「パパがママに銃をつきつけるときも…」というセリフで、やっと状況がわかる。

DVでした。しかも、相当深刻なところまできているというのは銃発言からもわかるけれど、スーパーに夫が来ているという話を聞くと、それまで平然としていた子供が泣き叫んでいることからも察することができる。

この夫役の俳優さんがかなり怖い。ガタイはいいし、目がすわっていて、尋常ではない雰囲気でした。

ラスト付近の駐車場で車の影に隠れているシーンはさながらゾンビ映画のようだった。人間相手とは思えない。
ただごとではない状況から逃げてる様子や、夫がなにをしたかをちょっとずつ明らかにしていくといういままでの手法により、家族と同じ気持ちでこんなに恐怖を感じられる。

ちゃんと逃げられるの?大丈夫なの?というハラハラドキドキなエンターテイメントとしても観ることができるけれど、DVという問題自体は深刻なものなのだから、心から楽しむことはできない。今回は逃げられても、ずっと逃げ続けるわけにはいかなそうだし…。・

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