『ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー』



『50/50 フィフティ・フィフティ』のジョナサン・レヴィンがセス・ローゲンとジョセフ・ゴードン=レヴィットに、アンソニー・マッキーも加えてクリスマス映画を撮るというニュースはだいぶ前に聞いていた。 『50/50』と出演者からしてブロマンスなんだろうなみたいな話もあったけれど、すっかり忘れてしまっていた。別の映画のチケットを取ろうとして 映画館のサイトを見ていたら、上映予定のところにこの映画が載っていたので観てきました。
“※本作はブルーレイでの上映となります”という但し書きが付いていますが、Amazonを見ても、今のところリリース予定はない様子。ただ、一つの映画館の二週間の上映のためだけに日本語字幕を付けたとは思えないので、何かしら動きはあるのではないかと思う。

一つの映画館だけ、二週間だけ、一日一回だけ、水曜日といろいろ重なったこともあるのか満席でした。コメディなので、反応良く、笑いもばんばん起こっていました。

以下、ネタバレです。











サブタイトルの“メリーハングオーバー”という単語はたぶん造語なのだと思う。ただ、酒を飲んでいないので二日酔いのhangoverではなく、映画のタイトルの『ハングオーバー』からとったのだろう。

バチェラーパーティーではないが、セス・ローゲン演じるアイザックは、子供が生まれてからは無理だろうから今晩は好きに過ごしてきてという感じで、妻からドラッグをいくつかもらって遊びに出かける。
この、“はっちゃけて遊ぶのはこれで最後”感。そして、はっちゃけるのは男三人。
『ハングオーバー』を想像してしまうのもわからなくもない。
そして、はっちゃける夜がクリスマスイヴなので、“メリー”が付いている。

アメリカはクリスマスは家族と過ごすことが多いらしい。慣習が違うので、日本公開されなかったのはその辺が原因なのだろうか。そもそも、コメディ映画自体が公開が厳しくなっているだけかもしれない。

ジョセフ・ゴードン=レヴィット(JGL)が演じるイーサンは、若い頃に交通事故で両親を亡くしている。その時から、彼を励ますために、アイザックとクリスと毎年三人でイヴを過ごしていたが、アイザックには子供が生まれ、クリスはアメフト選手としてブレイク…ということで、今年で遊ぶのは最後にしましょうねということになる。

最初、イーサンがサンタクロースの使いのエルフの姿でバイトをしてるんですが、上司から、「もっとエルフっぽい顔して!いたずらっぽく!」みたいに注意されてのJGLの顔芸から大爆笑だった。カワイイのとムカつくのとの境目くらいの顔。ぎりぎりムカつく寄り。

遊びに行こうぜー!ということで、クリスマスの正装はタキシードではない。イーサンが用意したのはクリスマスダサセーター(アグリー・クリスマス・セーター)である。
ユダヤ人であるアイザック用には、胸に大きくダビデの星のマークが入っている。クリス用には死んだ目の黒人サンタが。両方とも悪趣味であるが、アグリー・クリスマス・セーターは悪趣味であればあるほど良いみたいなので、これでオッケーなのだと思う。

そんな三人がおもちゃ売り場で床の鍵盤を踏みつつ、ダンスをしつつ、Run-D.M.C.のChristmas in Hollisを三人で歌うシーンがとても楽しい。カラオケのシーンも好きです。後半でも出てくるけれど、この映画で、JGLは何度も美声を披露している。

リムジンタクシーで移動するんですが、その中で携帯で写真を撮るんですが、「ソニー・エリクソンの携帯は暗いところでもちゃんと撮れるぞ!」というわざとらしいセリフが良い。ソニー・ピクチャーズ配給です。
よく、ロゴが見えるようにVAIOを使っていたり、ばーんとオメガが出たりするけれど、スポンサーだから仕方ないけれど、イライラする見せ方をしている場合が多い。
この映画くらい潔いとむしろ清々しいし、きっちりギャグとしても消化されている。しかも序盤に片付けている。

コメディなので、細かいギャグはたくさんあったんですが、一番好きだったのはアイザックが人形に話しかけるシーンです。話しかけ、話しかけられる。予想はついたけれど、笑ってしまう。また、それが教会の前で、深夜ミサに来た妻とその家族に見つかるのもおもしろかった。

アイザックの六芒星セーターネタもおもしろかった。アメフトのチームのメサイア(救世主)をうっかり磔にする形になってしまい、「キャー!」って言いながらマークを隠していた。

