『愛の記憶はさえずりとともに』(『バードソング』)



原題『Birdsong』。Wikipediaにはカタカナのバードソングで項目が作られているので、『愛の記憶はさえずりとともに』というのは、WOWOWが独自で付けた邦題なのかもしれない。
エディ・レッドメイン主演で約90分、前後編の二回のBBCドラマ。
もっと昔なのかと思ったら2012年とわりと最近だった。
原作は1993年の同名のベストセラー小説とのこと。

前編は現在の戦争パートと過去の恋愛パートが交互に出てきていた。戦地にて、過去の恋愛を思い出し、生きて彼女にもう一度会いたいと思いながら戦うというような内容。
なんとなく、英国人気俳優と戦争に恋愛を組み合わせている様子から、ベネディクト・カンバーバッチの『パレーズ・エンド』を思い出した。どちらも戦争メロドラマである。生きるか死ぬかの戦争に恋愛要素を加えるのは作りやすいと言えば作りやすいのかもしれない。

また、恋愛パートで、女優さんが上半身ヌードを披露するのも一緒だった。後編では娼婦のヌードも出てきて、一話に一回おっぱいが出てこなくてはいけないルールでもあるのかと思った。人気俳優の濃いセックスシーンは、レイティングのことを考えてなのか、映画では中々見られない。ドラマにはレイティングはないのだろうか。

また、この恋愛も一目惚れした女性には夫がいるけれど、暴力を振るわれていることがわかり、さらに子供も彼女の子供ではなくどうやら訳あり…という状態でなし崩し的に関係を持ち、駆け落ちのような形で略奪と、やっぱりハーレクインっぽい。吹替で見ていたから余計かもしれないし、WOWOWが付けた(?)邦題も、それっぽい。

ただ、こちらは戦争パートもかなり本格的な撮りかたをしていた。過去の恋愛パートは光に溢れ、白っぽい映像だったのに対し、戦争パートはトンネル内での映像も多いせいか、気持ちのせいなのか、全体的に暗い。
前編の最後でエディ・レッドメイン演じるレイフォードが死んでしまったかと思われたため、もしかしたら後編は過去編だけやるのかなとも思ったけれど、実は生きていて、後編は現在の戦争と、恋愛パートも現在のものになっていた。

戦争パートにおいて、レイフォードの話だけではなく、周辺の兵士たちの話もちゃんと描かれていたのも良かった。その兵士たちの話を通して、両親のいないレイフォードの家族に対しての気持ちが変わって行く様子もしっかり描かれていたと思う。
後編の恋愛パートは過去のあたたかな印象はない。亡くなった恋人に実は自分との間の子供が生まれていたという事実がわかって、その娘との向き合い方を戦火の中で模索するのだ。最初は家族のことなど考えるなという様子で部下に冷酷だったレイフォードが、次第に変わっていく。それは、自分が戦争の中で死にかけたこと、周囲が死んでしまったこととも関わっているだろうし、ちゃんと戦時下を舞台にする意味もあったと思う。

もちろんエディ・レッドメイン目当てで見たんですが、吹替だったため、そこまでちゃんと演技が堪能できたわけではないです。
恋愛パートでは、愛する女性にどこまでも優しいまなざしを向けていた。これはいつもの、というか、わりとよく見るエディ・レッドメインだったんですが、戦争パートでは、部下と距離を置いているというか、心の底まで見せずに厳しくあたっていた。でも、戦時中なのだし、当然のことなのかもしれない。この心を閉ざすエディ・レッドメインというのが結構良かったんですが、後編で自暴自棄になって娼婦にせまり、挙げ句ナイフを突きつけるサディスティックなエディ・レッドメインは、普段なかなか見られない姿かもしれない。
 また、『パレーズ・エンド』と同じく、上半身ヌードの女性とのセックスシーンはありますが、ベネディクト・カンバーバッチが直に裸の胸に触っていたのに対して、エディ・レッドメインは触れていません。

エディ・レッドメイン以外だとマシュー・グッドが大尉役で出ていた。
レイフォードと一番親しくなり、家族のことなど様々なことを話す部下ファイアブレース役のジョゼフ・マウルは『リンカーン/秘密の書』でリンカーンの父親役だったらしい。気になる俳優が出ていると結構この映画に出ていることが多い。なんというか、特徴的な顔の俳優が揃えられた映画だと思う。
あと、ジョージ・マッケイが出ていることに気づかなくて、もう一度見てみたら、レイフォードの部下、兵士ダグラス役だった。多分、本当の下っ端で、レイフォードの連絡係みたいな仕事もしていた。他の兵士が銃の練習をしている的の様子を見に行ってくれという命令に従ったら、そこでドイツ軍に銃撃されてしまう。内臓むき出しという無惨な姿で、開始25分で亡くなってしまった。気持ちをしっかり保つために呟いた彼女の名前は「アイリス」でした。これがダグラスに関するすべての情報…というくらい、ちょっとした役。

ただ、内臓むき出しというような、戦争の残酷さもちゃんと描かれている。
安易なドンパチよりも、どちらかというとドイツ軍がいる場所の地下にトンネルを掘る任務にあたる場面が多く描かれているのも戦争ドラマとして変わっているかもしれない。掘っていると地下水が流れ込んできてしまうシーンなども、そんなトラブルがあることを知らなかったので驚いたし怖かった。

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