『モンスター上司2』



2011年公開『モンスター上司』の続編。アメリカでは2014年に公開されたが日本ではビデオスルー。
原題が『Horrible Bosses』なので別にいいんですが、“モンスターペアレント”という言葉自体が最近使われないので、通常の意味で怪物などととらえられてしまうかもしれない。

前作で酷い上司の元で酷い目に遭わされた三人が、今作では上司につかえないで済むように自分たちで会社を起こした。シャンプーと水が一緒に出てくるシャワーヘッドで、それを紹介するテレビに出演したところ、投資家から連絡がくる。けれど、まんまと騙されてしまい…?という内容。

三人組を演じるのは前作と同様、ジェイソン・ベイトマン、ジェイソン・サダイキス、チャーリー・デイ。投資家親子はクリストフ・ヴァルツとクリス・パインという豪華さ。

前作から引き続き、怖い上司役だったジェニファー・アニストンとケビン・スペイシーも出てくるが、ケビン・スペイシーはともかくとして、ジェニファー・アニストンはゲストという感じではなく、完全にメインキャラのような出方をしている。

セックス依存症役のジェニファー・アニストンは前作同様、きわどいセリフを吐きまくる。焦って逃げようとして、「トイレに行きたいんで…」と言うと「ここですればいいじゃない」、「大のほうなんで…」と言うと「何の問題が?」。三人組のほうがたじたじである。けれど、怖い上司ではなく、おもしろ性欲お姉さんといった感じで、投資家親子も上司ではないし、タイトル通りではないかなと思った。
また、前作で拒んだのはデール(チャーリー・デイ)だけということで、執着心で追い回す姿はほぼ恋愛のようにも見えてしまった。

ただ、ジェニファー・アニストンが出てくると、ストーリーの流れが止まってしまうのだ。彼女も大筋のストーリーに絡んでくれば良かったけれど、別のところで出てくる。彼女のシーンをばっさり抜いてもストーリーの意味は通るし、おそらく一時間くらいにおさまりそう。

上記のトイレ行きたいんでのシーンで「最後の一振りは残しておいてね」というセリフを言った後で、「こんなこと言えないわ!」と恥ずかしがるNGシーンがエンドロール付近に入っている。きっと、こんな感じで、スタッフはジェニファー・アニストンにいろんなセリフを言わせるのが楽しくなってきてしまったのではないだろうか。それで、歯止めが利かなくなって、彼女のシーンが多くなってしまったように思う。
ジェニファー・アニストンとクリス・パインを絡んだら良かったのに、二人の接触はないためバラバラの印象を受ける。

また、ジェニファー・アニストンが強烈すぎるため、ストーリー自体はあっさりした小粒のものに感じてしまった。
クリス・パインも良かった。むしろ、クリス・パインに頼りすぎではないかと感じるくらいたくさん出番があった。

海外版のポスターやDVDパッケージで悪い顔をして縛られているのを見て気になっていたけれど、本当に悪い役だった。ただ、あの顔を見たら、三人の仲間になったふりをしていても、最終的には裏切るんだろうなというのはなんとなく予想ができた。それにしても、父親を本当に殺すまで悪い奴だとは思っていなかった。父親の元へ帰って行って、三人のほうへ舌を出すくらいのものかと思っていた。

クリス・パイン、去年のアカデミー賞歌曲賞を受賞した『Glory.』のパフォーマンス(アフリカ系アメリカ人公民権運動関連。『グローリー/明日への行進』の主題歌)を見て涙を流していたんですよね。絶対にいい奴なんです。こんな人が悪い役をやるのがとてもいい。韓国人家政婦のことを「キムチ!」などと罵るシーンのあとでも、カットがかかった後で謝ったに違いない。

悪いクリス・パインはいいし、ジェニファー・アニストンも良かった。メインの三人の要素は少し薄い感じではあったけれど、わーきゃー騒いでいる様子はかわいいし楽しい。
どれも楽しいし、ちゃんと笑えた。しかし、それぞれの要素がうまく作用していないように思えた。組み立て方の問題なのだろうか。

ケヴィン・スペイシーが入っている刑務所に三人で面会に行き、「俺は上司だぞ! 話を聞け!」というような、前作のパワハラ上司らしさを出した一言が映画の締めとなる。
だったら、もっとストーリー自体にも関わってほしかった。受刑者となっているので仕方ないのかもしれないけど、塀の中からもっと“上司”として指示を出したりしたら、タイトル通りのモンスター上司っぽさも増したと思う。


 

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