また、クリスマス映画っぽく、『ホーム・アローン』や『グリンチ』など、定番映画のネタも混ざっていた。

アイザックの携帯電話にJamesという男性から巨根の画像が送られてくるシーンも笑った。いたずら電話と思いつつ、クスリが入っていることもあって、うっかりやりとりをしてしまう。
途中で、ある女性と電話を逆に持ってきてしまっていたことがわかり、Jamesはその女性を誘っていたことがわかるんですが、その後、実際のJamesとの邂逅がある。

はい、ジェームズ・フランコでした。ああ、あんたもジェームズでしたね…。コメディだし、誰かがカメオで出てくるんだろうとは思っていたけれど、そうか…と妙に納得した。
それで、彼は、女の子そっちのけでアイザックにどんどん絡んでいく。アイザックというか、もはやただのセス・ローゲンですよね。こちらは、セス・ローゲンとジェームズ・フランコがその関係なのはいい加減わかっているので、げっそりしました(いい意味で)。ジェームズ・フランコはカメオなのをいいことに、調子に乗って必要以上にチュッチュしてた。

カメオはもう一人、イーサンの元彼女が好きな歌手として、マイリー・サイラスが出てきた。私はこの子を知らなかったんですが、「ハンナって呼んで」というセリフが出てきて、わかった。ハンナ・モンタナでした。
JGLがステージに上がって、マイリー・サイラスと一緒に歌をうたって、そこから元彼女にプロポーズをする。当然彼女もイエスでハッピーエンド。
…なのかと思った。
でも、監督ジョナサン・レヴィンだからなのか、ここからもうひとひねりある。

一度はイエスと答えたものの、イーサンは彼女に呼び出される。あんな場所でプロポーズされたら断れるはずがないからイエスと言っただけだと。
よくありますよね。ディズニーランドでみんなの前でのプロポーズで祝福され、帰りの電車の中で振られたなんて話も聞いたことがある。
この苦みと現代的なテイストがジョナサン・レヴィンっぽいと思った。

それに、この後のエピソードがとても良かったのだ。映画内に何度か出てくる謎の売人、Mr.グリーン(マイケル・シャノン)との屋上でのやりとり。マリファナ(?)に火をつけると、まるでマッチ売りの少女のように情景が思い浮かぶ。
髪の毛が長いので、過去のイーサンだというのがわかる。両親の遺品整理をやっているところに、若かりし頃のアイザックとクリスが来て元気づけるのだ。最初に三人で過ごしたクリスマス・イヴの回想シーン。つらかったときに近くにいてくれたのは彼らじゃないか。そして、今また、つらい気持ちの時にそばにいてくれるのは…。
変わらない友情の描写が泣けた。

Produce、Screenplayなど、エヴァン・ゴールドバーグの名前もたくさん入っていたし、ギャグの具合からもエヴァン・ゴールドバーグ寄りの部分もあると思うけれど、最後のひとひねりのあたりはどうしてもジョナサン・レヴィンだと思う。

アイザックは育児の本を読んでどっしり構えているように見せて、本当は子供が生まれるのが怖い。それをちゃんと認め、妻にも告白した。
クリスは急に活躍したのはステロイドを打っていたせいだと認めた。これも、母にもちゃんと話した。
イーサンも、改めて彼女にちゃんと気持ちを伝えに行った。ただ、あの場で断られたのにちゃんと家に来たらオッケーするというのもうまくいきすぎな気はした。別れていた期間も三か月と短いし、その間も彼女もこちらの動向を探っていたようだしそんなもんかな。でも、だったら、一回断らなきゃ良かったのにね…。混乱したのかな…。

どちらにしても、三人とも、ただはっちゃけただけではなく、ちゃんと困難に立ち向かって、乗り越えないにしても、向かい合った。
二人はイーサンのこと、「あいつガキっぽいよな」なんて言っていたけれど、結局全員ガキだったっていうオチ。それで、きっちりと成長はしたけれど、それで三人が別れてしまったわけじゃないのがいい。

そこに一役買っていたのがMr.グリーンというのが良かった。まさか翼が生えて、サンタクロースの元へ飛んで行くというファンタジー展開があるとは。
驚くことにクリスマスにぴったりだった。紛れもないクリスマス映画になっていた。クリスマスの魔法が感じられる作品だった。
そりゃ、エンドロールのスペシャルサンクスの一番上にサンタクロースの名前もありますよ…。
本当は上映してくれただけで満足なんですが、贅沢を言うならばクリスマスシーズンに観たかった。次はクリスマスに観ます(ので、ソフト化して欲しい…)。

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