『ラッキーナンバー7』



2007年公開。アメリカでは2006年公開。
最初に観たのは劇場公開時だった。好きな映画ながら、実に約10年ぶりの観賞となってしまった。謎がどんどん明らかになっていき、どんでん返しもあるストーリーのため、最初に観る際には情報を入れないほうが楽しめると思う(以下にネタバレを書きます)。現に10年ぶりでも端々をおぼえていて、最初に観た時のような衝撃はなかった。

監督はポール・マクギガン。10年前は気にしていなかったけれど、スコットランドの監督なので、『ギャングスター・ナンバー1』(2000年)にはマルコム・マクダウェル、ポール・ベタニー、デヴィッド・シューリス、アンドリュー・リンカーン、『仮面の真実』(2003年)にはポール・ベタニー、トム・ハーディ、ウィレム・デフォー、ヴァンサン・カッセルと好きな俳優が揃っている映画を撮っていた。どれも未見なので観たい。
更に、日本公開されるかどうかは不明ですが、『Victor Frankenstein(ヴィクター・フランケンシュタイン)』も監督している。ジェームズ・マカヴォイが博士役、ダニエル・ラドクリフがその助手役。脚本が『クロニクル』『エージェント・ウルトラ』のマックス・ランディスというのも気になるので是非公開してもらいたい。

また、『SHERLOCK』で計4エピソードの監督をしていた(シリーズ1の1話“ピンク色の研究”、3話“大いなるゲーム”、シリーズ2の1話“ベルグレービアの醜聞”、2話“バスカヴィルの犬”)。スティーヴン・モファットやマーク・ゲイティスという製作・脚本陣ばかりが注目されていたので、監督は気にしてなかった。

そう言われてみると、『ラッキーナンバー7』でも、一つの映像で角度を変えてみて実はこうでしたみたいな見方を変えれば世界が変わるだまし絵方式が使われていた。映像の凝り方やおしゃれっぽさは、なるほど、『SHERLOCK』に通じるところがあるかもしれない。

邦題はちょっと安直だし、映画を一気につまらないものにしてしまっているのが残念。原題は『Lucky Number Slevin』。映画内でキーとなるあるものの名称です。
ただ語感だけでわけのわからないものなのかと思ったら、一応、あるものに関連する番号ではあったけれど、それにしても安っぽくなってしまった。

運の悪い青年スレヴン役にジョシュ・ハートネット。借金まみれの友人の身代わりに悪の組織にさらわれる。
飄々とした人物というのが元々好きなんですが、このスレヴンも好きでした。バスタオルを腰に巻いただけという半裸の状態で出て来るというのもいい。お隣のルーシー・リュー演じるリンジーにうっかりご開帳(ご開チン)してしまうシーンもいい。

前半はコメディ要素が強い。スレヴンは最初にさらわれた組織と敵対している組織にもさらわれる。そして、どちらにも、「敵対している組織を倒せばお前の命は助ける」という条件を出される。
ちなみに、二つの悪の組織のリーダーはモーガン・フリーマンとベン・キングズレーという豪華さ。両方に出入りしている謎の殺し屋はブルース・ウィリスです。

リンジーとスレヴンの関係もラブコメのように進んでいく。ルーシー・リューがすごくキュートで可愛い。見ていて好感が持てるし、運命の出会いっぽいし、恋愛し始めのわくわくした感じもうまく描かれている。

特に、助けてもらったときに「あなた、007みたいだったわ」と話すシーンが好きです。007はいろんな俳優が演じていますが、どの007?二人が思い浮かべてるのが違う人だったら台無しじゃないと話し、せーので言い合うという。で、結局違ったんですが、笑い合う二人というのが本当に微笑ましい。スレヴンが「ティモシー・ダルトンも捨て難い」と言っていたのも聞き逃さなかった。
この辺の細かさとか、007ネタを出してくるのはスコットランド人監督ならではということなのかもしれない。

ただ、映画を観ながら、確かのこの人(スレヴン)、裏があったよな…とうっすらと思い出していた。飄々としてるように見えて、すべて演技だったのではないか…。そんなことを思いながら見てしまって、やっぱり初見か、すべて忘れてからのほうが楽しめるだろうと思った。

そして、真実が明らかになっていき、後半は復讐劇になる。コメディ要素は消えて、実は悲しい話になのだというのがわかる。
アクションも多くなるのだが、ブルース・ウィリスの2丁拳銃のシーンが恰好良くて好きだったし、10年ぶりに改めて観てもやっぱり好きだったんですが、海外版のDVDパッケージの画像もブルース・ウィリスの2丁拳銃だった。
そして、これはすっかり忘れていたんですが、空港の男の正体がニックだったんですね。

ラストに過去の映像が入る。子供は殺せなかった殺し屋グッドキャット。グッドキャットとスレヴン(仮)は、疑似親子のようにしていままで生活してきたのだろう。幼いスレヴン(仮)は一体どんな20年を過ごしてきたのか。父親代わりのグッドキャットは…。その部分の映像が一切無いのが気になり、見たかったなとも思うけれど、敢えて削っている潔さもいい。

グッドキャットが子供のスレヴン(仮)を助けるシーンで映画は終わる。助手席にスレヴン(仮)を乗せたグッドキャットがカーステレオにカセットを入れて、そこで流れる曲が『カンザス・シティ・シャッフル』。そこからエンドロールに入るという『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』形式である。

この曲が渋いし耳に残るしとてもかっこいい。元々はジャズピアニスト、ベニー・モーテンのよる曲で、1926年にレコーディングされたものらしい。が、元となる曲はだいぶ違う印象。
映画序盤、空港で、グッドキャットがニックに「カンザス・シティ・シャッフルを知っているか?」と聞くシーンがある。"They look right... ...and you... go left."彼らが右を見たら、お前は左へ行けというような訳だったと思う。謎めいていて、意味はあまりわからないし、作品内でそれほど重要だった感じもしないけれど、何か隠された意味があったのかもしれない。
曲の歌詞も本編に関係あるようなないような内容。“カンザス・シティ・シャッフル”という言葉自体が詐欺とか騙しの場面で使われることもあるとか。
グッドキャトは最初車いすで出てきて、ニックを殺した後ですっと立ち上がるので、そこと絡めたのかもしれない。それだけじゃなく、映画を構成するどんでん返しのことも匂わせているのかも。




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