『キル・ユア・ダーリン』


劇場公開を待っていたのに、DVDスルーになってしまいました。
詩人、アレン・ギンズバーグとその周辺の人物の実話。アレン役にダニエル・ラドクリフ、彼の友人ルシアン役にいまをときめくデイン・デハーン。ウィリアム・バロウズ役にベン・フォスター。
以下、ネタバレです。









どの程度の実際にあった話なのかはわかりませんが、前半は文学やら芸術かぶれの若者たちの青春物であり、後半はこじれて結局はドロドロになってしまう。

友人ルシアンと書いたんですが、友人というよりはアレンは同性愛者だし、ルシアンに一目惚れしたんだろうなと思う。最初に彼を見たとき、緊張していた顔が一気に緩んでしまっていた。もうあの瞬間だけで、完全に恋に落ちてたし、ダニエル・ラドクリフのあの表情が良かった。

秘密クラブみたいな場所に一緒に行ったり、芸術家かぶれだからだと思うけどふざけて一緒に首つり自殺しようとしてきゃっきゃしてたり、クスリでトリップして、たぶん幻覚の中で血の契りを交わしたり、本の一文を切って壁に釘で打ち付けたり、図書館に忍び込んでわいせつ文書を陳列したり。
本当に学園青春ものでした。合間合間で、相手のことが友達には見られなくなる瞬間が描かれているのも切ない。

そして、キスを交わしてからは、関係がぎくしゃくしてしまう。これは、ルシアンはどんな気持ちだったんだろう。論文を書いてくれる人が新しく見つかって都合がいいやというようにあしらっていたけれど、本心は違うのは、キスした後の動揺混じりの泣きそうな顔でよくわかる。自分から深入りはしたくなかったのか。キスなんかしてしまった自分が嫌になったのか。それか、アレンもデヴィッドのようにストーカーじみてしまったら嫌だと思ったのか。自分がアレンの詩を書くことの邪魔になると思ったのか。
タイトルである『Kill Your Darlings』は“愛しいものは葬り去れ”という意味のようだけれど、その行為なのか。それとも、アレンがそうするように、自分を捨てるように仕向けたのか。
ここでのルシアンの拒絶と、この先の展開はつらかった。
ルシアンは「ほっといてくれ!」とアレンを部屋から追い出した後、自分も泣いていて、本当にこれが最良の選択だったのかと思った。また、泣き顔が少しだけ映って、すぐにぱっと画面が変わるのもいろいろ考えさせられる。

ストーリー自体は青春愛憎劇ですが、この映画はとにかくデイン・デハーンがすごい。
色男と言われてるライアン・ゴズリングが『ラブ・アゲイン』でモテモテの男前役をやったのが迫力あったように、美少年と言われてるデハーン君が美少年役やってるから迫力がある。ただでさえ美少年なのに、美少年の演技が加わるともう…。更に今回、外見が金髪蒼眼だから、大変ですよ。ダニエル・ラドクリフが黒髪黒目(加えて黒縁巨大メガネ)なので、その対比でも映える。

また、今まで『クロニクル』も『欲望のバージニア』も『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』も『アメイジング・スパイダーマン2』も、彼が演じた役って童貞っぽかったんですよ。女のにおいがまったくしなかった。ある意味潔癖というか、触れられない、純粋さの残った役だった。
今回も暗めは暗めだし、過去に自殺未遂をしているので影はある役です。でも、明らかに経験済み、しかも、相手は男。
なんというか、色気がものすごい。ただ煙草を吸っているだけでも、めちゃくちゃ色っぽい。暗い過去と色気が混ざって、大変な事になっている。

シーンによっては、アレンの目線フィルターもかかっていてより色っぽく見えるのかもしれない。
完全にフィルターがかかってるのは、酔って膝枕で寝てしまったところを髪を撫でると、ふっと顔をあげてアレンを見て、その指を口に含むっていう、もうエロいとしかいいようのないシーン。実際には膝の上で泥酔しているだけで、アレンの妄想でした。

図書室の倉庫で、ルシアンに見られながら司書の女子に口に含まれるシーン。ここのルシアンも、最初興味深そうにしながらも、じっとアレンを見る瞳が完全に欲情してたし、少し目線を落として股間のあたりも見ちゃってた。こんな目で見られていたら、同性愛者のアレンもたまらないでしょう。

それと、やっぱりキスシーンはものすごかった。デハーンのキスシーン自体も初めて見たかもしれない。アレンが口唇のあたりを触ると、ルシアンは怪訝そうにしながらも、拒絶はせずに結局キスする。それで、一回やめて、やっぱり怪訝そうな少し相手が怖いような顔をしながらも、またキスをするっていう。
ここのデハーンくんの表情は色気というよりは、逆に幼くなってる。暗さとか影とか皮肉っぽい笑みとか、全部とっぱらわれてる素の表情にも見える。

このキスシーンのあとは、もう終始、悪魔みたいな顔と牢屋の中に捕らえられた絶望と恐怖が入り混じった顔をしていて、色気はなくなっている。
ただ、アレンにお願いをするときだけさりげなく牢屋ごしに手を触れたりして、もう本当に魔性。つくづくうまい役者だと思う。




追記:日本語字幕と吹替は入っていませんが、 北米盤がおすすめです。日本盤はDVDしか出ていませんが、北米盤はBlu-rayで観られます。日本と北米はリージョンが同じなため、PS3でも再生出来ました(DVDもセットで付いてきますが、リージョンが違うため、PS3では再生出来ませんでした)。
また、日本盤は特典映像が予告編のみでしたが、北米盤は
▼ダニエル・ラドクリフ、デイン・デハーン、ジョン・クロキダス監督、共同脚本/原案オースティン・バンのオーディオコメンタリー
▼ダニエル・ラドクリフとデイン・デハーンのインタビュー
▼ジョン・クロキダス監督、共同脚本/原案オースティン・バンのQ&A
▼トロントフィルムフェスティバルのレッドカーペットの模様
▼未公開シーン
▼予告編
と盛りだくさんです。特にオーディオコメンタリーの裏話が素晴らしい。

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